第二話 それは春泥棒

 玲央と登校した後、長い長い授業もひと段落つき昼休みとなった。


 うちの高校は一応進学校という括りになっているので、授業中はみんな集中している。変態なくせに頭よくて美人ってこの学校の女性は非常にスペックが高い。


「ん〜〜〜」


 俺は両手を組み天に掲げて背伸びをする。部位を問わず体を伸ばすのってなんでこんな気持ちいいのだろう。


「きゃっ、あれ見てw」

「うーわ脇えっど…」


 俺は遠くからあからさまに性的な視線を送ってくる女子に気付きすぐさま背伸びを止め腕を引く。


 まったく…気が抜けないぜ。俺はともかく俺のムスコはそういう視線を送られるだけで起床準備を始めてしまう。バレたら速攻喰われるので私生活の動作も気をつけるに越したことはないな。


 目線を気にしすぎてもあれなので俺は早速弁当にありつく。


 え?ぼっち飯かって?違うんだ聞いてくれ。


 この男女比1:10の世界では老人から若者にかけて男性少子化が進んでいる。つまり若年層の男女比は実質1:15くらい、だから俺の学校でも基本的に男子はクラスに2人しかいない。そして俺のクラスのもう1人の男子は女子と会うのが嫌すぎてリモート授業へと切り替えたんだ。


 これはハブられぼっち飯じゃなくて必然的ぼっち飯、つまりぼっちじゃない。決して。うん。


「成川先輩だ…かっこよすぎる〜…」

「やばいあれ天使だよ!堕天させたいよ!」

「口いっぱいにご飯つめてるのにクールぶってるのかわい〜♡」


 くそ、下級生まで廊下に集まってきた…最近はみんな徐々に歯止めが効かなくなってきて、前までは廊下から見てくるだけだったのに今じゃ教室に入ってきて話しかけてくるやつまで現れた。


 どこか1人で落ち着ける場所が欲しいな…


 俺はなる早で弁当を食べ終えて教室を後にする。何人かついてくる人もいたが、この学校内でいつも俺が使っているチェイスルートでうまく巻けた。


 さて、落ち着ける場所を探そう。


 ◇


 俺は早速屋上へと来た。


 落下防止フェンスの金網を掴み、外の景色に目を移す。


 やっぱり昼休み1人落ち着くポイントと言えば屋上だな。この季節、春泥棒に吹かれながら屋上で黄昏るのはどこか心地よいセンチメンタルを感じさせてくれる。これがエモいってやつ?


「ゲフッ…ふぅ」


 おっと、クールキャラも気が抜けるとゲップくらいするぜ。俺だって普通の人間、済ました顔しながら透かしっぺもするし家では爆音で鳴らす。


「学校1クールな君も案外お茶目なとこあるね」


 背後から突如聞こえたその声にキュッと背筋が冷える。


 ……誰だ?まったくの聞き覚えのない声。


 俺はすぐさま振り向くとそこには見知らぬ女子生徒がいた。驚くほどに恐ろしく綺麗な女子生徒。


 その女子生徒は俺の隣へと来ると、外の景色を見る俺とは対照的にフェンスに背を預けてその場に座り込んだ。


 見てると吸い込まれそうな顔をよく見ると、所々に空いたピアスと漆塗りのように綺麗な黒髪のウルフカット。

 俺は何故だか彼女から危険な雰囲気を感じ取ってしまう。


 それにしても……玲央に劣らず素晴らしいものを持っている。


 女性に近づかれたら普段なら距離を取るが、不思議と彼女から遠ざかろうとは思わなかった。危険な雰囲気を感じつつも、このまま動かなくて大丈夫とさえ思えた。

 彼女はこの世界の一般的な女性と違いがっついてこないからだろうか?何が俺にそう思わせたんだろう。


 普通とは違う彼女に少しながら俺は興味が湧いた。


「お前、名前は?」


 ゲップを見られたにも関わらずクールぶる俺を見て彼女は少し笑った。


「瑠奈、3年生の桜庭瑠奈さくらばるなだよ」


—————————————————————


どうも、ロード画面です。


少々風邪をひいてしまったんです。


コロナでもインフルでもないのに39.2度


更新ペース落とさないよう頑張ります。


応援コメントうれしいですすごく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る