モブオタクの異世界戦記Re ~復活せし理の王者~

五三竜

プロローグ

 ある日、異世界に召喚された勇者達がいた。その者達はその世界に住む者達とは比べ物にならない力を持っており、さらに神器を持っていた。


 しかし、その勇者達は召喚した国の策略によって奇襲をかけられた。そして、死をまじかにした時、ある1人の男……そう、クラスでは目立たずオタクを貫いた、”モブオタク”と呼ばれる男が、その勇者達を不思議な力で世界中に逃がした。


 そして、自分は仲のいいオタク仲間の女と一緒に、世界のどこかへと転移した。その男はそれから冒険を楽しんだ。自分のモブという立場を利用しひっそり……とは出来なかったが戦いの日々を過ごしてきた。


 そして、その異世界にアーサーと円卓の騎士が召喚された。男はその円卓の騎士……いわゆるラウンズと交戦した。その戦いは激しさを増していき、終わり所のなくなった戦いは男を段々と闇へと落としていく。男はそんな日々に明け暮れていた。


 そんなある日、その男の秘密が仲間にバレた。その秘密とは、ずっと敵だったラウンズに男が所属していたというものだった。女はその真実を知り激怒し、男を裏切った。そして、その日から男と女の間には深い溝ができた。


 2人の溝は深まるばかり。戦いに疲れた男はその溝を埋める努力をしない。女も、男に関わることさえしなかった。そんなある日、遂に2人は対面した。女は男の住む世界……その名も、『アヴァロン』を占拠しその城の最奥の部屋で待っていたのだ。男は女の前まで行き、正体を知っていると言う。そして、そこで明かされた女の正体……それは、男が何百、何千年も前から追っていた神々の使者だと言う。


 女はその真実がバレてしまい、強硬策に出た。男を殺すべく神の力を全力で使う。しかし、男の猛攻にその思いも虚しく追い詰められてしまった。そして、男は自分の持てる力を全て使うため、全てが始まった場所……そう、日本の自分達が通っていた高校へと転移した。


 男と女はその世界で戦い続けた。男は自分で作りだした自分だけの剣を握りしめ女に攻撃をする。その一振は山を砕き、地を裂き、天を壊した。


 男と女はその激しい戦いの末、男の力を使いこの世界……いや、全ての世界から存在を消したのだった。


 そして、アーサーはその男の存在をアヴァロンに広めたが、それもつかの間。時が経てば見た忘れてしまう。そして、全ての人々から忘れられ、男は全ての世界から、本当の意味で消えたのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……


「我は、このことを忘れない為にこの書物に記した。しかし、人々は全てを忘れ、初めからいないものとして認識してしまった。この書物も、もう誰も手に取らない」


 アーサーはそう言ってその本を本棚に戻す。


「今、この世界でお前を覚えているのは我かモルドレッド位だろう。だが、モルドレッドももうお前の名前を覚えてすらいない。お前は何時になったら帰ってくる?それとも、本当に我達を置いていってしまったのか?」


 アーサーはそう言って天井を見上げた。上にはぎっしりと本が詰まった本棚が、天井にくっつくくらいの高さまで敷き詰められている。


 ここはアヴァロンの王城だ。王城の天井はどこの部屋も高い。それは、もちろん今アーサーが居る図書館も例外では無い。ざっと測って10m以上ある。そんな高さまである本棚の中にこんなにひっそりと隠れるように入れてある本を読む人などもう居ない。


「……何時か、帰って来いよ。……確かモルドレッドがベランダにいたな。話し掛けに行くか」


 アーサーはそう言って図書館を出てベランダへと向かい始めた。


 ━━これは、今はもう居ない、ある男の……世界のことわりに干渉し、全世界で最強と言われた”理の王者”の物語。

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