第7話 どこまでがパワハラ?
昨今、プロ野球界隈や、宝塚歌劇団でも取り沙汰されているパワハラ。もし、確かに証言通りであれば許されないことである。そもそもパワハラは、何をもってパワハラとするのか基準や選考がはっきりしていないから認定が難しい。怒鳴りつける、体罰をくわえる、暴言を吐くなどはアウトなのだが、被害者が厳しい叱責や過度な労働業務を強いるなどがパワハラとみなされることもあるし、メンタルの弱い被害者からすれば、悪意がなくとも傷ついてしまえばパワハラに至る。セーフだと思っていたことがたちまちアウトに変わるのだ。繰り返しになるが、ルールや基準がないので、『それ、パワハラですよ』と被害者から言われたら、自覚がなくともパワハラになる可能性があるのだ。何故にこういう話をするかと言うと、半年ほど前に、ある社員Xからパワハラの相談を受けた。しかしXは元々被害妄想の強い男で、ちょっとしたことにも驚いたり、パワハラじゃないですか?と騒いだりする。ヤンチャな見かけと違い、臆病者でもあった。それに私自身とかなり仲が良いわけでもなく、離婚歴があるのだが、それに対しての相談も無かったし、同じ会社で働く無害な仲間的な立ち位置であった。であるので、そういうパワハラ相談は、Xにとり最も仲の良い人に委ねた方がいいのでは?とも思ったりしたが、仲が良すぎる為に言い難いことでもあるのかな?と個別に相談を受け入れていた。で、その内容というのが、同じ会社の先輩であるYから執拗に睨まれているとのことだった。うーん、なかなかデリケートというか難しい。客観視すると、Xの方が警戒心が強くて、人のことをじっと観察するようなところがある。私自身はXの被害妄想的なところを感じていたが、これはこれで有耶無耶にするわけにいかない。よくよく聞いてみると、じ〜っと睨みつけるわけでもなく、チラチラと様子を伺う感じで視線が合うのだと言う。強迫観念が強すぎるのでは?挙動不審な感じで見られていると証明することは物凄く難しい。相手であるY氏が見ていないと言えばそれまでだからだ。これは心霊現象ととても似ていて、本人が霊を見た!と言ったところで何も証明出来ないのである。私は裏をとるために、間接的にあくまでさりげなくY氏に当たってみると、まず軽く困惑されていて、ガチで心当たりは無いと言われた。それは演技でなく、本当に知らない顔つきであった。一方、嫌悪感を含みながら、睨んでくる、大きい音をたてる、嫌そうな顔をするなど、言い方は悪いが被害妄想に近いような言いがかり。しかし、このパワハラ問題を放ったらかしにするわけにもいかず、上司に報告することにした。当然というか上司は難しい顔をした。Yの睨み+Xの嫌悪感=パワハラという公式は成り立たないだろうし、片方が否定すればそれは証明すらも出来ないのだ(実際にY氏は否定している)何よりY氏の否定が、白々しいものでなく、本当に何の事か分からない。頭の中が?????状態である。しかし、通常、「ない」ということを証明するのは容易ではない。想定されるすべての可能性をつぶさねばならず、それは通常、ほぼ不可能に近い悪魔の証明である。そこで上司は、Xを個別に呼び、一体どのような嫌がらせを受けているのかを聞いてもらうことにした。かなりの長時間、その嫌がらせのパワハラについて語ったらしいのだが、Xが入社して間もない頃、彼はY氏を本当に尊敬していたのだ。(後日、その旨をXに伝えたら、そんな事実は無いと否定されたが、私は実際に聞いていたので間違いない)何故にこんなことになるまで関係が悪化したのか分からないが、もうどちらかが辞めなければならないほどにまで落ちそうな感じなので、上司は、Y氏以外の全員を集めた欠席裁判を実行することに決めた。その結果、まあY氏の主張は認められず、Xの希望通りに、別な部署に移ってもらうという結論に達した。欠席裁判になってしまったため、Y氏には弁解の余地がなく、Xはされたと思われるパワハラの内情をまくしたてた。ミーティングが終わり、上司に伝えてくれた私に感謝しているとXは言ってきたが、何故かスッキリせず、モヤモヤしたままだった。左手の薬指につけられていた指輪は外されていた。『離婚したんやな?』と聞くと頭をかきながら『そうなんすよ、伝えるの遅れました』と詫びを入れてきた。1年ほど前の離婚危機のときにだいぶ相談に乗り、何とか乗り切ったにも関わらず、その後、二人目が生まれて間もなくの離婚である。スマホの待ち受けが子供の写真からアニメキャラへと変わっていた。何より驚いたのは、二人の子供の親権を元嫁に預けた上に、慰謝料や養育費を一切払っていないのだ。シングルマザーにとことん厳しい国と社会である。向こうが断ってきてでも最低限の養育費は支払うのがスジだ。にも関わらず、何があったのか詳しいことなと聞いてないが二度と元嫁と会いたくない、話をするなときたもんで、この結末で大丈夫なんか?と思った矢先に、Xはコロナとインフルで長期離脱(本当のところは分からない)そしていよいよ明日来るって予定のはずが欠勤で、電話が繋がらない。挙げ句に退職代行が荷物を引き取りにきて、結果、Xは辞めることになり、仲の良かった同僚たちとも連絡が取れなくなった。結論からして、パワハラが本当にあったのか分からない。被害妄想かも知れないし、言いがかりがも知れない。むしろこの辞め方で、そっちの疑惑がいっそう強くなった。そして酷いのはXを紹介した祖父である。3年は頑張れと本人に言っておいて3年経つと、3年経ったから辞めていいぞ!って高校や中学に通ってるわけじゃないぞ!この子供にしてこの祖父ありだな!で、それを真に受けて辞めたのなら大馬鹿野郎だよ。3年毎に転職する気なのだろうか?結局、最後の最後まで感情移入出来んかったし、連絡もつかない今では何も言えない。と言うかゴルフ始めたいとか言うからゴルフセットあげたけど返して欲しいわ(セコい(笑))
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます