第6話 ハスキーウィッチ?
ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。
襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。
帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。
それを着ているのは茶色の芝犬。
口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。
芝犬
メメさんの仕事は困っている人を助けること。
今日も困っている人がいないか
元気にトテトテ。リズム良くトコトコ。木陰でちょっと休憩。そしてまた歩き出す。
商店街にやってきたぞ。下を見れば綺麗に敷き詰められたブロック。上を見れば綺麗なアーチにのぼり旗。
平日の昼間のせいか人通りは少ないぞ。
そんな商店街の通路……二匹は出会った。出会ってしまった。
ツバの広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口には月飾りの魔法のステッキ。
それを着ているのは白銀のハスキー。
ハスキー
ω
ん……いやこの子は男の子だ。ハスキー
……でも、とんがり帽子とマントの裏地が赤だぞ。魔法使い《ウィザード》の裏地は濃い
まさか!! この子は男の娘!! 男の娘のハスキー
えっ、なになに……ほうほう……
今入った情報によると、このハスキー
愛称の方で呼んでくれとのことなので、みなさんもシュナちゃんと呼んでください!!
交わる視線。鼻先を低くしゆっくりと歩み寄る。
互いの体の匂いを嗅ぎ合う二匹……
その時シュナちゃんが走り出す。向かう先は八百屋さん。メメさんは出遅れてしまった。
「ワン」
八百屋さんの前で一鳴きするシュナちゃん。
もちろん魔法のステッキは地面に落っことしているぞ。
遅れてメメさんも到着する。二匹に見つめられる八百屋さん。
食べ物を扱っているだけあって気軽に生き物に触れないぞ。
これは痛恨のミス!! 突然現れたライバルに功を焦ってしまったか!!
困っている人はいないと即座に判断したメメさんは次のお店に駆け出している。
今度はシュナちゃんがメメさんの後を追う。
辿り着いた先はペットショップ。
二匹の犬に見つめられる店員。流石はペットショップの店員。メメさんとシュナちゃんを同時に撫で撫でだ!!プロの技に二匹とも心地よさそうだ。
「ちょっと待ってて」
ショップ店員が店の奥に向かった。
二匹とも店員の言葉に従い大人しく座っているぞ。
戻ってきた店員の手に握られているのは……ジャーキーだ!! 犬用のジャーキーを持ち出してきたぞ!!
これにはメメさんもシュナちゃんも四本足で尾っぽフリフリ大喜びだ!!
二匹仲良くジャーキーを食べご満悦だ。
ショップ店員に別れを告げ店を出る二匹。
昨日の敵は今日の友。出会ったのは今日だけどすっかり仲良しになった二匹。名残惜しげに互いの匂いを嗅ぎ合う。そしてさよならをする。
ふと振り返るとシュナちゃんがステッキを取りに八百屋さんに戻っている。メメさんはそんなシュナちゃんの姿を見つめた後、視線を戻しトテトテと優雅にまた歩き出す。
ふと口に寂しさを覚える……慌ててメメさんが引き返したぞ。
あっ、ジャーキーを食べた時に……
ツバの広いとんがり帽子。襟の大きなマント。口にはちょっと欠けた星飾りの魔法のステッキ。
芝犬
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