第2話 異世界転移 

お決まりの勇者召喚とやらに巻き込まれた異世界転移だった。

どこかの宮殿の広間に召喚され、突然現れただったが、僕の他はみんなどうみても高校生たちだろ? みんな制服を着てるし。僕だけスーツにネクタイ、革靴、ビジネスバッグ姿だった。今日が入社式っていう日だったんだよな、4月4日。・・・アパートから出て、高校生たちと同じ通学路を通っていたのは記憶にある。今日も女子高生のスカートは短いなぁ~ってさ・・・


まあ、何が起こったのかは何故か冷静に判断できたので、自分で自分のステータスを見て、ショボ!~ と、ガックリ!しつつも、何とか鑑定の偽装を見つけて、いろいろ隠してみた。特にヤバそうな項目があったわけじゃあないけどね、嫌じゃん、いろいろ調べられるの・・・僕が唯一持っていたスキルがだったんだよ。


中世ヨーロッパのどこかの教会の司祭みたいなのが、大きな水晶玉を持って、僕たちに一人一人声をかけて・・・あれ、個別鑑定しているんだよな。

僕は、幸い、もともとがショボ!いステータスだったけど、更にいじってほとんどを隠蔽したので・・・

すぐに、この集団からはじかれて別室に連行された。


*神谷健 異世界人 レベル (600)-> ※偽装60 

・スキル  (鑑定) -> ※商業

・魔法適性:(全般) -> ※生活魔法


なぜか? 言葉が分かる! これも異世界人の特典なのだろうか?


「君は、残念ながら我々の求める人材ではなかった。いろいろ申し訳ないが・・」

と、言って、皮袋(ジャリって音がした)と短剣を渡されて、

「これをもって、君を自由放免とさせていただく。ここから出ていくことを許す!」

って、体よく追い出されて、警備兵さんに案内されて、宮殿から外に出された。

まあ、特に食い下がって聞き出すでも、直接文句を言うでもなく、素直に宮殿から出てきたよ。


まあ、それにしても・・・かなり強引で一方的、勝手な処分だな・・・さようなら!



とりあえず、周りを見ても場違いな服装だな!これは浮きまくりだ・・・ スーツ姿で。幸いネクタイが邪魔な程の気温では無かったけど、なんとなくネクタイを外して鞄にしまった。

僕は営業職ではないけど、まさに、くたびれた営業マンが見知らぬ世界を歩いている・・・感じだと思う。全く!・・・適当でもいいからこちらの服装も用意しろ!って言えば良かったな・・・



街を歩いていると、何か良い香りがしてくる。ああ、腹が減っている。

しかし、お金は? やっぱ、金銭で買うんだろ?

鞄の中を漁ってみるが、先ほどもらった革袋と短剣、メモ帳に、ボールペン、スマホバッテリー、ハンカチ、ネクタイなどしか入っていない。それにポケットの財布には、日本円が少しだけ・・・あとはスマホだし・・・

そのスマホは、電波はゼロ状態、電池はまだあるので、とりあえず電源は落としておこう。


そういえば、革袋だけど、ジャリ、とかの感触があったな・・・

中身を確認してみた。コインだ。金色のが10枚、銀色が20枚、銅色が50枚入っていた。


これは、この世界で使えるコインか? 記念品じゃあないよな。

相場や価値は分からないけど、市場でうまそうな肉を挟んだコッペパンみたいなやつがあったので、2個注文した。

銅貨1枚だと言われた。焼肉サンドが1個500円見当。

ちょっと高い気もするが、まあこの大きさなら妥当か・・

銅貨はだいたい1000円くらいだな?


おやじさんに教えてもらった。

金貨=銀貨20枚、銀貨=銅貨10枚 というものらしい。

銅貨が1000円なら、銀貨は1万円、金貨は20万円という相場感覚だな。


ということは、あの宮殿での迷惑料?として、225万円をもらえたということか・・・

とりあえずは、良心的だと思っておこう。


あっ!そうだ! と思って、市場の中の座れる場所を見つけて、そこに座った。

そうだよ、「鑑定」を使えるのでは?  

金貨を取り出して鑑定! 


*エリーナ金貨 エリーナ王国の流通金貨、25g、純金含有量99%


ほう? これぞ金貨! 金含有量の多いほぼ純金の金貨だよ。

ほぼ、純金なので、けっこう傷が目立つ。

なるほど、エリーナか、この国の名前だろ。名前からして女王国なのか?

勇者召喚なんてことをやらかしてる王国だろ、まあ、僕には関わりないことだ・・・



さて、この服装をなんとかしなければ・・・

焼肉サンドの親父さんに、服屋の場所を教えてもらって、その店に入る。


「いらっしゃいませ~」

「良いお召し物ですね~ 今日は何かお探しでしょうか?」

「はい、普段着が欲しくて・・・」

「行商の方でしょうか?」

「いや、普通の旅人らしいもので、何かありませんか?」


「はい、なら、こちらですね!」

と、店の奥に連れていかれた。確かに、それっぽいシャツやズボン、穿きやすそうなブーツまで揃っているよ。

シャツとズボンを2枚ずつ、それに、茶色のブーツと、揃えてもらった。

銀貨1枚と銅貨3枚というので、支払った。


着替えたものをどこに入れようか? 悩んでいたら、

「これに入れますか? 銅貨1枚で良いですよ」

と、布製の大きな袋を店の奥から持ってきてくれたので、まあ、好意と思って銅貨1枚支払って、大袋にスーツや鞄、靴をとにかく突っ込んで店を後にした。

スーツは皺になるけど、まあ、恐らくもう着ないだろうし、仕方がない。新入社員のデビュー前で用済み、終わった・・・


さっきの、市場の休憩所に戻ってきた。

もう一つの焼肉サンドを食べる。あれ? 飲み物は? 喉を通りにくいし・・

そうか! 魔法か?水魔法で水を出す? ・・・どうやるんだ?

とりあえず、飲み物を探して果実水を買うことが出来た。薄~い味、果実風味のぬるい水だけど、助かった! 水は大事なものだよな。うん? この水、平気か?まさか、僕の身体に合わないとかは無いよな・・・・


銅貨1枚を支払ったが、銅貨の小さいのを釣りでもらえた。銅貨には2種類あるんだな。

小銅貨5枚で、銅貨1枚らしい。小銅貨は200円相当か。


*銅貨=小銅貨5枚 




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