第18話 聖水の効能

「この前からね、母が元気になったんだよ。」

教室でクリフは興奮気味に話す。


「信じると効きやすいっていうからな。あ、でも聖水だったんだけどあれ・・。」

聖水が効くってどういう事だろうか。

俺はさすがにおかしいと思った。


「それからさ、最近よく来る貴族がね・・変な顔してたな。元気になったんだから普通は喜ぶところなのにさ。いつも豪華な花束持ってくるんだよ。」


「貴族って?」


「あ~アルマート男爵だんしゃくって言うらしいんだけど、母に結婚しようってしつこいのがいてね。他にも何人か妻がいるらしいけど・・母が断ってたから。」




****




寮の部屋で

「アルマート男爵?知ってるわよ。」

ロココに訊いてみた。


「良い噂聞かないかも。見た目は良いらしいんだけどね・・暴力とか・・噂だけどね・・。」


「クリフの母親が求婚されてるんだって、元気になったら変な顔をしてるとか。」


「いつも豪華な花束持ってくるらしいよ。」


あれ、ひょっとして・・。


俺とロココは、クリフの家に行ってみることにした。


「おじゃまします。」

「あら、いらっしゃい!」

元気なクリフの母、メリッサは本当に治ったみたいだった。

確かに言われて見てみれば、少し元気になったからか肌色が良くなってる。

クリフと同じ黒髪と黒目、笑顔が素敵な美人だな。


「急に来るなんてびっくりしたよ・・。ってロココさんも?」

クリフは持っていたコップを落っことした。

「ありゃ、クリフ気を付けなよ。」


「変な話だけど、その花束見たいと思って・・。」

俺は本題を切り出した。


「確かに変だね。」


「それなら、寝室のベッドの横に飾ってあるけど持ってきましょうか?」


俺はロココにお願いして、家から鑑定のアイテムを持ってきてもらった。

正方形の厚さ2.3ミリの魔法陣が書かれた物。

テーブルに置いて、そこに花の入った花瓶を載せてみると・・。


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鑑定結果


体力消耗、精神衰弱、状態異常

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鑑定結果が映し出された。

「やっぱり・・。」

俺は予想したとおりの結果に納得した。


「どういう事?」

クリフが聞いた。


「つまり、意図的に体調を悪くするものって事だよ。」


「俺の作った聖水はどういうわけか、状態異常を回復する効果もあるんだよ。だから病気が良くなったって聞いて変だなって思って。」


因みにこの鑑定アイテムはダンジョンで見つかったものらしい。


「・・何だかそんな気がしてたわ・・。最低な男だね。」

メリッサは呟いた。


ドンドン


「噂をすれば影だね。」

元凶の元か。

「マイハニー。今日も元気かい?」

ドアを開けると、煌びやかな服装をした男性が花束を持っている。


「あら、アルマート男爵ごきげんよう。」

そこにはロココさんの氷の微笑。

何か怖い。


「な、なぜご令嬢が・・。」


「あら、お友達の家に行ってはいけないなんてことありませんよね?」


「ご友人?」


メリッサが言う。

「アルマート様、もうこれっきりにしてくれませんかね。」


「そうね、悪だくみはもうバレてしまいましたのよ?このことはお父様に報告いたしますので。」

微笑みを崩さないロココ。

絶対に敵に回しちゃダメな奴だこれ。


「し・・失礼いたしましたあ~~。」

バタバタ・・

慌てて、馬車に戻る男爵、段差で足を踏み外す。


「行ったわね~。もう来ないと思いますが・・。」

ロココはほっと胸をなでおろした。



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