第五話 最近の悩み


「玲央の家でテスト勉強…なんでいつもみたいに通話じゃないんだろ」


 俺は下校中に玲央からお誘いされた内容について考えていた。

 あいつの家っていってもめちゃくちゃ近所だし互いの家に行く必要はあるのか?…といってもかわいくて美人な幼馴染の誘いだ。断る理由なんてこれっぽっちもない。


「ただいまー」


 誰もいないけどとりあえず言っておく。中学3年生の頃から一人暮らしをしているが、もうずいぶん慣れたものだ。


 学校帰りはまず1番に洗濯物を取り込み、パパッと畳んで戻した後は風呂に入る。特段風呂は好きじゃないので、ここまでの行程はできるだけ早く済ませたい。

 洗顔も特にはしてない。転生特典で俺の肌はバッチバチにバフがかかっているからニキビなんてできたことがない。だからお風呂の時間は本当に15分とか。カラスの行水とよく祖母に言われたものだ。


 俺が最も手間をかけるのはもちろん食事。しっかり1から手料理する。料理すること自体好きなので毎日自炊することは全く苦ではない。 


 今日は何故かスーパーでヤリイカが安く売られていたのでヤリイカの黒造り丼でも作ろう。


 名前は仰々しいが作り方は簡単。サッと捌いて身を短冊上に切り分けたあと、イカの墨と混ぜ合わせたものをご飯の上に乗せる。後は出汁を回しかけるだけだ。


 後は味噌汁だったり漬物だったり、そういう副菜も食を楽しむ上で大切だ。


「いただきます」


 俺は一瞬で食べ尽くす。

 相変わらず俺の飯は美味い。こんど玲央と勉強するときになにか作ってやるのもいいかもしれないな。



「ふぅ……ゲフッ」


 満腹時のこの多幸感。きもっちぇー……

 しかも今の時間が8時ってのもきもっちぇーよな。自由な時間が何時間もある。勉強でもゲームでも自家発電でもなんでもし放題だぜ!


 ——ピンポーン——


 俺の家のインターホンが鳴った。


 んーこの時間になんだ?なんにもネット注文した記憶はないんだけど…


 俺は扉を開ける前に何故鳴ったのか考える。もしかしたら危ないやつかもしれない。その危ない奴も俺からしたらご褒美なんだろうがな。


 そこで突然、俺の頭に一つの可能性が浮かんできた。


 今日は木曜日、もしかして……


 俺はバッと立ち上がり玄関へ向かって走っていく。ガチャリとドアを開けるも外には誰もいない。そして…


「やっぱり今週もある…」

  

 ドアの掴みの部分には紙袋が下げられていた。俺はその紙袋をとりあえず持ち入り、リビングで開けてみる。


 中にあったのは女性ものの下着(恐らく使用済み)と手紙だった。


 ここ最近、毎週木曜日に決まってパンツと手紙が送られてきている。誰が送ってきているのか一切わからない。ただわかるのはそれが使用済みだってことだけ。


 手紙には俺への愛が綴られている。正直言ってストーカー被害として警察に通報したっていい案件だ。しかし手紙には、


『一つ勘違いしてほしくないのは私は君のことが好きなんじゃなくて推してるの‼︎会うつもりも声かけるつもりもないから安心してね♡』


 と書かれている。


 ほなぁ、パンツはもらっとこかぁ(???)


 えなんて?黙って警察に届けろ?


 チッ、うっせーよパンツだぞ?使用済みだぞ?


 俺はそそくさと紙袋をしまう。ていうかまぁまぁ良いパンツなんだよなぁ値段的におそらく。…毎週送ってきて金銭面は大丈夫なんだろうか?


 大切に扱わなければ。いざという時にこのパンツは使うことにしよう^_^


 とは言っても毎週このまま送られて続けても部屋がパンツまみれになるだけだ。もうそろそろ供給を止めてもらうかどうにか返せるように連絡が取れるようになればいいんだが……

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