第三話

「………ユミ子!!!!どこじゃ!!!どこにおる!!!!!」

「けん……ちゃん…………?」

 ユミ子は瓦礫の下敷きになっていた。手にはケンジと同じように石などの破片が刺さっており、自力で脱出するのは明らかに不可能だった。

「引っ張りだすけぇ無理に動きんさんなよ!!!!」

 ケンジはユミ子の腕を力一杯引っ張る。しかし、小学生の力では、重なった瓦礫の下から引っ張り出すことは難しすぎた。

「………え、ええよ…けんちゃん…アンタもひどいケガしとる……うちのことはもうええけぇ…一人で病院行きんさい………」

「何言うとるんな!!!お前も一緒に病院行って治療してもらうんじゃ!!!!死にたくないんじゃろ!!!!!!」

 ケンジは自分の体の傷など忘れたかのように、一生懸命にユミ子を引っ張り出そうとする。

「はぁ………ほ、ほうじゃ。先にガレキどかしたらどうにかなるかいの」

「けんちゃん……………」

 瓦礫の上に登り、一枚一枚をどかしていく。瓦礫は火傷するほどに熱くなっていたが、ケンジには火傷の痛みなど届かなかった。一枚一枚はそこまで重くなく、3枚ほどどかすとケンジはまたユミ子の腕を引っ張る。先ほどまでの重さが嘘のように、すぐに引っ張り出せそうだった。

「ユミ子!!出れそうか!?」

「うん………あ、ありがとう…けんちゃん」

 ユミ子はなんとか瓦礫の下から這いずり出ることができた。しかし、

「あ、足が…………足が動かん………」

 彼女の脚は血まみれで、骨も折れていそうだった。熱風による火傷と、瓦礫から這い出るときに擦った時にできた傷がかなり深かったようだ。

「……………ユミ子、掴まれ」

 ケンジはユミ子の腕を持ち上げ、そのまま彼女をおぶった。

「え………けんちゃん、ええよ…無理せんで」

「誰が無理じゃ言うたんじゃ。このまま病院まで連れてけるわ」

 本当は、もうかなり限界に近かった。歩くだけでもかなり辛いのに、人をおぶって歩くのはあまりに負担が大きすぎた。

「ごめんね………うちが、弱っちいけぇ……」

「………お前の、せいじゃ……ないわ」

 2人の限界はかなり近い。ユミ子も声が掠れて、上手く言葉を発せないようだった。

(…ここ、よう見たら本川じゃ。流れと反対に行けば病院が何個かあるはず…)

 ケンジは黒や赤で埋め尽くされた川の流れを見ながら、町の方へと歩いた。

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