王者復活編
第1話 理の王者の復活
「……」
「モルドレッド、何してるんだ?」
アーサーはいつも通りな感じでモルドレッドに話しかけた。モルドレッドはその声を聞いて振り返る。
「疑問。いつも私はここにいる」
「そうだっけ?」
そう言いながらいつも通りモルドレッドの隣に行く。ここまではだいたいいつも通りだ。
会議が終わり、ベランダに行ってモルドレッドと話をする。ここまでが一連の流れ。
なにか物足りない気持ちもするが、それでもこのいつ通りに満足している。
「……そう言えば、今日でちょうど1年だよな……」
アーサーは小さく呟いた。
「疑問?1年って何?」
「ん?あぁいや、何でもないよ」
アーサーはすぐに誤魔化した。しかし、モルドレッドの頭の上にはまだはてなマークが浮かんでいる。
「思考、追憶、なんでか1年前に何かあった気がする。誰か、忘れてはダメな人のことを忘れてる気がする……」
その言葉を聞いてアーサーは少し驚いた。まさか、覚えている人が自分以外にいたとは……
そんな考えが頭の中に浮かんでくる。それだけで嬉しい気持ちも混み上がってくる。
「……衝撃、なにあれ?」
その時、モルドレッドが王城の門の前を指さして聞いてきた。見ると、そこに剣が突き刺さっている。
「なっ!?
「疑問、知ってるの?」
「っ!?いや、ちょっと文献で見ただけさ。とりあえず行ってみよう」
アーサーはそう言ってベランダから飛び降りた。モルドレッドはアーサーの後を着いていく。
「何も、ベランダから降りなくてもいいのに……」
その時、ふとモルドレッドは誰かに同じことを言ったような気がした。そして、その時のことを思い出す。
しかし、その言った人物が誰で、どんな顔か、そして、どんな性格だったのか全く思い出せない。
それでも、言ったことは確かだ。
「……やっぱり思い出せないか」
アーサーは思わずそう呟いてしまった。しかし、どうやらモルドレッドには聞こえなかったらしい。それがわかって少しだけ安心する。
まぁ、普通に考えて、城の一番下にいるのに地上から60メートルほど離れた高さにいる人に声が聞こえるわけもないか、とアーサーは同時に思った。
そんなことを思っていると、モルドレッドがベランダから飛び降りてきた。
「なんだよ、結局飛び下りるのかよ」
「即決。どっちが早いか考えただけ」
「そか、じゃあ早く行こうぜ」
そう言って門の前まで向かった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2人が門の前に着くと、そこには禍々しくもあり、神々しくもある剣が地面に突き刺さっていた。
その剣からは、初めて見るはずなのに何故か懐かしさを感じる。それどころか、寂しさまで感じてしまった。
「っ!?なんでだろ……、この剣を見てたら涙が止まらなくなっちゃったよ……」
「っ!?……これが愛という呪いか……ケイオス……お前はいつになったら帰ってくる?」
アーサーはモルドレッドに聞かれないように小さな声で剣に問いかけた。しかし、その答えが返ってくるはずもない。その場には静寂と虚しさだけが残る。
「ねぇ、この剣貰っていいかな?疑問、なんでか安心する」
モルドレッドは涙を流しながら剣を握りしめていた。
「……良いよ。あげ……っ!?」
その時、どこかで強大な何かがアヴァロンに降臨した気がした。これは気の所為なんかでは無い。確実になにかが降臨した。
「今の何!?すごく怖いような、でも懐かしいような何かを感じた」
モルドレッドは慌ててアーサーに聞く。そして、すぐに戦闘態勢をとった。
「……今は我らしか動けるものがおらん。行くぞ」
アーサーは少し怖い顔をしてそういう。モルドレッドもその言葉を聞いて頷き、何かを感じた方向に向かって走り出した。
その時アーサーはあることを確信していた。それは、あの男が帰ってきたということを。剣がこの世界に突如として現れ、その剣を使っていた本人が戻ってこないとは考えづらい。だとしたら、今の気はあの男の可能性が高い。
いや、それだけじゃない。今感じた力は剣と同じ。そして、この剣から感じる力はあの男と同じ。
ここまで条件が揃っていて、違うとは考えにくい。
「……頼む……今はお前の力が必要だ。帰ってきてくれ……」
アーサーは祈りにも似たような気持ちで呟き、向かう足を速めた。
そして、それから5分後……
「……この奥だ」
「強大、とてつもない力を感じる。どうする?殺す?」
「……いや、対話を試みる」
アーサーはそう言ってその力を感じた方へと歩き始めた。
そこは、濃霧に覆われており周りが見えない。しかし、その奥からは人影が見える。アーサーはその人影に向かって歩き始めた。
段々とその人影の姿が見えてくる。逆に、アーサーの姿も見えているようで、向こうもこっちを見ているのがわかる。
「……やっぱり……」
アーサーはある程度進んだところで確信した。姿が完全に見えなくとも、仲がいいのだ。すぐに分かる。
「モルドレッド、こいつは安全だ。来ていいよ」
アーサーはモルドレッドにそう言った。モルドレッドはその言葉を聞いて近づいてくる。そして、アーサーの隣に来た。
「じゃあ、霧を消してくれ」
アーサーがそう言った途端指をならす音が聞こえる。そして、霧は一瞬で消えた。
「っ!?」
霧の中から現れた男を見た途端モルドレッドは目を丸くする。そして、何故か分からないが涙を零してしまった。
「やっと帰ってきたな。遅かったよ」
「無茶を言うな。自分の理を消してしまったのだ。普通は復活できない」
「普通は……だろ?」
「フッ、そうさ。普通はな」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべる。その、不敵な笑みを浮かべた男をモルドレッドはどこかで見たことがあった。
「そうか、モルドレッドは俺の事忘れてんだな」
「少し覚えてるがな」
「そうか、悪かったな。遅くなっちまって」
そう言ってモルドレッドの頭を撫でる。
「だ、誰ですか?」
モルドレッドは少し恐怖を含んだ目で見ながら問いかけてきた。
「俺が誰かって?直ぐに思い出させてやるよ」
そう言ってモルドレッドの額をトンッとつつく。その刹那、モルドレッドの頭の中に色々な記憶が蘇ってきた。
それは、まるで波のように頭の中に押し寄せてくる。
「あ……あ……あ……」
「どうだ?思い出したか?」
「……うぅ……もぅ!遅いよ……!真耶!」
そう言ってモルドレッドは抱きついた。なんと、この世界に降臨したという男は月城真耶だったのだ。
「ただいま。モルドレッド」
「おかえり!真耶!」
2人はそう言って抱き合って、感動の再会をはたしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます