レッツゴー・バイ・トレイン

風俗にでも行こうと思いまして、友人4人と車でミナミに向かったんです。


でもなぜか運転していた友人は車を天王寺駅近くの駐車場に停めたんですよ。


僕はちょっとだけおかしいなって思ったんですけど、友人関係が破綻するのが怖くて何も言えず仕舞いでした。


で、車降りて商店街をぼっちら5人で歩いてたんです。


すると友人の一人が「こんな真っ昼間から風俗なんかやってへんからちょっとTSUTAYAで茶して時間つぶさへん?」と言いました。


僕は別に風俗なんて昼からやってるし、ましてやTSUTAYAでお茶ってなんか変だなあと思ったのですけど、やはり友人関係を気にしてしまい何も言えず、そのまま商店街のTSUTAYAに入ったんです。


でね、びっくりしたんですけど、今の時代のTSUTAYAって中が喫茶店みたいになってるんですよね。


TSUTAYAなんて長い間行ってなかったので全然知りませんでした。


そして、TSUTAYAでコーヒーを嗜みながらボーイズトークに花を咲かせてたんです。


しばらくしてから女性3人組が僕たちのところに近寄って来て声をかけて来ました。


はじめは新手の宗教勧誘か?とも思ったのですが、話をしている内にその3人は中学時代の同級生だということが分かりました。


その女性たちと話すのは初めてぐらいのノリだったので少し緊張してたのですが、ほかの友人たちは昔同じクラスだったみたいで普通に話していたので僕もそれに紛れてちょこちょこ会話していました。


結構な時間話していたでしょうか、友人の一人が「ってかもう風俗いらんわ、帰ろよ」と言い出しました。


僕はおいおい女の子がいる前で風俗とか言うなよ!と思いましたが、友人関係を尊重するあまり今回も何も言えませんでした。


その頃になると僕の人見知りも解け、女性との会話にも花が咲くようになっていたので帰りたくなかったんですけど、帰ると言い出した友人の車でここまで来ているので従うしかありませんでした。


ほかの友人たちもブーブー言っていましたが素直に従っていました。


中学時代の同級生女子3人組とお別れし商店街を通り駐車場まで歩いて行きました。


すると友人のうちの一人が「トイレに行きたい」と言い出しました。


それにつられてか全員トイレに行きたくなったので目の前にある天王寺駅ですることになりました。


言い出しっぺの友人は大のほうをそれ以外の4人は小のほうを済ませ全員スッキリしました。


そこで事件は起きたのですがなぜかみんな改札を抜けてホームへ行くんですよ。


僕は、あれ?切符いつ買ったっけ?って思ったのですけど置いて行かれるのもイヤだったのでとりあえずICOCAで改札を通り走ってホームへ行きました。


僕らは2番ホームで電車を待ってたんですよ。


結構待ってましたかねー、で、電車が来たんですよね、7番ホームに!


うわー!ってみんななって慌てて7番ホームまで走りました!!


ヤバい!もう出る!!


ってなったんですけど間一髪で電車に乗り込めました、僕含め3人は。


扉が閉まり電車が出発しました。


僕たち3人は電車の窓から見える残り2人を指さしながら笑いました。


残された2人は何か叫んでるようでしたが窓が閉まっているので何を言ってるのか分からなかったので僕たち3人は「負け犬の遠吠えだな」なんて言いながら大爆笑していました。


電車が出発してすぐに気付いたんですけど、乗った電車は2両編成なんですよ。


なんかすごく珍しいなあなんて話を3人でしていたところ、ふと後部座席の人が気になったので振り返りました。


その人の顔を見て僕はビックリしました。


ちょっと前にニュースや新聞で話題になっていた男だったんです。


他に歌舞伎役者みたいな隈取メイクの人とかもいました。


うわあ!すごい人が乗ってるんだなあなんて思っていたのも束の間、僕たちの乗っている車両に車掌さんがやって来ました。


車掌さんは何故かマイクを持っていてバスガイドさんのように「右手に見えますのが○○〇〇〇〇でございます~」とか言いながら景観の紹介みたいなことをしてくれるんです。


ここらでちょっと異変に気付いたんですよ。


「その建造物聞いたことないな。」とか


「そんなもん大阪にあったんかよ!」とか


「これいつ駅に停まるんかな。」とか。


しかも僕だけ気付いてるみたいなんですよね。


車両に乗ってる僕以外の全員が車掌のガイドに聞き入って「うおおお!」とか「ああ!これを見たかった!!」とか言ってるんですよ。


僕もはじめはJRじゃなくて違う路線の電車に間違って乗ってしまったのかなあなんて思っててあまり気にしてなかったんですけど、周りの景色が見る見るうちに田んぼばかりの殺風景になってきたので、さすがにこれはなんかおかしいなと思い、ちょっと考えを整理することにしました。


周りはいまだに「うおおおお!」とか言ってます。


すると電車は殺風景な無人駅に停車したのです。


車掌さんは駅名を言いましたが聞いたことのない駅名でした。


その駅でなんかどこかで見た事あるような女性が乗ってきました。


僕はこの女性が誰か思い出せない気持ち悪さとこの不気味などこへ向かってるのか分からない電車とで頭がおかしくなりそうでした。


周りはいまだに「うおおおお!」とか言ってます。


友人2人もなんか「すげええええ!」とか言ってます。


スマホを見ても楽天モバイルなんで圏外です。


なんかすごい気持ち悪くなって、あぁ車酔いかな?って思った時です。


把握しました。


すべてを。


ニュースの男、歌舞伎役者みたいな人、さっき乗って来た女、すでに乗っている他の乗客。


みんな人殺しなんです。


「あ、これ乗っちゃいけない系の電車じゃん・・・」


そこですべての点が線になりました。


――――――――――


僕ら3人はとんでもない電車に乗ってしまっていたんです。


あの時乗れなかった友人たちが叫んでたのも今考えれば「乗るな!」と言っていたんだと思います。


僕はこの事実を一緒に乗った2人に話しました。


すると返ってきた言葉は


「何言ってんの?」の一言。


目が完全に死んでました。


畜生!2人ともやられてしまった!!


僕は考えました。


次に停まる駅で車掌の目を盗み降りるしかないと。


あとの2人も引きずり降ろさないといけないのでチャンスは1回きりだと。


車掌は甲高い声で「えー左に見えますのが~〇〇〇〇〇〇です~」と言い続けており、乗客も「うおおおお!」とか叫び続けています。


しばらくして電車のスピードが少し落ちはじめました。


僕はもうすぐ駅だなと思い、それぞれの友人のベルトを右手と左手で掴みました。


車掌は「次は~○○~○○~」と聞いたこともない駅名を言っています。


そして電車はゆっくりとホームに入っていきます。


プシュー。


電車が停まり、扉が開くと同時に僕は席を立ち扉の外へ勢いよく走りました。


もちろん両手で友人たちを引っ張って。


しかし、バチンッ!と誰かに手を叩かれ友人たちのベルトから手を放してしまいました。


僕の手を叩いたのはほかでもない友人たち本人でした。


畜生!やっぱり駄目か!!


僕は泣きながら自分一人だけ駅のホームへ飛び出しました。


車掌が出てきて連れ戻されたら終わりだなんて思っていたのですが、車掌はこっちをチラッと見ただけで、扉は閉まり、電車は行ってしまいました。


ああ、助かったんだ・・・でも・・・あいつら・・・畜生!


僕はホームで大号泣しました。


泣いていても仕方ないのでどうにかして帰る方法を考えようと思いました。


しかし、周りを見渡しても田んぼだらけ。


その田んぼの中を線路が横切っています。


道なんてありません。


スマホも楽天モバイルなんで圏外のまま。


ここがどこなのかも分かりません。


途方に暮れてホームで佇んでいると遠くの方で誰かがこっちを見ているのに気づきました。


見ていると言うか監視しているといった様子です。


僕に発見されたことに気付いたその人物は何かをポケットから取り出し口に当てました。


何してるんだろう?


そう思った瞬間!!!


チッ!とぼくの頬を何かがかすめました。


頬に手をやると血がついています。


吹き矢だ!僕を殺そうとしている!!


そう気付いた時にはもう遅かったのです。


連続で何回も何か鋭利なものが僕に向かって飛んできています。


もうよけれない。


ああ、死んでしまう。






























時刻は午前8時10分。


汗だくで目覚めた僕は死んでいないことを実感し、号泣しました。

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読切集 柳花翠且 @ryuukasuiso

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