ツレ。

大学の中庭

希美と穂波が歩いている。


希美

「ねぇ、女の子ってどんな感じの物が好きなの?」

穂波

「ん? 女の子だよね?」

希美

「そうじゃなくって……。可愛い系の、さ。」

穂波

「そんなの人それぞれだよ。」


希美、膨れる。

悪戯っぽく笑う穂波。


希美

「ほわほわ可愛いの申し子でしょ?」

穂波

「何その言い方ー。ムカつくー。」

希美

「ミスに意見を聞きたくて……。」

穂波

「なりたくてなった訳じゃないよ。勝手にエントリーされてただけ。」

希美

「何その言い方ー。ムカつくー。」


二人、笑い合う。


穂波

「のんちゃんだって辞退したくせに。」

希美

「そりゃあ、私は……。顔キツいしさ。」

穂波

「めっちゃ美人って事だよ。」

希美

「……。」

穂波

「んで、誰に何の為のプレゼントしたいの?」

希美

「……とある人に、誕生日プレゼントを。」

穂波

「はるちゃん?」

希美

「……。」

穂波

「分っかりやしー。」


希美、穂波から目を逸らす。


穂波

「はるちゃん、のんちゃんから貰えるなら何でも嬉しいと思うよ?」

希美

「今までとさ、違うから。その……」

穂波

「変に力入れない方が良いよー。」

希美

「バースデーベアーとか?」

穂波

「良いじゃん。」


希美、早歩きで穂波を追い越す。

ニヤニヤする穂波。


反対側から、結海・美波・遥香がやって来る。

合流する5人。


結海

「やっぱ、ミスと準ミスが並ぶと違いますねぇ。」

美波

「……。」

穂波

「私、行くね。」


結海を見る希美。

結海、穂波と合流する。

遥香、希美を見ている。

明後日の方を向く美波。


それぞれ分かれる5人。

美波、一人で食堂に向かう。


結海

「穂波ー。許してあげたら?」

穂波

「え?」

結海

「私ねー、透くんと仲良くなったのです。」

穂波

「……。」

結海

「色々聞いたよ。」

穂波

「どうしたら良いか分かんなくてさ。」

結海

「ふつーに話し掛けたら?」


穂波、寂しく笑う。


結海

「別に嫌いなら良いと思うけど。実際、嫌なタイプですしね。」

穂波

「そんな事言わないで!」

結海

「嫌いじゃないんだ?」


結海、ニヤニヤする。


穂波

「……美波ちゃん、努力家だから。」

結海

「ほーぉ。」

穂波

「……美波ちゃんの方が嫌なんだよ、多分。」


穂波、食堂をチラッと見る。


結海

「結構な腐れ縁になっちゃったんだねー。」

穂波

「……。」

結海

「ま、何でも良いや。」


穂波、講堂へ向かう。

中庭のテラスに行く結海。

保野、テラス席に座っている。


保野

「ゆーさんっ!」

結海

「お待たせ、お待たせー。」

保野

「早速だが、これを見たまえ。」


保野、結海にスマホを見せる。

そこには、共通でハマったゲームのSSレアカードが映っている。


結海

「先越されたぁっ!」

保野

「くくく。」

結海

「スマホ交換しよ?」

保野

「嫌じゃ。」


二人、笑い合う。


結海

「そーいえばさ、言ってみましたよ。」

保野

「へ?」

結海

「波コンビ。」


保野、心配そうに結海を見つめる。

 

結海

「そーとー根腐れしてますな、ありゃ。」

保野

「やっぱり。」

結海

「どうしようもないと思われる。」

保野

「やっぱり、ゆーさんは優しいな。」

結海

「はい?」

保野

「心配してるんでしょ?」

結海

「……。」

保野

「ありがとう。」

結海

「この歳まで気に掛けてる君の方を心配してるんです。」

保野

「別に、僕は腐れ縁だから。」

結海

「優しいと言うか、お人好しと言うか……。」

保野

「……。」


暫くの沈黙。

保野、結海を見つめる。


結海

「何?」

保野

「……いや。」

結海

「……そう。」


スマホをテーブルに置く保野。

思いの外、ガタンと音が鳴る。

保野、驚いて声が漏れる。

ふっと笑う結海。


保野

「あのさぁ。」

結海

「うん?」

保野

「ぼ、僕とさぁ。」

結海

「うん。」

保野

「……ペアーにならない?」

結海

「はい?」

保野

「……。」

結海

「ダンスでも踊るの?」

保野

「……それでも良いんだけど、」

結海

「嫌だね。」


ガックリと項垂れる保野。


結海

「私、ダンス出来ませんもん。」

保野

「……僕も出来ない。」


結海、大笑いする。


結海

「大体、どこで披露すんの?」

保野

「……分かんない。」

結海

「何が言いたいんです?」


悪戯っぽく笑う結海。


保野

「えっと、その、何と言うか……」


保野、あたふたする。


結海

「私は何も言わないよ?」

保野

「濃い仲になってください!」

結海

「恋仲?」


保野、頷く。


結海

「ま、良いよ。」

保野

「ふぇ!?」

結海

「ってか、ずっと待ってたんですけど?」

保野

「はぇ!?」


結海、深い溜め息を吐く。

明後日の方を向いて頭を掻く保野。


結海

「じゃあ、スマホ交換といこうか。」


結海、保野のスマホを取る。


保野

「それは俺のぉ!」

結海

「あ、僕じゃなくなった!」


保野、ハッとする。

結海、その隙に走り出す。

満面の笑みを浮かべる結海。

その背中を必死で追い駆ける保野。


窓際の席で一人ご飯を食べている美波。

結海と保野、気付かぬ内に窓越しから美波を走り抜く。

美波の斜め後ろには、穂波らしき人影。


希美と遥香、楽しそうに駆けていく保野と結海を見送る。


希美

「小学生みたい。」

遥香

「私達もやる?」

希美

「やだよ。」


顔を合わせて微笑む二人。

綺麗な夕日に照らされる学校。


(終わり)

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デブとガリ @yuzu_dora

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