第10話 ヴァルプルギスの夜

 ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。

 襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。

 帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。

 それを着ているのは茶色の芝犬。

 口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。


 芝犬魔女ウィッチのメメさん。

 メメさんの仕事は困っている人を助けること。

 今日も困っている人がいないか散歩パトロールしているぞ。


 十五夜の夜。お月見には抜群の空模様。しかしお月様は少しかけているようです。ちょっと残念ですね。

 そんな夜もメメさんは散歩パトロール

 いいえ、違います。今夜は特別な夜。メメさんは特別な場所にいます。


 フフフ。何処だと思いますか?

 周りを見てください。


 そうここは日本中の魔女ウィッチが集まっている場所です。

 今夜は『ヴァルプルギスの夜』です。日本中の魔女ウィッチが集まっているのです。


 みんなトレードマークのとんがり帽子にマント。それに魔法のステッキを持っています。

 芝犬魔女ウィッチであるメメさんを筆頭に。ハスキー犬 (シュナちゃん)、三毛猫、ダックスフンド、人、コギー、人、人、黒猫、人、人、ゴールデンハムスターが円となって集まっています。

 

 んっ。モフモフ多くないですか? メメさんを魔女ウィッチにした自分が言うのもなんですが……

 普通人を任命する事が多いんですよ。意思疎通取りやすいですしね。

 んーお国柄でしょうか。


「これって何する会なん?」

 ギャル魔女ウィッチが発言します。

 みんな首を傾げています。私も同じく頭の上にはてなが浮かんでいます。

「さぁー、私も担当の天使に行けって言われたから来ただけなので」

 これはおさげ魔女ウィッチの発言ですね。

「どーなん?」

「……」

 ギャル魔女ウィッチの担当天使は沈黙です。


 そして天使たちは一人の天使に目を向けます。

 今回の発案者の天使です。

「えーっと……そう!! 魔女ウィッチ同士で交流を深めるためだよ!!」

「本当は?」

「………………見てたアニメで、そんな感じのがありまして、ちょっとやってみたかったのです……」


 なんと言う事でしょう。何の目的も無いのに日本中の魔女ウィッチが集まってしまいました。

 これにはみんな唖然。いやモフモフ達は理解出来ずにのんびりしています。


「えー」

「あー。もう集まったものはしゃーないし」

「まーね。でもどうする?」

「とりま。近くのコンビニで適当にお菓子とか買ってくるわ。何かリクエストある?」

「えーじゃあ私も行く」

 そんなこんなで人間全員がコンビニに行く流れになりました。

 モフモフは私たちが見てるからね。ゆっくり行っておいでと見送りました。


「というかヴァルなんとかの夜って4月じゃないか!!」

 一人の天使がスマホで検索をかけたようです。

 なぜ天使がスマホを持っているかって? どうやって契約等々したのかって? 我々のバックには神様がいるのですよ。そのくらい朝飯前です。

 この会も天使同士スマホで連絡を取り合っていたのですよ。


 しかし本当にやりたかっただけのようです。

「お前はいつもそうやって……」

 いよいよお説教が始まってしまいました。


 人間の魔女ウィッチ達もコンビニから帰ってきて、お菓子をつまんでお喋りしています。

 たまにメメさんや他の子達を撫でてたりもします。


 十五夜に開かれた『ヴァルプルギスの夜』は公民館の閉館時間まで続きました。

 そして魔女ウィッチ達は後片付けをして、天使と共に地元へと帰って行きました。


 ツバ広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。

 芝犬魔女ウィッチのメメさんは少しほっこり顔だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る