第13話 変わり果てたかつての仲間

 それから真耶達はスタットの街に向けて歩き続けた。そして、少し歩いたところでスタットの街に到着する。


 真耶達はスタットの街に着くと、直ぐにギルドに向かった。神眼で見れば異変を知ることが出来るが、魔力を消費するわけにはいかない。今真耶の体は限界状態で、魔力回復力も衰えている。


 だから、ギルドに行って情報を得る方がこの世界についてしりやすいのだ。


「真耶、気づいているか?」


「あぁ」


「追跡。監視」


 真耶達はそんな会話をする。


 先程から真耶達はある視線を感じていた。それは、希望達と別れてすぐだ。恐らく感じをつけられたのだろう。かなりの手練のようだがまだ甘い。


「この感じ……霧音か」


「仲間か?」


「いや、元クラスメイトだよ」


「元……ね。クラスメイトだったヤツらは全員お前のこと覚えてないんだろ?」


「そうだな」


「じゃあ、お前と一緒に旅していたヤツらはどうなんだ?クラスメイトより親密な関係になっただろ?」


「もしかしたら覚えているかもな。ただ、理を1度消滅させた。覚えている可能性は限りなく0に近い」


 真耶はそう言って霧音がいると思われる場所を一瞥し、ギルドに向かう足をさらに早めた。そして、ギルドの前に来る。


「ここにいるんだろ?最初の1人が。会いに行かなくていいのか?」


「……良いさ。もしこれで会えなかったらそれは運命じゃない。ただ、会えたのならそれは運命だということだ」


 真耶はそう言ってギルドの中に入った。中に入るとそこには沢山の冒険者がいた。その冒険者の中に初めて出会った冒険者もいるのが見えた。


 しかし、どの冒険者達も皆ピリピリしている。変なことを言えば直ぐに敵対しそうな雰囲気だ。


 真耶達はそんな冒険者の間をかいくぐって受付へと向かう。そして、受付にいる女性の前に立った。


「ようこそスタットの街へ。ここはスタットの街のギルドです。今日はどんな要件ですか?」


「すみません。だいぶ昔に冒険者登録した者なんですけど、これって使えますか?」


「少し拝見させてください。……えっと……はい。使えます。ですが、ステータスの変動があるかもしれません。もう一度測ってもいいですか?」


 受付の人はそう言ってステータスを測る機械を取りだした。


 ちなみに今真耶が出したギルドカードは、過去に真耶が作ったものだ。ステータスプレートの内容も全く変わっていない。


「はい、準備出来ました。ではここに手をかざしてください」


 受付の人はそう言った。真耶はその言葉にしたがって機会の上に手をかざす。すると、前回と同じように機械が異音を放ち始めた。


 そして、ステータスプレートが光り始め文字が書き変わっていく。


「……」


「……」


「……はい、終わりました。えーと……はい。このステータスだとまずはEランクからですね」


「了解です。ありがとうございます」


 真耶はそう言って依頼板クエストボードがある場所に向かう。しかし、途中で止められた。


「ま、待ってください!まだ説明が……」


「大丈夫だよ。全てわかってる」


 真耶はそう言って受付の人と別れた。受付の人は少し不思議な顔をしてこっちを見つめていた。


「良かったのか?」


「別にあれはルーナじゃないよ。ここにいない」


 真耶はそう言って依頼を探す。そして、Eランクの依頼を全て集めた。


「よし、これを受け……」


「疑問?なんでEランク?」


「ん?あぁ、あれね。こっちの世界の人に本当のステータスを見せるわけないだろ。ステータスは見せる前に書き換えたからな」


 真耶はそう言って依頼を一纏めにする。そして、大量の書類のような山積みの依頼の紙を受付へと持って行った。


「すみません。これ全部受けます」


 真耶は不敵な笑みを浮かべたまま受付の人にそう言う。すると、受付の人はその依頼の量を見てゾッとした。


「こ、これですか!?失敗したら違約金が発生しますよ!」


「別に失敗しないから良いだろ」


「ん〜……その、少し言いにくいのですが、あなたのステータスではこれは難しいかと……」


「やらせてあげなさい」


 突如受付の奥の方からそんな声が聞こえてきた。奥を見ると女の子がこっちに向かって歩いてきている。そして、真耶の前に立った。


「アーサー、久しぶりね」


「っ!?お前は……」


「覚えててくれたのね。ありがとう。それと、どうもはじめまして。私なルーナ・グレース。このギルドの支部長よ」


 ルーナはそう言って少し頭を下げた。真耶は、そんな対応をしてきたルーナに対して少し笑みを浮かべて話しかけた。


「ほら、支部長もやらせろと言ってるだろ」


「ですが……」


「良いわよ。アーサーは強いからね。その隣のアンタは誰か知らないけどどうなの?」


「ステータスはこんな感じです」


 そういって受付の女性はどこからか取り出した真耶のステータスプレートの複製を取り出した。


「おい待て、それはなんだ?」


「あなたのステータスプレートの複製よ。冒険者は皆作ってるの。これも安全のためよ」


「なるほどな」


 ルーナは真耶に説明をすると真耶のステータスプレートの複製を見る。そして、少し頷くとその複製を受付の女性に戻して言った。


「ふーん……こんなものね。アーサーの連れにしては低いわね。そもそも、あなた何者なの?」


「……俺は月城真耶。アヴァロンでラウンズをやっている」


「ラウンズ?このステータスで?ラウンズも堕ちたわね」


 ルーナはそう言ってバカにするように鼻で笑った。そして、振り返って奥へ入っていく。


「ま、好きなようにしなさい。失敗しても知らないけど」


 ルーナはそう言って手を振って完全に奥へと入って行ってしまった。真耶はその背中を見つめながら少しだけ笑って言った。


「じゃあこれ受注してもいいでしょ?」


「良いですよ。ギルドカードを出してください」


 真耶がそう言うと、受付の人は少しイラつきながらギルドカードを出すように言ってきた。真耶は言われた通りギルドカードを渡す。


 すると、ギルドカードになにかを打ち込み始めた。そして、一瞬だけギルドカードが発光すると、何事も無かったかのように真耶に戻す。


「これです受注完了です。終了したらまた来てください」


「了解した」


 真耶はそう言ってギルドカードを受け取ると、そのまま振り返ってギルドを出た。そして、そのまま街の門まで歩いて行き、目的地へと足を進める。


「なぁ、あいつは覚えてなかったのか?」


 その道中でアーサーが質問してきた。


「そうだな」


「やはりか……」


「まぁ、でも少しは身に覚えがあったみたいだよ。心眼で心を覗いて見たけど、何故か俺の名前は身に覚えがあったらしい」


「何故だ?」


「恐らく、何かしらの原因でケイオスの理を消滅かせたのが不完全だったのかもしれないな。だから、あとから月城真耶が敵だ、という嘘の記憶を押し付けられ、それが自分の記憶としてとらえられてしまう。まぁ、他にも原因があるんだろうがもう分からん。ただ、神が関係しているのは確実だ。その証拠に、何故かルーナは俺に対して激怒していた。初対面の相手に激怒するのは不自然だろ?」


 真耶は歩きながらそう答える。アーサーはその話を聞いて少し納得した。


 そして、それから歩き続けて目的地に到着する。目的地に来ると真耶は直ぐに戦いの準備を始めた。


「……なぁ、アーサー。お前は運命や宿命をどう考える?」


「なんだ?唐突だな。特に考えたこともないな」


「そうか……。俺はな、生まれてから変えようとするのが運命で、産まれる前から変えようとするのが宿命だと思っている」


 真耶はそう言って地面を見渡して地脈が重なっている場所を探した。


 現在真耶達がいるのは草原だ。そこには遮蔽物は無く見晴らしがいい。その為どこに魔物がいるか分かるし、どこに居ないかも分かる。


 そして、今はこの近くに魔物はいない。真耶はそれを確認してから突然そんなことを話し始めたのだ。


「哲学だな」


「そうだな。……人は最初から全てを諦めているのかもしれない。あれは出来ない。これも出来ない。出来ないのは運命だと言って何もしない。本当は出来るかもしれないのに。自分で制限リミットを作ってるんだ」


 真耶はそう言って地脈の真上の土をどかし始めた。そうすることで地脈が顕になる。当然その地脈にはヘファイストスの魔力が流れており、熱気を帯びている。


「見ろ。この地脈だって初めはコントロールなんて出来ないと言われてきた。だが俺は出来る。出来るかもしれないと思ってたやったからだ。だから、初めから諦めることなんて無いんだ。ただ、全てにおいて言えるのは、”どれだけ強くて才能があっても、それを見つけてくれる人がいなければそれは無いのと同じ”なんだ。アーサー、お前は今の自分をどう考える?実力で掴み取った地位か?それとも、運で手に入れた地位か?」


 真耶のその問いかけは、その場にいるものの心に深く突き刺さった。

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