第40話 話し合いは穏便に済みました

「ありがとうみんな。リリース」


 アーマードドラゴンをリリースし、ダレク達の元に駆け寄る。


「おいおいおいおいおい! なんだありゃあ!」

「あんなドラゴン見た事ないよー! マジぱないね!」

「アーマードドラゴン、五十年前に一度見かけたきり……相変わらず凛々しくてかっこよかった」


 思い思いの感想を述べる三人を連れ、待機させていたカイオワに乗り込む。

 カイオワは小気味良いローター音を奏でながら静かに上昇を始める。


「しかしなぁ、あのオッサン頑固すぎだろ」

「頑固っていうか老害っていうか? あーゆー人ホントだるい」

「軍は戦うことしか脳がない。だからこそああいった偏った考えが生まれる。仕方のないこと」


 三人はひどく疲れた様子で愚痴を吐く。

 それに関しては俺も同意見だ。


「ところで大丈夫だったんですか? 俺の事バラして」

「どうせあそこで知らぬ存ぜぬ突き通しても同じことになってたろうよ」

「どういう事です?」

「知らないならこちらは作戦を続行する。と言って聞かなかったろうよって事だ。あのおっさんの事だ。見つかるまで魔界から出ないだろうし、その分村の略奪も増えるし、他の魔族と必ずぶつかってた。今回まともに話せたのは俺達が人間だったからだ。これが魔族だったら問答無用で戦闘になってたんじゃないか?」

「ありえるねー魔族の事超嫌ってたっぽいしー」

「俺が戦わなくても他の魔族が手を出してた、ってことか……」


 ダレクの言い分にうんうん、と頷くカレン。

 それに補足するようにサリアが口を開く。


「そうなったら多分、クレア様は侵略行為とみなして全力で排除しにかかると思う」

「それじゃダメなんですか?」

「ダメじゃないだろうけど、本格的な戦いの前に関係ない魔族が傷つくのは、ね」

「それもそうですね」


 サリアの言い分に納得し、窓の外を見る。

 ブルーリバー皇国に俺の情報が流れたのなら他の国にも流れていると考えたほうがいいよな。

 今回はブルーリバー皇国だけだったけど、他の国同士が魔界で鉢合わせする、なんて事になったらどうなることやら……。

 それもこれも俺がテイル王国を見限った結果なのだけど、見限った俺が悪いのだろうか?

 もっと我慢して、色々と出来る事があったのだろうか?

 俺がした事は悪い事だったのだろうか。

 骨身を切り、メンタルを削りながら生きればまた違った結末になったのだろうか。

 もっとアスター将軍やダラス司令と話し合えばよかったのだろうか……。

 この時、俺はまだ気付いていなかった。

 自分が起こした小さな波紋が、大きなうねりになって世界を飲み込もうとしていることに。

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