知らぬが仏

ある日、友人たち4人と、1人の家でお泊まり会をした。

晩御飯も食べ終わり、風呂に入り歯を磨き、寝支度は完璧に終わる。

ただ、素直におやすみというわけにもいかず、俺たちはスマホでゲームをしたり、トランプやUNO、人狼ゲームをして楽しんだ。


時刻は午前2時。そろそろ寝ようか、そんな雰囲気になった時、友人の1人(以降A)が百物語をしようと言った。


百物語とは、日本の伝統的な怪談会のスタイルの一つで、100話の階段を語り終えると本物の物の怪もののけが現れるとされるものだ。


Aのその提案に俺ともう1人の友人(B)は乗り気だった。しかし残りの友人(C)は少し乗り気じゃなかった。

ただ、周りの空気に合わせざるを得なかったようで、Cもやると言い出した。


そうと決まれば、雰囲気を出すために電気を消し、遮光カーテンを閉じ、明かりはAのスマホのフラッシュライトただ1つだけだった。



それから各々自分の知る怪談を話す。

20分くらい経っただろうか、そう思いスマホを確認すると時刻は2時20分。

俺はふと、ちょうど丑三つ時だ。と思った。



すると、Bが急にこんな話を始めた。


「これはさ、俺が体験した話なんだけど。

この前お母さんとテレビを見てたんだよ。

そしたらある芸能人がこの話を聞くと、1日以内に誰かに家をノックされるっていう話を始めて。

聞き終わった後、お母さんと怖いなぁって言ってたんだよ。


そしたら、何時だったかな。5時くらいかな、ドアからドンドンドンってノックの音が聞こえたんだよ。みんなも知ってる通り俺んち昭和のアパートみたいな感じでさ、インターホンがないからノックで呼ばれるんだよ。

だからすげー怖くてさ。こう言う話は本当にあるんだなぁって思ったんだよな。」



Bが話終わると、何かが物足りなかったのかAが

「その話全部聞かせてよ。」

と言い出した。

俺とCはやめといた方が良いって言ったんだけど、Aは聞かない。


それにノッたBは全部話しちゃったんだよ。


まぁ怖い話って感じだった。





コンコンコン



遮光カーテンの奥で音が鳴る。



コンコンコン




また鳴る。




コンコンコンコンコンコン



急かすように何かが窓を鳴らす。




ドンドンドン



力強く3回窓が叩かれた後、





『勝手に話してんじゃねえよ!!』





男の様な、女のような重なった声が聞こえた。


声が聞こえた後、周りは一気に静かになった。




その後のことを俺たちは鮮明には覚えていない。

とにかく寝ようと言うことになって次の日に解散。

あれからお泊まり会はしていない。




一つだけ、覚えていることがある。

スマホを確認すると、時刻は2時29分。

丑三つ時が終わるとされている時刻の、1分前だった。







「知らぬが仏」という言葉があるように、この世には知らない方が良いこともたくさんあるのだろう。

あなたも気をつけたほうがいいだろう。

話されたくない話、知りたくない話は誰にでもある。

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塾の帰り道〜短編集〜 崖っぷち受験生 @gamu3121

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