第7話 迷いの森 

歩いて、街の門へ向かう。

検問のところで、銅貨1枚を支払って街に入れた。


*入門通行料は銅貨1枚


昨日と同じ宿に向かう。

「すみません、今日も泊まりたいんですが・・・」

「ああ、昨日の人ね、大丈夫空いてるから、うちはからね・・・はははは」

まあ、豪快なおかみさんだよ。

幸い、昨夜と同じ部屋を与えられた。

「夕食はすぐに用意できるけど?」

「はい、シャワーだけあびてからすぐに下りてきます、15分後くらいで!」

「ああ、わかったよ」


夕食は、ボア肉と野菜の煮込みに黒パンだった。

黒パンを手で割ろうにも割れないので、そのままドボンと、ボアの煮込みに浸しておいたら、程よい酸味が煮込みにしみ出して、黒パンも、煮込みも、共に美味しく食べられたよ、いろいろやってみるもんだ。

離れたところで食べていた人の真似をしただけなんだけどね。


食後に部屋へ戻って・・・一人でニヤニヤしている。

誰か一緒にいたら・・かなり気味悪いだろうな、分かるよ! 自分でもソウ思うし。

しかし・・・良いな、オークのお宝。あんなにいろいろあるとは・・初体験でアレは、どうなの? 調子に乗ってしまうよ? ビギナーズラックってことないよな?


アスカランに魔弓、宝石・金貨ザクザク・・・それに、魔法の指輪、腕輪、もう最高じゃん!か~

まさか、この部屋で実験するわけにもいかないよな~

でも、魔法というか魔力を使い切るほどに使えば使うほど、魔力も増えて、魔力効率?も良くなるんだっけ? まあ、それを信じて・・・

とりあえず、部屋の中をクリーン! 外も暗くなってきたし、ライト! うん? 指の先だけ光って周りを照らすくらいはできそうだ。

いかんいかん・・・調子にのって何かやらかしてしまいそうだ・・・寝よう!


うん? 興奮してなかなか寝付かれない・・・ヒール!を自分にかけてみた・・・




あれ?どこかで鶏でも鳴いているのか?何か聞こえてくる。

そう! 朝だ! 昨夜は、ヒールのお陰で落ち着いて寝落ちできた。目覚めも快適! 


「おかみさ~ん、おはようございます!」

「ああ、おはよう、今日も早いねぇ~」

「ええ、少し出かけるので・・・そうそう、今夜も泊めてください」

と、銀貨1枚先払いしておいた。

「おやおや、良いのかい。では、同じ部屋を用意しとくよ! ちゃんと掃除はしておくからね・・」

「はい、それでお願いします」

銀貨1枚で、心の平穏、安心感を保てるのなら、安いもんだよ、今の僕にとってはね!



どこへいくのか?って、そんなの昨日の続きに決まってる!

宝くじが少額でも当たったら、次も絶対に当たる!って思うだろ? あんな感じ・・・濡れ手に粟? でも良いかな?


でも・・・しまったな・・・門を出て、林の中で浮上!して見渡すんだけど、何か目印を見つけておくべきだったよ。こんもりした大きな森は見えるんだけど、どのあたりだったかな?

まあ、とりあえず、適当な場所の上空まで(転移=瞬間移動)して、下の気配を探って下りてみた。

マッピングで現在位置を把握。森の感じは昨日の森だと思うけど、せせらぎからは、かなりずれたところに来てしまったようだ。昨日のオーク村よりさらに奥には違いないけど。

帰りは・・・この指輪で帰れるし、まあ、このまま進んでみよう・・・

上空まで上がってしまえば、街の門は見えるだろうしね。



あれ? このあたりには魔物はいないみたいだな? マッピング!で探ってみても・・・反応がない。

それに、まあ、道なんて無いんだけど、さっきから同じ場所を行ったり来たり、大きく回っているような、そんな不思議な森だ。


と、何か飛んできた。とっさに身体強化!をかけて避けてみれば、石ころ?

気配を探れば、20mくらい先にいるのは・・・・大きな猿? 

魔物反応は無いから、森の動物かな?

また飛んできた。避けないで僕に命中!の瞬間に猿に向けて飛んでいった石ころが猿に命中したな、「キャキャキャ~ン・・・キキキキ・・」って向こうで騒いでいるし・・


うん、もう攻撃は終わりなのか? まあ、少しお仕置きをしておこうか・・・

アスカランを手にして、そこを動かない猿に向かっていく・・・


「だめ! モンクをいじめちゃ駄目!」


うん? 誰? どこ? 女の子の声っぽいよな?

「駄目! モンクをいじめないで!」


*森猿モンク 

*森の少女



なんだろう? よくわからないが、猿もどうやら敵意はないようだし、アスカランを鞄に収めて様子を伺う。

モンクって、あの猿はこの声の女児のペットか何かか? ?


「ああわかった、あの猿はモンクというのか? 何もしないから・・

君は誰なんだい? どこにいるんだ?」

「ああ、おじしゃんには見えないんだね、なら、このまま帰ってよ!」

「ああ、そうしたいんだが、どうやら迷子になってる・・・?」

「も~お、どっからここに入ってきたのよ?」

「うん? 空から下りてきた・・・」

「なによ、それ、もう、めんどくさい!」


と、猿のいる近くの大木の後ろから、小さな女の子が現れた。どうみても、3歳児ってところか?

なんで?こんなところにいる? 猿と暮らしているのか? まさか野生児?


「おじしゃん! どう、私が見える?」

   「ああ、こんにちは!」

「うん、・・・こんにちわ・・・

 あのね、モンクは、私のお友達なの、いじめないでよね!」

   「はい・・・」

「石なんてぶつけちゃ駄目なの!」

   「はい・・・」

「モンク、怪我しちゃったじゃないのよ!」

   「はい?・・・治しましょうか?」

「できるの?」

   「はい、やってみないとわかりませんが・・・」


と、女の子が猿をつれて僕に寄ってきた。

この子は、警戒というものを知らないのかな? 危ないな! 

まあ良い、猿のモンクは、肩あたりから少し血が出ているようだ。

金の腕輪を意識して、まずはヒール! 

「そんなに歯をむき出して睨むなよ! お前が石を投げてきたんだろ?」

続けて、回復! 治療! を金の腕輪を使ってやってみた。

初めて金の腕輪を使ったが、うまくいったようで、出血は止まった。

その部分の毛が汚れているので、クリーン、清浄!を使う。


猿のモンクは、むき出しの歯を収めて、僕を睨みつけるのも抑えてくれたようだ。まあ、横を向いて知らんぷり?みたいだけど・・・


「えっと? なんとか、怪我も治ったみたいだけど?」

「・・・うん! おじしゃん、しゅご~いね! やれば出来るじゃん! ありがと!」

「はい・・・」


「森から出たいんでしょ? 私に付いてきて!」

「はい、・・・道を教えてくれれば・・・」

「だめ! おじしゃんにはきっと分からないから・・・ 良いから、付いてきて!」

「はい、・・・ではお願いします・・・・」


何のことは無い、ほんの10分くらいで、セセラギの所に出た。あとは、これをたどっていけば良いんだろ?


「この川に沿っていけば出れるから・・・おじしゃん、私のことは、誰にも言っちゃダメだから! 秘密だからね!」


と、あっ!という間に、女の子も猿も姿を消した。


えっと? ・・・何だったんだ? あの子は、人間の女の子だよな?

迷いの森の住人とか? 





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