青い鳥貸します
尾八原ジュージ
借りました
むかし、スピリチュアルだかなんだかに嵌った母が「幸運を呼ぶ青い鳥」を借りてきた。母曰く、どこだかの山奥にいらっしゃる偉い先生からお借りしたのだという。その鳥の姿は誰にも見えなかったが、母は「手づから肩に載せていただいたのよ」と、何もない肩の上を指して鼻息荒く語っていた。
青い鳥は月一でレンタル料を支払うシステムらしく、それを聞いた俺はあまりの胡散臭さに震えた。が、金を払わないと誰もいない部屋から子供の笑い声がしたり、誰も触っていない食器棚の中の皿が割れたり、家中のリモコンが一度に死んだりしたので、やむなく二年間ほどレンタル料を支払い続けた。ちなみにその間、目立った幸運らしきことは何もなかった。
ある日、母が事故に遭って病院に担ぎ込まれた。今夜が峠だというので仕方なく駆けつけたところ、病室の中を痩せこけた子供が走り回っている。親戚の子かと思ったが、その子は俺以外の誰にも見えていないようだった。やがて子供がピョンと母のベッドに飛び乗った途端、心電図のグラフがペタンと直線になった。あっと思った次の瞬間にはもう、子供の姿はどこにもなかった。
あの子が何だったのかは不明だが、母の死以降何の手続きもしていないのにレンタル料の請求がぴたりと止んだので、もしかしたらあれが「青い鳥」だったのかもしれないと思っている。
青い鳥貸します 尾八原ジュージ @zi-yon
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