ダンジョントラップに引っかかって最下層に落ちて10年。ダンジョン配信者に見つかった結果、ダンジョンの主としてバズったらしい

配信終了、そしてバズりへ…

「……い、いやいやいや！　何ですか今の魔法⁉　威力おかしくないですか⁉　最硬なんですよね、アレ⁉　ボロッボロじゃないですか！」

　階層主との戦闘を一瞬で片づけると、リリが盛大に騒ぎながら近づいてくる。

　コメントも「なんだ今の⁉」とか「土属性って何だっけ」などなど様々なコメントが流れている。

「何って……土魔法を使っただけだが？」

「いや、今そういうのいいんで」

"チャンネル登録したけど解除したわ"

"おつかれっしたー"

"今からこの時間は、アマリリスちゃんのみの放送になります。"

　など、えらく冷たい。

　いいじゃんか！

　思ったより驚いてくれたから、ちょっと調子に乗っただけじゃんか！

　それくらい許してくれよ！

「こほん。えーと、土属性の魔法は土だけじゃなくて鉱物として存在する金属系も操れる、というのは知ってますか？」

　気を取り直して、俺は空気を換えるべく説明を始める。

　おい、リリ！　「あ、ごまかした」って小声で言うのをやめなさい！

「それを利用すれば、武器なんかも作れるので装備の節約にもなります。慣れれば自分用にカスタマイズした使いやすい武器を手軽に生成できるので、戦いも楽になります」

　俺はそう言いながら、ロングソードや大鎌、槍などを作っては地面に還す。

「で、これの応用として大量のドリルを生成「ちょちょちょ、ちょっと待ってください。土魔法って武器の生成できるんですか⁉」」

「できないと思ってたの⁉」

　他の金属も扱えるんだから、やってみようとせん？

　単にリリが知らないだけかと思い、ちらりとコメントを見ると、

"知らんかった……"

"もはや錬金術師やんけ"

"等価交換ガン無視だけどな"

"俺が……俺たちが賢者の石だ！"

　とまぁ、そんな感じの反応だ。

　えぇ～……10年も経って武器生成すら行きついてないってどんだけ不人気なのよ。

　お偉いさんが研究したりせんの？

「じゃあ、土の一般的な魔法のイメージってどんなのなんだ？」

「えーっと、最初にローレルさんがやったみたいに地形を変えてバーン！　ってやったり、こう棘を地面からバーン！　ってやったり、後は石礫をドーン！　って飛ばしたりですかね」

　俺の問いかけに、リリはオーバーリアクションでそう説明する。

　うーん……確かに、そのレベルだったら10年間不人気なのも納得いかなくもない。

　というか、地味だからとか不人気だからって発展を怠るのはどうかと思うよ、俺は！

　ただまぁ、そういうことなら……。

「今後は武器メインでやってみてもいいかもね」

「ですね。他属性でも、こんな感じで剣っぽいものとかは出せますけど、あくまで魔法ですし」

　リリはそう言うと、自身の手に炎の剣を作り出す。

　おお、かっこいいな。

　いかにもファンタジーっぽい。

　……やっぱ炎とか氷ってわかりやすいかっこよさがあるんだよなぁ。

「……だいぶ脱線したけど、さっきの魔法の話ね」

"そうだった"

"錬金術の衝撃で吹っ飛んでた"

"何って……土魔法を使っただけだが？だっけ"

「そこには触れないで！　で、さっきの魔法は！　その武器生成の応用ですね。普段は、あんなに数は出さないんですが、派手なのを希望されていたのでがんばってめっちゃ出しました。基本的に武器は生成すればするだけ消費魔力が増えていきます」

　俺はそう言いながら、さっき出したドリルの1つ……スタンダードなタイプのドリルを生成する。

「で、これに魔力を込めると自動で回転しだすので、あとはもう圧倒的物量によるごり押し攻撃です。いくら相手が最硬だろうと、魔力量が多い方が勝つんです」

「それ、ローレルさんだからできるんじゃないですか？　レベルを上げて物理で殴るってレベルじゃないですよ」

　そんなことはない、と言いたいがステータスという動かぬ証拠があるから何とも言えない。

　その後も、今後の予定やら雑談をし、初配信を終えることとなる。

「初配信お疲れさまでした！　どうでしたか？」

「いや、やっぱ緊張するね。最初は数千人だったのにいつの間にか累計で8万人も見に来てくれてるし」

「同接なんか最大5万人ですよ。Zや掲示板でもバズってるみたいです」

「Z？」

「ああほら、これです。匿名によるSNS。140字以内でメッセージを投稿したり、それを拡散したりできるんです」

　そう言ってリリがスマホを見せてきたので覗いてみると、トレンドというのに「土魔法」、「錬金術」などの単語が見える。

「このトレンドって言うのは？」

「それは文字通りです。この時間帯で同じ単語が多く投稿されるとこうやって乗るんですよ。そうすると投稿を見る人も増えるんです。まぁ、見られることを目的にして、まったく関係ない投稿に無理やりトレンドワード乗っける困った人も居ますが、おおむね今話題になっているワードと思っていいですよ」

　なるほどな。

　リリからもらったスマホを開いてみると、すでにZがインストールされていたのでリリに教わりながらアカウントを作り、トレンドを眺めてみる。

　やはりというか、俺の放送が主に話題になっていた。

　いわく、土魔法で武器が作れんのかよ、とか不人気返上か、などなどおおむね好意的だ。

「まぁ、今回は初配信だったので半信半疑な人も多いですが、これから配信を重ねていけば、もっと認知されていきますよ！」

「そうだな……今回は、リリにいろいろ助けられたし、もしリリさえよければこれからもサポートしてもらえると助かる。……あ、でもリリのチャンネルもあるから難しいか」

「そうですねぇ……今回は初配信だったのでお手伝いしましたけど、あんまり同じ人とコラボやりすぎても変な勘繰りされちゃうかもなので、時間を置いた方いいかもですね。あ、でも配信以外でならいくらでも力になりますよ！」

「助かる。とりあえず、しばらくは自分1人で何とかやってみるよ」

「はい、応援してます！」

　その後、階層主を倒したら本当にワープゲートが開いていたのでリリはそれに入りダンジョンから帰るのだった。

　しかし、今日は色々驚きの連続だったな。

　割と派手めの魔法を自信を持って見せたら地味だと言われるし、徹底的にド派手な魔法を見せたら、そもそも武器生成できることしか知らなかった……などなど。

　前途は多難だが、これも土属性の地位向上のためだ。

　頑張ることにしよう。

―――――――――――――――――――――

【期待の新星】土魔法、汚名挽回か【運カスさん】

1：名無しの覚醒者

これは、ついに長年苦汁を舐めてきた土属性が日の目を見るか？

2：名無しの覚醒者

汚名は返上定期

3：名無しの覚醒者

ていうか、運カスさんって誰よ

そんなDiver居た？　

4：名無しの覚醒者

今日、DiverデビューしたSランク覚醒者

Diver名はローレル

新宿駅ダンジョンに住んでる変人

ステータスは運以外オールS

運だけG　

5：名無しの覚醒者

草

6：名無しの覚醒者

これは運カス　

7：名無しの覚醒者

ていうか、全部Sってありえるんか？

他のSランクでさえBやAがあんのに

しかも、あの新宿駅ダンジョンに住んでるとか

8：名無しの覚醒者

Sランクって、全員頭おかしいし……　

9：名無しの覚醒者

所詮、常人はSランクにはなれないのよ

なりたきゃ、おかしくならなきゃいけない　

10：名無しの覚醒者

俺、放送見てたけどステータス表示して確認したから間違いないよ　

ちなみに俺はSランクだと戦闘姫の零戦ちゃんが好きです

11：名無しの覚醒者

バトルジャンキーやんけ！

常に戦ってないと、禁断症状で手が震えるとかいうほんまもん

12：名無しの覚醒者

じゃあ、デッドリー・デッド・ディストラクションちゃんは僕がもらっていきますね　

13：名無しの覚醒者

ガチの死体愛好家はNG

恋人になりたいなら死ぬしかないね　

14：名無しの覚醒者

肉弾戦者の兄貴♂は？

15：名無しの覚醒者

あの人、ガチ陽キャでいい人ではあるんだけど……ねぇ？

16：名無しの覚醒者

おしりの貞操は死守したい所存です

17：名無しの覚醒者

で、日本で4人目のSランクが現住所新宿駅ダンジョンの最下層の土魔法使い

18：名無しの覚醒者

やっぱSランクって、おかしくないとなれないんやなって

19：名無しの覚醒者

証明されてしまったな

20：名無しの覚醒者

いやでも、土魔法に関してはマジで革命だと思うよ

武器生成の技術とか今まで広まってなかったから、そっち目的で見るのも面白そう　

21：名無しの覚醒者

>>20

ほーん、武器作れるんや

ワイ、人気の炎やから気にしたことなかったわ

22：名無しの覚醒者

>>21

なんだァ、てめェ

23：名無しの覚醒者

面白そうだからチャンネル登録したわ

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

【TIPS】

過去に、土魔法で武器作れば節約できね？と武器生成が確立される兆しが見えましたが、プロに任せた方が早いねってことで速攻で廃れました

それを実用レベルまで鍛えた主人公はやっぱり頭おかしいです

ちなみに他Sランクの方々

戦闘姫　零戦　

バトルジャンキー

戦闘大好き

オラ、ワクワクすっぞな美少女

デッドリー・デッド・ディストラクション

通称デデデちゃん

死体好き、オカルトマニア

肉弾戦者

ガチムチな陽キャ

性格面は他Sランクの中では一番聖人

筋トレ動画が人気

ただし……