第6話 バカ者の全て

二十代で小さい子供が二人いて、若いのに比較的ちゃんとした奴的な評価だった… 少なくとも私の中では… ある日、お昼時に彼の奥さんが動けなくなったと連絡が入った。どうやら首のむち打ちか、頸椎症で全く起き上がれないらしく、赤ん坊が隣にそのままいるので、どうしたものかと報告を受けた。赤ん坊にミルクをあげることが出来ない。お義母さんは仕事中と聞き、なるほどそれは一大事だ。早く帰りなさいと指示をした。実際に彼は凄く狼狽していたので、余程のことと私自身も受け取り、上司には伝えておくので帰りなさいと再度伝えた。仕事云々でぐずぐずためらい、尻込みされても困るし、何より彼自身が、周章狼狽しゅうしょうろうばいしていた為だ。『すみません、それでは昼飯を食べて、一服したらすぐに帰りますので』とタバコを吸うかまえを見せた。ん?はい?昼飯?一服? ちょっと何言ってるか分からない(笑)Why?日本語難しいあるね。何か聞き違えたかいな?ついさっき自分で一刻を争う事態のノリで言ってきたはずである。なのに、何故に昼飯?そんなにお腹が空いていたのか?いやいや赤ん坊はミルクを飲めない事態だ!大ピンチではないか。もうこれを食べないと飢えて死んじゃう可能性があっても赤子優先でしょう。一万歩譲って、昼飯は許そう!食後のタバコの一服が理解出来ない。それともオレがおかしいのか?いやいや、絶対に間違ってるやろ!例えば 消防士が、◯丁目で火事ですと署内放送があり、『これは一大事だ!昼飯食って一服したら即出動だ!エイエイオー!』とかならんでしょ?昼飯なんて二の次でしょ。最初はキツい冗談かと思い、まともに返事をしなかった。わけがわからなすぎて、いよいよおかしくなりそうだった。例えば、親が危篤の知らせがはいって、『ただいまCR新世紀エヴァンゲリオン〜最後のシ者〜 暴走or覚醒モード中でして手が離せないので、終わり次第駆けつけます』的な冗談を言われて、なんでやねんとスムーズにツッコむほどメンタルは強くないし、場の空気は読む!そもそもこんな非常時にそんな冗談を言う奴=人間をやめたモンスターである。ツッコミを入れられる資格すらもない。だからこそ、何で昼飯食べた後の一服後なん?なのである。これはパチンコ屋に行くのに子供をクルマに置き去りにする親の心境くらい理解出来ない。極端な話、昼飯食って一服して駆けつけたら間に合わなかった事態にあえば、後悔なんてもんじゃないだろう。めちゃくちゃ焦りながら早退させてくださいと言ってきて、けど昼飯は食べて食後のタバコを吸います(笑)ちゃっかりしてるね〜と愛想の良いツッコミをする気もしない。そして当人は本当に昼飯を食べてタバコを吸ってから帰っていった。呆然自失という言葉がこれほど似合うタイミングはないくらいに打ちのめされて、目の前の景色が銀色に見えた。こういうことがあるから◯◯世代は とか、最近の若者は…とかゆとりだのさとりだのと一括りにされてしまう。例えそこに1%でもマシな人がいてもね(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る