第20話 聖夜のサンタさん
ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。
襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。
帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。
それを着ているのは茶色の芝犬。
口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。
芝犬
メメさんの仕事は困っている人を助けること。
今日も困っている人がいないか
ジングルベール♪ ジングルベール♪ 鈴がーなるー♪
とうとうやって来ましたみんなが楽しみにしているイベント!! クリスマスです!!
子ども達はショーウィンドウに並んだおもちゃに目をキラキラ。お母さんお父さんはサンタさんにプレゼント頼んでるでしょと嗜めます。恋人達は灯り出したイルミネーションに照らされウキウキ。この後のディナーのお話で盛り上がります。ピザ屋さんはサンタの格好で配達。コンビニではケーキのノルマにアクセク。
そんな街の喧騒にメメさんも浮かれ気味だ。トテトテ歩く効果音もいつもより高い音がしているぞ。
モフモフ、フワフワの無敵の冬毛を携えて、賑やかな繁華街を
そんな繁華街も一本路地に入ると少し落ち着いた雰囲気になります。さらにもう一本路地に入ると路上で項垂れたサンタさんをトナカイが介抱しています。
ん、サンタさん? メメさんもあまりの事態に立ち止まってしまいます。
どうしたら良いのか。メメさんが困っているとトナカイがこちらに気がついたようです。
「ブォォォ」
低音のトナカイの鳴き声が路地に響きます。意外と渋い鳴き方しますねトナカイさん。
「ワン」
メメさんが返事を返します。
「ブォォォ」
「ワン、ワン」
何やら会話が成立しているようです。
トナカイさんは困った顔で泣き。メメさんはしたり顔で頷きながら鳴きます。
全く訳がが分からない。トナカイ語もワンワン語も私には分かりません。しかし、メメさんは意思疎通出来ているようです。ここはメメさんに任せましょう。お困りトナカイさんの悩みをズバッと解決だ!!
メメさんはサンタさんの元にトテトテ。サンタさんはビルに背を預け座ってます。青い顔をして、見るからに気分が悪そうです。
なるほど
メメさんはサンタさんの服の裾を噛んで引っ張ったり、起き上がらせようと頭でサンタさんを横から押したりしています。
「やめてくれ、やめてくれ」
小さな力のない声でサンタさんが呟きます。
しかし、メメさんはやめません。なんたって困ったトナカイさんを助けるためですもんね。やめたげて。
メメさんの懸命の手助けも虚しく状況は変わりません。いえ、少しだけ変わりました。お困りのモフモフが一匹から二匹に増えました。トナカイさんも、メメさんも眉をへの字にし困り顔だ。
「あー、いたいた。あの人だね。すいませーん。大丈夫ですか? 気分が悪いのですか?」
声をかけながら近寄ってくる影が二つ。警察官のお兄さん達です。
「お話出来ますか?」
サンタさんはお構いなくという感じで片手をあげます。
「トナカイとワンちゃんはお爺さんが飼い主ですか?」
サンタさんは俯いて何も答えません。しかし、その顔には焦りの色が見て取れました。
「どうします? 言葉通じてなんじゃないですか?」
「うーん、困ったねー」
警察官のお兄さん達が話し合っていると……メメさんが警察官のお兄さん達の前に立ち塞がります。
サンタさんとトナカイさんを守るつもりです!!
尻尾まで毛を逆立て、少し前傾姿勢。鼻に皺を寄せて威嚇します。
「ワン」
そして、一鳴き。これには警察官のお兄さん達も吃驚。
その隙にサンタさんはヨタヨタとした動作でソリに乗り込みました。
すかさずトナカイさんもソリを引っ張ります。
すると、トナカイさんは空中を蹴って空に飛んでいきます。
これにはメメさんも警察官のお兄さんも吃驚です。
「サンタって本当にいたんですね」
「あぁ。でも、あんな状態で大丈夫か?」
メメさんは地面に落ちた魔法のステッキを拾い上げ、空中を走るトナカイさんとサンタさんに向け一振り。
これで、
ツバ広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。
芝犬
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