第3話 2人の神
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「と、言うことがあってな。それから俺達はすぐにこっちの世界に戻ろうとしたさ。肉体は、あの日光の粒子となって消える前に俺が魂となって奏と一緒に集めておいたからな。ただ、ケイオスの魂がかなり傷ついていた。それの回復に時間がかかってな」
「なるほどな。それでこんなに時間がかかったのか……」
アーサーは真耶の話を聞いて納得する。モルドレッドもだいたい理解したようだ。
「ん?それじゃあ今は真耶が主導権を持っているわけだろ?じゃあケイオスはどうしたんだ?」
「ケイオスは、魂は完全修復したんだけど、しばらく安静にしておかなければまた魂に傷がついてしまう。それに、理を消した代償が大きかったようでな。今は動けないんだ」
「そうだったのか……」
真耶の話を着てアーサー達はなんとなく理解した。
真耶は話終えるとすぐに周りをキョロキョロさせて、何かを探しているような雰囲気を出す。
「何を探している?」
「いや、俺のリーゾニアスが消えてな。一緒に持ってきたつもりだったが、途中で落としてしまったみたいで無くしたんだよ」
そう言いながら何かしらの感知魔法を使う。すると、近くにあることが判明した。
真耶は、手を前に突き出し呪文のような言葉を唱える。
「”来い”」
その刹那、モルドレッドの持っていた剣がカタカタと震え始めた。そして、その剣は吸い込まれるかのように真耶の手の中に向かって行く。
真耶は飛んでくる剣をちょうどいいタイミングで握りしめると、何度か振って刃を見つめた。
「なんだ、お前達が持ってたのか。……傷は……かなり着いてるな。やはり、理を切り裂いた時にボロボロにされたか」
「その剣、壊れかけてるの?」
「……剣自体は壊されているわけじゃない。剣を構成する理が壊されている。使えないこともないが、消える可能性の方が高い。”
真耶はそう言うと、地面に手を付き魔法で鞘を作り出した。そして、その鞘を背中に担ぎ剣を収める。
「その力で剣を治せないのか?」
「理に干渉しすぎてこうなってしまったんだ。これ以上干渉すれば、完全に消えてしまう」
そう言いながらどこかに向けて歩き始めた。その先には王城がある。
アーサーはそんな真耶を見て少しだけ申し訳ない気持ちになった。だが、今この状況で真耶が帰ってきてくれたことは好都合だ。やはり、毎日祈った甲斐があったというものだ。
「……それで、アーサー。お前は俺に何をして欲しいんだ?」
「っ!?どういうことだい?まるで我が悩んでいるみいじゃないか」
「そういうことだろ?あんなに長い間2人でいたんだぞ。俺を舐めるなよ」
「はは、確かにね。じゃあ、単刀直入に言うよ。これから神と悪魔、そして人間の聖戦が起きる。真耶、君にはその聖戦に参加して神と悪魔を殺して欲しい」
「っ!?どういうことだ?俺がいない間に何があった?」
「全て話すよ。でも、一旦城に戻ろう」
アーサーかなり真剣な眼差しで真耶の目を見てきた。モルドレッドはその話を聞きたくないのか、顔を俯かせてフードを被っている。
真耶はそんな2人の異様な雰囲気を見て、今置かれている状況が今までとは全く違うことに気づいた。
「そうだな。じゃあ、戻るか」
真耶はそう言って左目に
真耶は
「真耶、ここから先は見たくないものを見ることになる。覚悟してくれ」
アーサーはそう言って門を開けた。すると、そこには大量の血がべっとりとそこら中に飛び散っているあとが残っていた。
真耶はそれを見つめながら城の中を進んでいく。その城の中も血がこびりついていた。
中にはいくつもの武器が散乱しており、戦ったあとがかなり残っている。だが、これらの戦ったあとは真耶達のものではない。1年前の戦いではここまで血は流さなかった。だから、また別のもの。
「……」
真耶達はそんな激しい戦いの跡が残る城の中を歩き、作戦会議室の前まで来た。そして、3人はその中に入る。
「……それで、何があったか話せ」
中に入るなり真耶はアーサーに向かってそう言った。アーサーは少しだけ顔を俯かせて話を始める。
「……あの日、君が死んだあと俺達の世界から君という存在が消えた。その時たまたま王の資格が我に戻ってきたからわかったさ。それから世界中の人々は君のことを忘れてしまった。だから、君がいたから攻めて来れなかったが、いなくなってしまえば攻めれない理由がない。だから、神々と悪魔達が聖戦を起こした」
アーサーは少しだけ怒りよオーラを出しながらそう言った。真耶はその説明を受けて少しだけ考える。
「……そうか……じゃあ、全て俺の予想通りに動いているわけか……」
真耶は誰にも聞こえないように小さくそう呟くと、少しだけ自分の手のひらを見つめて言った。
「それで、その聖戦を止めるために聖戦を起こしている人達を殺せってことか。もしくは、指揮官を殺すか……」
「ハハ……やっぱり真耶には分かるか。そういうことさ。お願い出来るか?」
「良いぜ。アーサーの頼みなんだ。どんな事でもやってみせるさ」
「ありがとう。それじゃあ早速なんだが……」
トゴォン!!!
その時、突如爆発音がアヴァロンに響いた。その数秒後に真耶達がいる作戦会議室に謎の巨大な木の根が突っ込んでくる。
その木の根はどこかで見たことがあるような形をしていて、不思議な模様が描かれている。そして、その木の中から男が1人現れた。
「初めまして。私はロキ。今日は少し用があって来ました。早速ですが……モルドレッド、あなたを聖戦を起こした時空犯罪者として連行します」
男はそう言って恐怖心を煽るような不敵な笑みを浮かべてモルドレッドを木の根で拘束した。
「「「っ!?」」」
「おい、待てよ。俺にちゃんと説明しろ」
「君は誰ですか?新参者に構ってる暇はないんですよ」
「残念ハズレだね。俺は新参者じゃなくて、古参民だ」
真耶はそう言って手のひらに雷を溜めると、容赦なくロキの右肩を貫いた。……いや、正確に言えば、心臓を潰そうとしたがその照準をずらされた。
「っ!?」
「いきなり痛いですね」
「まさか……これを防ぐとは……やはり俺は戦闘は得意では無いな」
「何言ってるんですか?死にますよ」
ロキがそう言った刹那、真耶の全身に木の根が絡みつく。
「っ!?」
「フフフ……っ!?」
「残念だったな。その手はくわないよ」
真耶はそう言って絡みついたと思われていた木の根を難なくどける。どうやら絡みつく前に波動を放ち防いでいたらしい。
ロキはそれを見て多少驚いたものの、すぐに冷静になって木の根を元に戻す。そして、真耶と睨み合う。
「……今回は僕の負けですね。ですが、モルドレッドは連れていきますよ」
「行かせるかよ」
真耶がそう言ってロキを捕まえようとした時、突如目の前に黒い炎を放つ槍が落ちてきた。
その槍は回転しており、完璧に真耶を殺そうとしていた。
「誰だ!?」
真耶は直ぐにそう問いかけた。しかし、返答は無い。
「……遅いぞ、ロキ……」
すると、突如そんな声とともに男が空いた穴を通り空から降りてきた。
「何をやっている?早くしろ」
「済まないね、オーディン。ちょっとトラブルが発生してさ」
「……オーディンだと!?なぜオーディンとロキが手を組んでいる!?それに、お前はアヴァロンと不可侵条約を結んでいただろ」
「不可侵条約?そんなものとっくの昔に消え去った。そもそも、貴様は何者だ?貴様のせいで時間が遅れているのか?」
オーディンはそんなことを言いながら武器を構える。
嫌な予感しかしない。前に何度か会ったことがあるが、オーディンはかなり怒りっぽい。だから、恐らく今も怒っているはずだ。
「死ね」
案の定オーディンが槍を放ってきた。真耶は壁に手を付きアダマンタイトの剣を壁から作り出すと、その剣で槍を弾いた。
「っ!?」
「ほぅ、これを弾くとは。なかなかやるな」
「オーディン、準備が出来たよ」
「わかった。貴様とはまたどこかで会うだろうな」
オーディンはそう言ってロキの元へ行く。ロキはオーディンが近寄ってきたのを確認すると、巨大な木の根で自分達を包み込んだ。そして、そのまま壁の中に吸い込まれていく。
「全く……どうなってんだか……」
真耶は半分呆れた様子でそう呟いた。
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