墜落る
逢初あい
こいにおちる
貴方に出会わなければ、きっと私は独りのままだったでしょう。
教師になって3年が経った。4年目になり遂に配属先が変わった。登校する生徒達に混じり、僕もまた一緒になって学校への道を歩いていく。ふと目をやると、一人で登校している女生徒が目に留まった。他にも一人で登校している生徒もいるのになぜだか彼女に目がいく。思えば配属されてから2ヶ月、彼女が他の生徒と話しているのを見ていないように感じる。きっと彼女は孤独なのだろう。僕は彼女を放っておくことが出来なかった。
数日が経った。彼女は相変わらず独りだ。食堂で食事を取っているその姿はどこか寂しげに見えた。その日から僕は、彼女と食事を共にするようになった。さらに僕は、僕がいない時も彼女が独りにならないように、彼女と同じクラスの生徒数人に声をかけ友達になってくれるように頼んだ。数日のうちは彼女も遠慮しているのか、1人になろうとしていたがさらに数日経つと彼女の周りには常に誰か居て彼女は独りでは無くなった。教師という立場上あまり良くは思われないが、僕は彼女とプライベートで時々会っていた。彼女の友人達から共有された写真を見てその話をしたり、彼女と運動をするなど充実した時間を過ごしていた。
彼女と出会いもうすぐ一年が経とうとしている。卒業も間近に迫った頃、学校内で彼女の姿を見かけることが少なくなっていた。彼女に連絡してみても返事が無く体調を崩したのでは、と僕は心配になったが彼女の友人達が彼女が来なくなった理由を教えてくれた。
彼女はこいにおちたのだと言う。なるほど、通りでこの子達はこんなにも笑顔なのか。この子達もトモダチの門出を祝っているのだろう。
本当に
こいにおちてくれて良かった。
墜落る 逢初あい @aiui_Ai
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