第12話 廃墟でおやすみ
※今回はホラー回なので、苦手な方はご注意ください。
ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。
襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。
帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。
それを着ているのは茶色の芝犬。
口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。
芝犬
メメさんの仕事は困っている人を助けること。
今日も困っている人がいないか
秋の夜長。段々と日が沈むのが早くなり夜が長くなってきました。
過ごしやすくはなってきましたが、まだまだ残暑が終わる気配はありません。
チカチカと街灯に照らされてた夜道をメメさんは歩きます。
トテトテ、トテトテ。
いつもの効果音を響かせています。いえすいません、実際はそんな音出てません。効果音はイメージでした。
そんなメメさんの歩みはある建物の前で止まります。
全てのテナントが撤収した廃墟ビル。いかにもな雰囲気のあるビルです。
メンテナンスされず雨風に晒され続けた外壁。何者の侵入も拒めそうに無い隙間の空いた自動ドア。内装が取り外され煤けたコンクリートが剥き出しとなった床や壁。
私がここで一晩過ごせと言われたら、高級旅館の当日キャンセル料並みの金額を払ってでもキャンセルします。
そんな廃墟を前にメメさんは立ち止まっています。
古来より魔女ルックと廃墟の相性は抜群です。もう儀式が始まっちゃいそうな程の相性です。
えっ、メメさん!! やっちゃうんですか? 悪魔でも召喚しちゃいます?
そんな私の期待を知ってか知らずかメメさんは廃墟ビルの入り口へ歩を進めます。
自動ドアの隙間にお顔をぐりぐり。隙間を広げます。とんがり帽子が脱げないように気をつけながら……あーっと、脱げそう!!脱げそう!!でもー、脱げ無い!!
とんがり帽子を着けたまま上手に通ることが出来ました。メメさんは少し満足げです。
自動ドアと窓から入る月明かりのみでほとんど何も見えません。
ペタッと入り口付近でメメさんは両手両足を投げ出し横になります。
今日はここでおやすみのようですね。
ヒューッと隙間風に身震い。まだ夜は暑いと言うのに少し寒気がします。
冷たいコンクリートの床が体温を奪っているせいかな。
「もーいーかい?」
何処からともなく少年の声が響きます。
気のせいかな……と思えるくらいの微かな声。でも妙に耳に残る声です。
「もーいーかい?」
また……まるでかくれんぼをしているかの様です……
こんな時間に? 良い子は寝る時間ですよ。
「もーいーかい?」
三度目……ここまできたら私でも分かります。アレですね。返事をしたらいけないやつです。
「ワン」
あーーー!! 言ったそばから!! メメさんが返事をしてしまいました。
これは不味いですよ。アレがアレでアレしちゃうやつです!! メメさん逃げてー!!
「もーいーかい?」
アレ? 返事しても平気系ですか? 幽霊とかには詳しく無いのですが地縛霊とかいうやつですかね。まったく驚かせて。
そう言うのは私は専門外ですよ。明日担当の部署に連絡しておきますね。
「もーいーかい?」
またですか? しつこいですね。もういいですよ!!
やっと収まったようです。これでメメさんもゆっくりおやすみできますね。
その時、私の後ろから囁くように……
「みーつけた」
ツバ広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。
芝犬
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