第13話(2)

       ◆  ◆  ◆


 神原は目を覚ました。

 今のは夢だったのか? それとも・・・・・・

 神原にとってそれは懐かしく、とても大切なものだった。

 倒れた瞬間。薄れゆく意識の中で腹部に影を纏わせ、かろうじて意識を保っていた。

 しかし太宰達との戦闘で血を失いすぎており、体を起こそうとしたが思うように動かない。

 わずかに顔を上げた。鴉が太宰達に剣を向けていた。

 裏切り者に死を──

 なんとか体を起こすと左手を伸ばし、意識を異能の発動に集中した。

 鴉が剣を振り上げたその瞬間──

 影の刃で鴉の体を貫いた。

 鴉の手から剣が落ち、金属音が響き渡った。

「貴様も道連れ、だ・・・・・・」

 さらに無数の影が貫いた。「受けた攻撃はそれ以上にして返す。それが、ポートマフィア、だ・・・・・・」

 影が消え、鴉が倒れた。

「これが裏切り者の末路、というわけか。しかし、あれほどの傷を負いながらもまだ息があるとは。随分と悪運が強いんだね、神原さん」

「だが・・・・・・それもここまで・・・・・・のよう、だ」床に倒れ込んだ。「貴様らの行く末、あの世から見させてもらう、ぞ・・・・・・」

 神原は動かなかった。「お疲れ様、シャドウ」小さな声で呟いた。

「これでこの抗争も終わったね」

「・・・・・・あの時自分に銃を降ろすように言ったのは、これを予期していたからですか?」

「まさか。いくら私でも、この展開は予想出来なかったよ」

「ではなぜ?」

「彼の傷だよ。シャドウを刺した時に見た彼はかなりの深傷ふかでを負っていた。紅葉さんからかろうじて逃げ出したのだろうけど、無傷で逃げられるほど紅葉さんは甘くないからね。そのような状態なら、いずれは・・・・・・。そうなれば、君が撃つ必要はなかったからね。それに、君には殺しをして欲しくなかったからね」織田の肩に手を置いた。

「どういうこと・・・・・・」

 遮るように無線機が鳴った。「儂だ。こちらは片づいておるぞ」

「こちらも終わった。ったく、人をアゴで使うのもいい加減にしろクソ太宰」

「こっちも終わったぞ」

 大佐に続き、次々と報告が入って来た。

「お疲れ様です。こちらもたった今、終わりました。これで同盟は壊滅です」

「しっかし、張り合いの無い奴らだった。もう少し骨のある奴はいないのか?」

「何はともあれ、この騒動もようやく終わりじゃ。帰ってゆっくり寝るとするかのう」

 太宰たちは洋館を後にした。

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