5話
1945年5月9日のことだった。
俺は栄養失調で死にそうにながらもいつも通り同族の遺体を焼却場に持っていき少なく小さいパンを誰かに取られないようにしっかりと持って食っているときだった。
クソッタレゴミのイカれ狂っているドイツ兵がこの唯一の飯のありつける食堂に二、三匹入ってきた。
おいおいおい!ここでも暴挙を振るうのか、やはりアイツ等は悪魔だ。
そう思いながら睨みつけているとドイツ兵は静かに告げた。
――我がナチスドイツ軍は敗北した。
え?
それが俺の心の中に湧き出したことだった。
あの進撃していたナチス軍が負けただと......。
俺は心にポッカリと穴が空いたような、いわば空虚になった、あるいはこの世に一人だけ取り残されたような感覚といったほうが伝わるだろうか。
ナチス軍がソ連に信仰していたのは知っていたが負け圧されているとは聞いていなかった。
聞かされていなかっただけであろうか。
「やった......やったァァァ!!」
ある一人の同族は叫んだ。それは名一杯に叫んだ。
それを引き金にしてか同族は次々に叫び始めた。
ある者はやったァァ!!と。
ある者はハイル・レーニン!!と。
ある者はやったかと。
俺は思考がまとまらず叫ぶ気にもなれなかったが一つ感情は動いた。
歓喜だ。
俺は今壮絶に喜び生き残ったことに感謝をしている。
口は思考がまとまらないのに釣り上げ目も虚ろだったものが光を取り戻し、生きることを諦めた俺が再び生きることに挑戦した瞬間だった。
「ナチス、シャイス・ドロォフ!!!(くたばれ、ナチス!!!)」
俺は叫んだ。歓喜したことに気づき叫んだ。
それはそれは今までずっと言いたかった事を叫んだ。
嬉しかった。
この生活から逃れられる、開放されることに。
嬉しかった。
再び生きられることに。
嬉しかった。
生き残れたことに。
神は俺のことを見放さなかった。
俺はドイツ兵の前に行き言った。
「Als nächstes sind wir an der Reihe」
そして思いっきり殴った。
死ね、死ね、死ね!!!
くたばれ!思い知れ!俺たちの気持ちを!
喜べ!痛いだろう!
「お前たちがやってきたことはこんなものじゃ無い!!」
俺はハイになっており殴り倒れたドイツ兵からライフルを奪った。
そして、
―パァァン!
「Iyaaaaaaaaa!!!!!!」
太ももに一発撃った。
快楽だった。満たされた。
俺はライフルを投げ捨て残りの二人も殴り蹴り飛ばし、俺は同族に言った。
「俺たちの勝利だ」
その瞬間歓声が沸き起こり同族たちはドイツ兵の事を蹴ったり殴ったりしていた。
殺さないように。
この日俺等はソ連兵に救助され安全なところに連れて行かれた。
アウシュヴィッツ収容所の日常 宵@ZIBU @1221puroseka
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