第11話 頑張り駅員さん
ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。
襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。
帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。
それを着ているのは茶色の芝犬。
口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。
芝犬
メメさんの仕事は困っている人を助けること。
今日も困っている人がいないか
トテトテ。トテトテ。
いつもの
この道もマンネリ化してきたぞ。ここ数日メメさんは困っている人を見かけていません。
おや、メメさんがいつもの道から外れたぞ。
流石はメメさん!!新たなルートを開拓するのですね!!そこで困っている人を探すのですね。可愛いだけじゃなく賢い。
トテトテ。キョロキョロ。
いつもと違う道でワクワクの好奇心。お目々キラキラあっちこっち見ています。
——ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン。
線路を電車が走ってます。
その電車の向かう先はもちろん駅です。そしてメメさんの向かう先も……
まさかメメさん……電車に乗って新たなエリアに向かうつもりですか?それはちょっと賢すぎです。
今日のメメさんの瞳には知性が宿っています。クリクリのお目々の奥にキラリと光る知性。どことなく顔つきも凛々しく見えます。顎先から顎にかけてシュッとしています。スマートです。
全身からは今日の私は一味違う。そんなオーラまで見えかけています。
トテトテ。
メメさんは優雅に気品に溢れる足取りで改札を通り抜けます。
その時です!!
「あー、ダメダメ!!ダメだよ。勝手に入っちゃ」
駅員さんの登場です!!
メメさんは知性の宿った瞳、シュッとした顔つき、優雅さのある姿勢のまま駅員さんに抱えられ改札の外へ運ばれます。
「危ないから入っちゃダメだよ」
駅員さんは優しく注意します。
これにはメメさんもしょんぼり顔。さっきまでのオーラはどっかに行っちゃいました。
困っている人を探すためとは言え、駅員さんを困らせては元も子もありません。
「駅員さーん」
改札のところでお客様が声を上げます。
「あっ、はーい。少々お待ちください」
メメさんに軽く手を振り駅員さんはお客様の元へ駆けて行きます。
「ピッってしても出れなくてねぇ」
「あー、少々お待ちください」
窓口でお客様の磁気カードをリーダーの上に置き処理をする駅員さん。
「はい、これで出れます」
「ありがとうね」
駅員さんは笑顔でお客様を見送ります。
——ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン。
駅に電車が到着しました。まばらに人が改札から出て行きます。
中には改札を通れなくて、窓口で駅員さんに対応して貰っている人もいます。
笑顔で対応する駅員さんをしばらく見た後、メメさんはこの場を去ります。
もちろん去り際には魔法のステッキを一振り。
メメさんも頑張っている駅員さんを応援したくなったのかな。
ツバの広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。
芝犬
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