第五話

 やがて、ユミ子の咳は治ったが、彼女の目の焦点は合っておらず、体を起こすことすらできなくなっていた。

___何かが壊れる予感はしていた。昔から、こういう予感は全部当たってきたから。


「………けん……ちゃん……」


___でもやめてくれ。これ以上は……。


「……ずっと…言えんかったけど…………」


___信じたくない。最期なんて………。







「あんたのこと、ずっと、好き、だった」








___それだけ呟いて、ふっと微かに笑った。


___彼女は息を止めた。わしの返事すら聞かんまま、そのまま…。


 ケンジは動かなくなった彼女を、ぼーっと見つめていた。涙を流す体力すらなく、彼も倒れ込んでしまった。ただ冷たくなるばかりの彼女の手を握り、そっと、目を閉じた。





「わし、も…お前が、好きじゃ……」




















「子どもが倒れてるぞ!!!!!!1人は生きてる!!!病院に連れて行け!!!!!」

「もう1人のこの女の子は………もう、手遅れですね」

「ああ…仕方ない、こっちの子は…あの場所に連れて行け」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る