第6話 謁見の間
私たちは通路を奥へ奥へと進んだ。ロウソクの
ほどなく横にそれる道を見つけた。エドワードはかがんでしか進めないような、小さなトンネルであった。
「この通路で間違いない。図面通りだ」
エドワードは
「どうやら僕らは宮殿に足を踏み入れたようだ」
そう言うとエドワードは通路を出た。そして、壁に沿って歩いていく。規則的に石製の大きな
「これか」
石の壁に金属の取っ手があった。
「上手く作動してくれればいいんだが」
そういうとエドワードは取っ手をひねる。ゴボゴボと何やら奇怪な音が暗い空間に響き渡った。
「ラナ、心配ない。コックをひねれば石油が各燭台に供給される仕組みだ。この音は装置が作動している証」
音が収まるとエドワードは1個の燭台の前に立つ。そして、ロウソクの火を燭台にかざした。ボッと炎が上がる。
「祖先が書き残していたとおりだ。僕の祖先はこの宮殿建設に携わっていた」
エドワードは次々と燭台に火を
縦長の空間だった。床は大理石板が敷かれ、大理石の柱が数多く規則正しく並んでいた。天井は突き抜けるほど高い。長手方向の正面には十段ほど階段があり、その上は壇上となっていた。そこに大きな玉座が鎮座している。
遠くにあるのではっきりとはしないが、その玉座に人が座っているように見えた。
「ラナ。見えるか。あれがアルバート1世だ」
「アルバート1世」
固唾を飲んだ。
「素通りは無礼だ。ラナ、僕らは挨拶せねばなるまい。アルバート1世に謁見する」
そう。ここはまるで謁見の間。
エドワードは手にあるロウソクを消すと手袋を脱いだ。ゆっくりと玉座に向けて歩き出す。私もロウソクを消し、手袋を脱ぎ、エドワードに遅れないよう続いて行く。
「モーガン7世がこの世を去り、王家レイヴィンクロフトの血が途絶えた」
歩き始めたエドワードはなぜか唐突に、玉座に向かって話し始めた。
「生来の虚弱体質であるモーガン7世に太子を作ることが叶わなかったからだ」
私に話しているのではない。まるでアルバート1世に報告するよう。
「執政の公爵家デリック・カムデン。やつは喪に服しているのにもかかわらず、ルドベキアを救うためと称して自身の息子と隣国の王家ウサンディアサーガとの婚姻を決めた。そして、それに止まらず自らを大公と称した」
エドワードとは思えない低く、鋭い声だった。
「本来なら王妃に王位を継ぐ権利がある。だが、王妃はカムデンの妹。王妃もまた病気と称して王位を辞退した。カムデンはレイヴィンクロフトの名を歴史から抹消するつもりだ。一旦はルドベキアを公国とし、その後にまた王国とする。やつは自らの王朝を築こうとしている」
エドワードの言葉と私たちの靴音だけが、広い謁見の間に響いていた。
「王墓の森で貴族たちに
玉座に近付いていた。王冠をかぶり、
そして、前を歩くエドワードは何かに取り
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます