郵便配達員ジャック・ベルモンドとちょっと変わった住人たち

箱陸利

プロローグ 郵便配達員ジャック・ベルモンド

 私はこの町で唯一の郵便配達員であるジャック・ベルモンドと言います。この町はとても小さな田舎町ですが、そこには個性豊かな住人がたくさん住んでいますので、今回は、そんな個性豊かな住人の皆さんを紹介したいと思います。


 その前に、まず簡単に私のことを紹介させていただきましょう。私は62歳になる郵便配達員です。私は毎朝遅くとも5時に起きます。それから、一杯のインスタントコーヒーを飲んで、私の朝は始まります。いつも絶対にスプーン一杯の砂糖と、少量のミルクをくわえます。苦みと甘みとまろやかさのバランスは日々変わってしまうのですが、それで新たな一日の始まりを実感しています。


 それから朝食を済ませて、朝7時になると、私の仕事が始まります。届いている郵便物の仕分けを行うのです。小包や手紙など、種類も様々ですが、それらを全て仕分け、カバンの中にいれます。カバンは大きくありませんが、この町の郵便物であれば十分な大きさのカバンです。


 カバンにつめる作業が終わると、いよいよ配達の時間です。表に停めてある自転車に乗ると、チリン、チリンと毎回必ず二回ベルを鳴らしてから走り始めます。なぜベルを鳴らすのかと言えば、ベルを鳴らすと向かいに住むフランソワ爺さんが二階の窓から「ボンジュール」と声をかけてくれるからです。


 62歳の私もお爺さんですが、フランソワ爺さんはこの町で一番のお爺さんでして、年齢は103歳のお爺さんです。耳も遠くなり、視力も日々落ちているそうですが、私のベルには毎朝、二階の窓を開けて挨拶してくれます。


 私はそれから住人たちの家々を訪れ、荷物や手紙を渡すのです。そして、私はそこで皆とお話をしたり、お茶をしたりします。そんなわけで、一つ届け物をするだけでも時間がかかってしまいまして、すべての郵便物を配達し終える頃には、とっくにお昼の3時頃になっているのです。


 そうして、仕事を終えますと、皆で夕食を食べたり、テニスをしたりして楽しみます。6時には帰宅して、遅くとも夜の9時には寝ています。次の朝が早いからです。こうして私の一日は終わっていくのです。


 私の紹介はこんなところにしておきましょう。それでは、次からは、この町の個性豊かな住人たちを紹介することにしましょうか。

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