第122話 謎の目玉

 ━━……真耶達がここに来てから10分が経過した。しかし、どれだけ歩いても全く景色は変わらない。


 真耶達はそんな中を歩いていく。しかし、少し歩いた時あることに気がついた。それは、進行方向に謎の白い球体があるということだ。


「ね、ねぇ、これって……」


 アイティールはそう言って近づく。その球体はこの世のものとは思えなかった。なんせ、なにかの生き物のような体毛があるのに、宙に浮いているからだ。


 真耶はその謎の生き物を見て言葉を失うそして、どうしようか悩む。


「何かわかるか?」


「いや、分かんにゃいにゃんね。神界でもこんにゃもの見たことにゃいにゃ」


 アイティールはそう言ってその球体を組まなく見る。その言葉を聞いた真耶は、そういえばこいつは神だったな、と心の中で思った。


 そして、それと同時に、直ぐにこの謎の生き物を殺しておけば良かったと後悔した。アイティールが球体を調べていると、突如その球体から羽が生えた。そして、線のようなものが入っていき、目が現れる。


 真耶はその羽が生え切る前に、かつ目が開きる前にアイティールの体を抱き抱えて近くの草むらに飛び込み隠れた。そして、音を立てないようにその球体を見る。


 その球体のど真ん中には巨大な目があった。そして、巨大な羽が生え、上には天使の輪エンジェルリングが浮かんでいる。


「何なんだ……?気味の悪い生物だ……」


 真耶は小声でそう言う。そして、アイティールに、無視してバレないように通り抜けよう、と言おうとして姿を見た。すると、アイティールが気分が悪そうに顔を青ざめさせていることに気がつく。


「どうした?大丈夫か?」


「……はぁ……はぁ……やだ……。見たくにゃい。もう見たくにゃい……!」


「おい、何を見たくないんだ?」


 流石の真耶も、ここまで異常に怯えられるとなにか良くないことが起こると分かる。そのため、アイティールをこの場から離れさせようとする。しかし、アイティールは頭の猫耳を抑え何も聞こえないようにしてうずくまりながら独り言を言う。


「にゃ、にゃあは集合体恐怖症じゃにゃいにゃ……!で、でも、これは耐えきれにゃいにゃ……!体が……ゾワゾワするにゃ……!」


「っ!?おい、どういう……まさか」


 真耶はあることに気がつき球体の方向に目をやる。そして、その球体の目玉を見た。確かにあの目で見つめられれば頭がおかしくなるかもしれない。だが、ここまで怯える必要は無いはずだ。だから、アイティールが耐えきれない何かが今から真耶達を襲うのかもしれない。


 真耶はそう思っていつでも逃げられるように逃げ道を作りながら、アイティールを落ち着けさせようと右腕で抱きしめる。


「おい、おい、俺の目を見ろ。耳を閉じるな。俺の言葉を聞け」


 真耶はそう言ってアイティールを優しく撫でる。しかし、その時アイティールの限界が来たのか、その場に嘔吐してしまった。


「オェ……ゲボ……!ゲボッ!ゲボッ!」


 アイティールは食べたものを全て吐き出したのではと思うほど嘔吐する。しかも、1回だけじゃなく何回も嘔吐する。


「オェェ……!ゲボボ……!」


「おい、大丈夫か!?」


「ゲホッ!ゲホッ!ら、らいよううにゃん……!」


 真耶は少しだけ落ち着いたアイティールの背中をさすって吐き気を押えさせようとした。そして、何度も優しく撫でることによってアイティールを落ち着けさせる。


「どうだ?少しはマシになっ……っ!?」


 真耶が何かを言おうとした時、ふと、とてつもない量の視線を感じた。しかも、あの球体がいた場所から。


 真耶は恐る恐る振り返る。すると、そこには羽を広げた球体がいた。しかも、その体全身には、余すところなくし小さな目が敷き詰められていた。


「っ!?」


 その大量の目を見た瞬間、真耶はその気色の悪さに気分が悪くなる。体も羽も、どこを見ても大量の目が着いているその球体は、全ての目で真耶とアイティールを見つめていた。


「まずい……!」


 真耶がその球体を見ていると、その球体の全ての目の前に白い光の玉が作り出される。そして、その玉からはその目以上に嫌な予感がした。そして、その予感がした時には、真耶は既に逃げ出していた。


「逃げるぞ!」


 真耶は気分が悪くなって、ずっと四つん這いのアイティールの体を抱き抱えると、凄まじいスピードで逃げ出す。すると、そんな真耶に向けて白いエネルギー砲が放たれた。そのエネルギー砲は追尾機能を持っており、逃げ出した真耶を追ってくる。


 しかし、どうやらその耐久力は低いようで、木や地面、岩にぶつかると爆発して消えるようだ。真耶はその場が森だったということもあって、なるべくその木にぶつけられるように木を足場にして走り抜ける。


 そのようにしてとてつもない速さで駆け抜けると、そんな真耶をおってくるエネルギー砲はだんだん減ってくる。しかし、それでもかなりの量のエネルギー砲が追ってきている。


「チッ……!」


 真耶はその異常な量のエネルギー砲に追われながらアイティールの姿を見た。さすがに、かなり速いスピードでかつ、いくつもの木をくねくねと蛇のように移動したため酔ってしまったようだ。さっきより気分が悪そうだ。


 真耶はそんなアイティールの姿を見ると、直ぐに追ってくるエネルギー砲の数を見た。残りあと7つ。当たることは無いだろう。


 真耶はそう思って更に逃げる。2つは気にぶつけ、もう2つは岩にぶつける。そして、最後の3つは地面にぶつけさせ全ての対処をしきった。


 そして、その勢いを殺すために急ブレーキをかけ止まる。そして、姿勢を低くして目玉にバレないように隠れた。


「クソ……!何なんだよ……!?また変なやつが出てきやがった」


「う……うにゅ……」


「ん?起きたか?」


「にゃ、にゃん……。起きたにゃ」


 アイティールは頭をブンブン振りながら目を覚ませる。そして、真耶の顔を見た。


「どうした?」


「っ!?ど、どうもしてにゃいにゃ!」


 アイティールはそう言ってぷいっと顔を背ける。その頬は少し赤らめていた。


「いや、どうもしてないなら早くどいてくれよ」


「嫌にゃ!」


 アイティールはそう言って真耶に力強く抱きつく。そして、離すまいと胸に顔を埋める。真耶はそんなアイティールを見て、ほんの少しだけこう思った。


(……面倒くさ)

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