第15話 2つの成功
それから真耶達は走り続けた。その為か、歩いていけば1時間かかるところを20分程度で到着した。
真耶は目的地となっていた、廃城の前に来ると神眼で城全体を見つめる。すると、ほとんどの情報が読み取れなかった。
「……何も見えん」
「どういうことだ?」
「結界が張られてるのかもしれん。見ようとすると黒いモヤに遮られる」
真耶はそう言って目を元に戻すと、城の入口と思われる場所に向かって歩き始める。そして、入口の前に来た。
だが、そこから中に入ろうとしても何故か入れない。よく見ると、そこには結界が張ってあった。
「なるほどな。これが邪魔してたのか……」
真耶は少し目を瞑って目に魔力を溜める。そして、ゆっくりめを開いた。その目には灰色の円形の波動のようなものが映っていた。
真耶はその目で真っ直ぐ結界を見つめると、手のひら全体でその結界に触れて魔力を流す。すると、その触れている部分から結界が崩壊し始めた。
「”
そして、遂に人が3人通れる穴が結界に開き、そこから3人は城の中に侵入する。目標は最上階。おそらくそこに闇堕ちの騎士がいるはずだ。
真耶はそう考えて最上階を目指すのだった。
━━1階━━
さすがにこの階層には何も無さそうだ。だが、RPGでよくあるのが1階に隠し扉があってそこにお宝があるというもの。だとしたら、探さない道理はない。
「まさか、ここでオタク知識が役立つとは」
真耶はそんなことを呟きながら1階を組まなく探す。しかし、これといってそんな感じのものは見つからない。もしかしたらこの城には隠し扉とかそういう概念が存在しないのかもしれない。強いて言うなら、変な玉があるということだけが気になるところだ。しかし、その玉もとることが出来ない。
「次行くか」
真耶はその玉を不思議に思いながらも次の階へと進むことにした。
━━2階━━
さすがにまだ2階ということもあって敵は弱い。いや、普通の人は強いのかもしれないが真耶達からしてみればかなり弱い。
RPGで言ったら、だいたいこの城が最初のボスってところだからレベルは30~40位で来るはずだろう。そうすれば、ここの敵はかなりの強さになるわけだ。神眼で見たわけじゃないから詳しいところは分からないがな。
それと、神眼が話に出たから少しこの城についてわかったことを説明しておこう。どうやらこの城の中では神眼は意味が無いらしい。神眼を使うと城中に張り巡らされた黒いモヤが視界を遮り何も見えなくなってしまう。だから、使うと逆効果なわけだ。
「簡単。瞬殺」
モルドレッドがそんなことを言いながら魔法を放つ。だが、その魔法はディスアセンブル砲では無い。普通の魔法だ。
「……やっぱりあの苦しみを味わってないと覚えないのか。だが、もうあんなことはさせる訳には行かないしな」
真耶はそう呟いてモルドレッドの頭を撫でる。モルドレッドは突然そんなことをされて少し戸惑ってしまった。真耶はそんなモルドレッドを見てほわほわした気持ちになると次の階に行くことにした。
「よし、次の階に行くか」
「拒否。まだ調べきれてない」
「はい。すみません……」
モルドレッドに冷静な対応をされ、真耶も冷静に戻ってその階を調べることにした。
これもRPGによくある話なのだが、2階は普通に何も無い。真耶が日本にいた時にしていたゲームでは2階にはあまりいいものは無かった。あってせいぜい宝箱が1個くらい。
「まぁ、探さない訳には行かないよな」
真耶はそんなことを呟きながら2階を組まなく探す。すると、鍵がかかって閉ざされた扉を発見した。その扉は鉄の扉で、他の部屋の扉とは違っている。
「ここになにかありそうだな」
「開けれるのか?」
「まぁな。”
真耶は魔法を唱えて鍵を開ける。そして、扉を開け中へと入ろうとした。その時、ふと振り返って見ると誰かいる。後ろにはアーサーとモルドレッドしか居ないはずなのに、もう1人いる。
「っ!?何者だ!?」
真耶はそう言ってその何者かに剣を突きつけた。すると、その何者かは真っ直ぐ真耶に向かって歩いてくる。
「死ね」
真耶はその何者かに容赦なく剣を突き刺した。
「っ!?」
なんと、その何者かは剣を突き刺されてなお向かってくるのだ。それに、突き刺しているのにも関わらず血を流していない。
「っ!?霊体か……!」
真耶は直ぐに
「すぐに終わらせる」
真耶はそう言って地面に手を触れた。そして、地面から剣を作り出す。その剣は、
「”
真耶は武器を握りしめると直ぐにその剣で霊体を切りつける。その刃から放たれる白い光は霊体に触れた瞬間鋭い刃となってその霊体を切り裂いた。そして、その霊体は消えてしまった。
「……行くぞ」
真耶はその目を元に戻すとそう言って振り返り、鉄の扉を開いた。そして、部屋の中へと入っていく。すると、部屋の中に宝箱が1つあった。真耶はその宝箱を空け中身を確認する。すると、中から霊結晶のペンダントを発見する。
「これは?」
「霊結晶出できたペンダントだな。霊体を可視化して触れることが出来るようにするものだ」
真耶はそのペンダントの説明をすると、それをバッグの中にしまい込む。そのペンダントをつけていれば霊体が可視化するが、別にそんなものなくても見える真耶からしたら必要ないのだ。
それに、モルドレッドやアーサーに渡してもいいが、見えることで襲ってくる時もある。だから、今は真耶が持っていて良いだろう。
「さて、次の階に行くか」
「そうだな。次行ったら最上階か」
「そうだな。屋上とか抜きにしたら、次が最上階だ。そして、その階に王座の間がある」
「と、言うことは……」
「大物」
「フッ、気分も上がってきたんじゃないか?ボコボコにして目的を達成する」
真耶はそんな怖いことを言いながら次の階に行くための階段を探し始めた。
━━それから真耶達は2時間ほどその階層を調べた。しかし、それでも次の階に上がる階段を見つけることはできなかった。真耶は少し不思議に思い、一階に降りる階段の前に立って言った。
「無いな。恐らくこの階に上へ登る階段は無い」
「だが、下の階にも何も無いだろ。隠し扉があった訳でもない」
「いや、なかった訳じゃない。見つからなかっただけだろう。とりあえず下の階を探そう」
真耶はそう言って下の階へと降りていった。アーサー達はその後ろを追いかけて行った。
「……」
「……」
「……」
それから3人は黙々と隠し扉を探した。壁の向こう側、床の下、天井、ほとんど探したが見つからない。そして、残るはあの謎のた玉だけとなった。
「やっぱりあれがヒントになってたのか。とりあえず動かしに行こう。何か起こるかもしれん」
真耶はそう言ってその玉があった場所に向けて歩き始めた。しかし、その道中で突然アーサーが話しかけてきた。
「運ってどう思う?」
「ん?急にどうした?まぁ、運って言ったら良い方が良いよな。フッ、多分俺の運が悪いからこんなに見つからないのかもしれんがな」
「確かにそうだな。お前は昔から運が悪かったからな。なぁ、真面目に答えてくれ。お前は成功は運だと言ったよな。そして俺も言った。だがな、俺は運も実力のうちだからそう言ったんだ。運も実力のうちなら成功も実力になる。なぁ、お前の運とはなんだ?」
アーサーは真耶にそう問いかける。真耶はその問いかけを受けて少し考えると足を止めて言い出した。
「俺の言う運とは、そのままの意味だ。実力なんかじゃない」
「……なぜそう思う?」
「何故か……それはな、努力をしても成功しない人がいるから。いや、それだけじゃない。そもそも俺達のこの強さも運が良かったからなんだ。アーサー、お前は自分の強さが努力で手に入れたものだと思うか?」
「あぁ。我の力は我の努力で手に入れたものだ」
「そうか。だがな、本当にそれは努力で手に入れたものか?」
「っ!?」
「お前も気づいているんだろ。人にはステータスの限界値というものがある。その限界値に達すると人はそれ以上ステータスを上げることは出来なくなる。そして、その限界値には個人差があって、低い者も入れば高い者もいる。このステータスの限界値は全て運で決まる。運が良ければ俺達のようにカンストせず、運が悪ければステータスは早々にカンストしてしまう。要するに運で決まるんだよ。俺達がどこまで強くなれるのかはな」
真耶はそう言って静かに振り返った。そして、アーサーの顔を見つめる。たが、アーサーはそんな真耶の目を見つめながら言ってきた。
「だが、それでも強くなろうとすれば出来るはずだ」
「いや、違うな。言っただろ。運で決まるって。たとえどれだけ強くても、努力する環境がなければ強くなれない。そして、その環境を手に入れるには運が必要だ。いや、それだけじゃない。お前は運も実力のうちと言ったな。実力を手に入れるには努力が必要だ。だが、努力をするにはその環境が必要になる。そして、その環境はさっき言っただろ?運で決まる。やっぱり運なんだよ。成功は運が全てなんだ」
真耶はそう言って静かに拳を握りしめた。アーサーはそんな真耶の様子を見て言葉を失う。
しかし、真耶はそんな状況になっても話を続けた。
「……俺はな、昔日本にいた時ウェブサイトで小説を書いてみたんだ。期間はだいたい3年程度だったかな。俺はその時何作か投稿したんだがな、そのどれもが全くと言っていいほど見られることはなかった。ネットで何人かは面白いと言ってくれたんだがな、それでも見られることは無かった。そこで俺は気がついたんだよ。やっぱり成功するには運が必要なんだって。その時、その瞬間に興味を持ってくれる人に見つけてもらう運がいるんだって。だから、運がないやつは埋もれて地中深くに閉じ込められる。そう思わないか?」
「……確かにそうかもしれない。だが、それでも努力を重ねればいずれは……」
「じゃあさ、これはどう考える?この世界で努力をして俺を倒そうとしているやつがいたとする。そいつはとんでもなく強く、騎士団に入れば俺を倒すのなんて容易いくらいに。だが、その人の欠点は運が悪く何をしても上手くいかない。さぁ、アーサー……こんな状況になったら君はどう考える?やっぱり運が全てを左右する。そう思うだろ?騎士団に入るのだって見つけてもらわなくちゃいけないんだ。でも、見つけてもらうには運がいる。運が悪いと見つけてもらえない。もうこれでわかっただろ?同じ話を何度しても変わらない。結局は成功は運なんだ。だから、俺達がこうやって最強を名乗れるのも、運が良かったからなんだ」
真耶はそう言って静かに握りしめた拳を開いた。その掌からは血が流れている。どうやら強く握り締めすぎたらしい。
真耶はその手のひらを見つめながら少し考えた。そして、手のひらから流れる赤い血をもう片方の手で抑える。すると、傷は全て治った。
「……じゃあ、最後の仕掛けを動かそう」
真耶は重苦しくなった空気を変えようとせず、その重苦しい空気に逆らいながら前へと突き進み仕掛けの前へと来た。そして、仕掛けを動かす。
この仕掛けは簡単だ。最初は玉を動かすのかと思ったが、そうではなく、ただ少し上に上げるだけだった。おそらく前の時は上がることは知らず、上げようとしてもたまたま上がらなかったのだろう。
「……いや、このペンダントが足りなかったのか……」
真耶はそう言って手持ちの中からペンダントを取りだした。恐らくこのペンダントに何かしらの魔法が組み込まれており、それによってこの仕掛けが作動したのだろう。
そして、真耶が仕掛けを動かしたことにより、さっきまではにもなかった場所に隠し扉が出来た。そして、さらにその奥に小さな部屋と階段を発見する。
「……危険。背後」
「っ!?」
モルドレッドがそう呟く。その刹那、後ろから針のようなものが飛んできた。真耶達はその針を避けると直ぐに後ろを向く。すると、そこにはハリネズミのような魔物がいた。今真耶達がいるのが小さな部屋なのだが、その部屋の3分の1程の大きさを持っている。かなりでかい。
「
真耶はそう呻くと、地面から剣を作り出して向かって行った。
「”
炎の刃が巨大ハリネズミを襲う。しかし、不思議なことにその刃が通らない。体がゴムのように跳ね、さらに硬いのだ。
「っ!?」
さらに、巨大ハリネズミは攻撃してきた真耶に対して照準を合わせ始める。そして、背中の棘を少し鋭くさせた。真耶はそれを見て即座にその場から離れる。そして、剣を構えた。
その刹那、巨大ハリネズミの背中から巨大な針がいくつも真耶達に向かって放たれた。
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