第四話 湯浅玲央side
私には幼馴染がいる。
今から12年ほど前、私が5歳だった時に俊は近くに引っ越してきた。ふつうの5歳の男の子といえば、親の後ろに隠れ、常に母の袖をつかんでいるような大人しい性格を想像する。しかし彼は私に手を伸ばし、
「お前かわいいな!よろしくな!」
と、不純も何もない綺麗な笑顔を向けてきた。その時の私といえば、逆にうろたえて男の子相手にたじたじになったのを覚えている。幼いながらに嬉しかった。
あの頃からだろうか?私がこの子を守らないといけないと思い始めたのは。
私と俊が10歳のころ。幼馴染として、いつものように近所の公園で遊んでいた時だった。
私が遠くに飛んでいったボールを取りに行っている間に俊がいなくなっていたのだ。どこへ行ったのか、何度も名前を呼び探していた。公園中を探し回っていたその時だった。
トイレの中から女の声が聞こえてきた。普通の会話ではない。笑い声のような、どこか獣を彷彿とさせるような、そんな声。
嫌な予感がした。
私が急いで中に入るとそこには数人の中学生らしき女と服を脱がされた俊の姿だった。
…気づいたときには中学生らしき女らは倒れていた。私は格闘技をしていたのである程度の女子よりかは強い自信はあった。先生からは格闘技は人を傷つけるものではないと言われていたが、この時に限ってそんなことは一切関係なかった。俊を守るために格闘技をしていたのに、いざというときに何も役に立たなかった。
「俊!大丈夫!?」
私は服を脱がされた俊の元へと駆け寄る。俊は顔を耳まで真っ赤にしていた。きっと泣きすぎてそうなったに違いない。私は俊をギュッと抱き寄せる。
「ごめんね、助けるの遅くなっちゃって…」
「あ、うん……ぜんぜん大丈夫…むしろもうちょっと遅くてもグフゥッ‼」
もう一度抱きしめる。肌から直接感じる俊の体温、深く深く感じるたびに心の底からぐつぐつと煮えたぎってくるこの感情。
庇護欲に保護欲、そして独占欲…
もっと女として強くなろう。誰も近づけない程に強く、美しく。
それから7年。俊は初めて会った時と比べてとてもカッコよくなった。すれ違う人誰もが振り返るほど。
私も少しは…彼の隣に並べれるように成長できただろうか。
「お、玲央。一緒に帰ろうぜ」
カバンを重そうに背負った俊が迎えに来てくれた。お互い部活などがない日はこうして一緒に帰っている。
「うん、帰ろっか」
私は俊と足を揃えて帰路につく。
他愛もない話。それを俊とできることが何より嬉しかった。何よりもこの関係が大切で、ずっと続けばないいなと思っていた。
…嘘だ。
私は恐れているだけだ。この関係が壊れてしまうのが。
でもね、もう我慢できないの。
幼馴染のままじゃなくて。もっと……
「ねぇ俊」
俊がこちらへ顔を向ける。
「もうすぐテスト期間じゃん?今度うちで…勉強しよっか」
—————————————————————
俊…どうなっちゃうんだいッッッ
どうもこんにちは、作者です。
皆様の応援もあってか、おかげで熱も下がりましたゆえ、投稿のペースをこれから上げていきたいと思っています。
これからも気長に見てくれると僕は飛んで喜びます。応援よろしくお願いします。
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