第63話 作戦名は
「ライトニングディザスター作戦! なんてのはどうじゃ?」
「長くないですか?」
「それじゃオペレーション・ワルキューレ」
「いいですね。でも何で横文字に言い直したんですか?」
「何でって……その方がカッコいいじゃろ?」
「まぁ……確かにそうですね。ではオペレーション・ワルキューレ、現時刻を以て発動して構いませんか?」
「構わんよ。やれるだけやってみせい! お主の仁義、とく見せよ!」
「は!」
「頑張るんじゃぞ、タロウとやら」
満足そうに満面の笑みを浮かべたクレアは、椅子になっているタロスの頭を優しくポンポンと叩いて床に飛び降りた。
「タロウじゃないです、タロスです」
ボケなのか素なのか分からないクレアの発言に突っ込んだ俺はタロスを一度リリースし、ダレクらを引き連れて玉座の間を後にした。
「やったなクロード!」
「だいせいかーい、って感じー!」
「さぁ阿鼻叫喚の地獄を、おびただしいほどの絶叫と恐怖を! 血みどろの殲滅戦を! 惨たらしい蹂躙を始めよう!」
ダレクとカレンはいい、けどサリアから唐突な物騒発言が飛び出した。
サリアの目は獲物を前にした獣のように爛々と輝いており、いひ、いひひ、と小さく笑っている。
「いやちょっとサリアさん、キャラ変わってませんか……ダメですよそんな事、あくまでも救出作戦なんですから」
「甘い、甘いよクロード。蜜をたっぷりかけたパンケーキにさらに砂糖をかけたように甘ったるい! これから赴くのは戦場! 一人の犠牲も無くして成し遂げられると思うのか!」
「その犠牲は主に相手側なのですがそれは」
「なんてね。冗談冗談。牽制で二、三発撃ち込むだけだから大丈夫よ」
豹変したと思ったのも束の間、憑き物が去ったように普通の表情に戻ったサリアは悪戯っぽく「くくっ」と笑った。
「……からかわないで下さいよ。本気にしちゃいましたよ」
「でもどうするの?」
「何がですか?」
「その助けたい人の居場所、分かるの?」
「あ」
クレアの了承を得る事ばかり考えていたせいで、肝心のダラスとアスターの居場所を特定するのを忘れていた。
「あ、じゃないわよ全くもう……」
「す、すみません……」
「だっはっは! どんくせぇなぁ!」
「内戦のど真ん中でたった二人を探し出すなんて……何それメッチャ燃えるー!」
「いえ、二人は牢に閉じ込められていると聞いているので王城の地下牢獄のどこかにいるはずです。とりあえず現地まで飛びます。二人を見つける方法はその間に」
「「「了解!」」」
中庭に出たところでカイオワを召喚して乗り込んでいく。
そしてゆっくりと浮上したカイオワは、そのままテイル王国に進路を向けた。
「で、思いついたか?」
「はい、作戦と言えるような立派なものじゃないですけど」
「どうするのー?」
「その人達の持ち物とかあれば、私の探知魔法で探せるんだけどね……」
「えっ、それは本当ですかサリアさん」
「本当よ、私を誰だと思っているのかしら」
「さすがっす。なら作戦を変更して……」
「待て待て待て、クロードが考えていた作戦を聞こうじゃないか」
「いや……作戦て言えるほどの……ただのローラー作戦ですよ」
「何それー?」
「ローラーを掛けるように徹底的にしらみつぶしに探す作戦です」
「そりゃまた非効率な……」
「ですよねー。ですがその作戦は却下です。二人の持ち物があれば良いというなら二人の自室から拝借すればいいだけです」
ローラー作戦をやるとしたらTホークやら小型のモンスターやらを総動員してやる予定だったが、持ち物を拝借するだけなら二体、いや輸送係も含めて四体で十分だな。
「でもそれ誰がやるの?」
「モンスターを召喚してそいつに持って来てもらいます」
「よしよし、そしたらその持ち物から二人の場所を割り出し、さくっと拾ってサクッと帰れば作戦成功っつーわけだな!」
「一応そうですね。ですが……」
「何だよ、まだ何かあんのか?」
怪訝な表情を浮かべるダレク。
俺が感じている懸念は果たして二人がすんなり魔界に来てくれるのか、という所だ。
あの二人は軍属であり、それもかなり上の役職だ。
魔王軍に入りましょう、はいわかりました、と快諾してくれるのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます