第3話「罪悪感の果ての決意」
『入国審査場』
入国審査場.....城下街などの、ちゃんとした王族と、城がある所にある石造りの建物。
文字通り入国をする際に通る所で、街に東西南北の4か所ある。
因みに一般的な街には、魔物から身を守るため、え〜と.....170後半の俺が3、4人位?の高さの壁があり、それが街を囲っている。そのおかげで、安心して暮らせるってもんだ。
「誰か!毒消しのポーションを持ってないか!?」
鎧を被った屈強な男2人が、寝ている人を、なんか寝たまま運べる物に乗せて、道を走っている。
仰向けで寝ている人は金髪で、恐らく貴族の令嬢か、それ以上。苦しそうに唸っていて、顔は青く、左ひじの辺りに包帯?がキツく縛ってある
(毒か....にしてもあの毒は.....うん、ヤバいな.....)
貴族のひじから下は、なんというか.....紫と黒を足して、色の濃さを2乗した様な、言葉に詰まる程、禍々しく毒々しい色だ。
「はぁ.....はぁ.....走るの速い.....な....」
さっきから状況を把握しているのは、俺も全速力で走っているからだ。ここまで全速力で走るのは久しぶり過ぎて、ちょっと本当にヤバい。
というか速すぎる。自分の主の危機だからって、速過ぎないか?やっぱり選び抜かれた精鋭なのか?じゃあ何で貴族はヤバそうな状態になってるんだろう.......
というか後ろにかなりの人が後をついて来ていて凄いシュールだな。
(.......何だろう......不思議と全く緊張感が無いな......)
『アクライト城前』
「だっ......はぁ....あ''ぁ''......」
辛い.....何で俺はこんなに一生懸命走ったんだろう.......と.....着いた.....みたいだ.....
(深呼吸......深呼吸......)
スゥー ハァー スゥー ハァー
ふぅ.....なんとか落ち着いた。それはさておき、なんか城の中に入って行ったな。
どうしよう。ここまで来といて、のこのこ帰るか?あの毒を見るに、恐らくそろそろ限界.....死ぬな......でも手持ちにはワンちゃん爆発するポーションだけ......
というか普通の解毒のポーションにアレを直せるか?
解毒のポーションは通常、毒消し草という、体液で毒を出せるようになる物を使う。
ただ、どっかの薬草よろしく、自然の物をそのまま食ってもただ腹を下すだけだ。ついでに不安になる痺れも付いてくる。
というわけで、ポーションにする必要があり、汗を出させる為に“ショウガ”や、トイレがある所しか使えない、“諦めダケ”などがある。
ただ、コイツらを原料とすると、毒が強すぎる場合、毒消し草の効果を考えて、1回の排出じゃまず無理なうえ、恐らく出し過ぎて、脱水や栄養失調。
そもそも、毒消し草自体が少しではあるが毒があるから、飲み過ぎると体が動かなくなるほど痺れ、最悪心臓まで痺れてそのままさようなら。というか、あの腕の色を見るに、間違いなく死ぬ。
因みに、魔力をポーションの材料に込めると、効果が高くなったり、効果が出るのが早くなる。脱水でも死ぬと思う。
という訳で、普通のポーションじゃまず無理だ。もしかしたら、凄い聖職者の毒消しの魔法でなんとかなるかも知れない。
けど残念ながら、この国の聖職者は大体冒険者か、浮浪者への配給で忙しいし、急に集まれるかと言われたら、答えはNO。
恐らく、貴族の嬢さんの状況を冷静に考えて、救えるのは、多分俺だけ。なのに、自然と助ける気にはならない。
救いを待っている人を、救える手段を持っている人が救うのは当然だ。
しかし、そこに“救えなかった場合死亡”というルールも追加されるんだ。やらないだろ。しかも、その失敗の可能性がどれくらいかもわからない。
「.........はぁ......まぁ、自分の命の方が大切......かぁ.....」
俺がため息を吐き、その場から離れようのした時.......
「.........」
無意識に足が止まる。
手元にあるポーション......今回で2人.....
賭けとしては悪く無い事に気付く。
世の中ハイリスクハイリターンだ。
あの子への不甲斐無さ.....俺の“目的”の為のコネ作り......成功すれば、罪悪感を2乗する事が無くなる。
「前者だな......行くぞ。誰かの命を助けるヒーローに成りに。」
城に向かう足は、さっきより軽く、気持ち的にも前向きだ。
俺の命も.....俺1人の物とは言いたく無い。
「すまない門番。俺も城に入れてくれないか?」
王城の門番2人にそう聞くと、疑い深そうな様子だ。
「.........隣国の王族が毒に侵されている事を知っているのか?」
「会話になってないが、知ってるぞ。むしろその為に来た。」
俺は、ユニコーンのポーションを見せつけ、自信に満ちた様子でそう答える。
「.......救えるのか?」
門番が、質問をしながら門を開けてくれた。相変わらず異常な程話が早いな。多分仕事出来るから門番を任せられているんだろう。それか、もう見知った仲だからかな。
「話が早くて助かる。ありがとよ。今度酒でも奢らせてくれ。」
「良いから速く行け。俺が案内してやる。付いて来い。悪い、少し持ち場を離れる。」
「了解。」
「ありがとうよ。」
俺が軽く礼をして、城の中に一緒に入ると、もの凄く言い合っている様な声と、悲しんでいる様な声が混じった、地獄絵図の音声化と、言い切れるものが聞こえる。
城の廊下は無駄に広々としており、目的地には、中々......
「着いたぞ。後は任せた。」
普通に速く着いたな。そりゃ怪我人を運ぶ部屋だ。早い方が良いに決まっている。
「任せとけ。俺を誰だと思ってる?」
「はいはい。まぁ、その調子じゃ大丈夫そうだな。」
そう言い、見知った門番は持ち場に戻って行った。
さて、俺達も一仕事しようか。
目的の部屋に入ると、
「だから!何度も言いますが!このポーションでは効き目が無いどころか!死んでしまいます!その為!聖職者の方に毒が回るのを!遅くして頂いているのです!」
「それでは間に合いません!!!どうか!ポーションを使って下さい!!!そうすれば!毒の効果を少し軽くにする事が出来るのでしょう!?」
(......完全にパニックになってるな.....説明は後でやるしか無いな。今説明しても、時間の無駄にしかならない。)
そう思った俺は、王族や貴族らしき人が集まっている所を無理矢理進み、お嬢さんの所に着く。
左ひじどころか、左腕全部が禍々しい毒色に染まっている。
「なんとか間に合ったか......ギリギリ。」
そう言葉を吐き、お嬢さんの前で、ポーションを開ける。
久しぶりに開けたポーションを手に、苦しんでいる口に近づける。
「おい!貴様は何者だ!?何故貴様の様なみすぼらしい者が居るのだ!?」
あぁ.....パニクって気付かないうちに出来ると思ったんだけど......一言だけ言って、さっさと入れるか。
「俺は世界3番目の錬金術師だ。」
そう言い、お嬢さんの口に、ユニコーンのポーション.....もとい、ヒーローを注ぐ。
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