第10話(1)

「儂の相手は貴様達か。随分と好き勝手やってくれたな、花火野郎ども」

 中庭では、裁縫針のような剛毛の男がバレットと睨み合っていた。色褪せてところどころ裂けた軍服に柔道の帯を巻き、高下駄を履いた男。ポートマフィア幹部の一人、通称『大佐』だ。

「ポートマフィアとはいえ、所詮は老いぼれたジジイだ。怯むな」

「がっはっはっは。威勢が良いのう、若人ども。だが、爺を甘く見るなよ──」

 突如地面が波打ち、バレットたちを飲み込もうと押し寄せてきた。

「な、何だ? 地面が急に・・・・・・」動揺が走った。

「これくらいのことで驚くとは情けない。さっきまでの威勢はどうした?」

「この異能力・・・・・・。この爺、ポートマフィアの幹部だ」一人が気づいた。

「儂を知っておるとは嬉しいわ。それには感謝したいところだが・・・・・・」

 先程までよりもさらに大きく波打ち始めた。

「それとこれとは話が別だ」地面が勢いよく襲いかかった。「マフィアを敵にまわした恐ろしさ、身をもって思い知れ」



       ◆  ◆  ◆


「俺の相手は手前ェらか、GSS」

 食堂と思しき部屋では、中原中也とGSS達がいた。

「これもあいつの差金か」

「ひ、『羊の王』中原中也!? まだ生きていやがっ・・・・・・」轟音とともに男が地面に押し倒された。

「──あァ?」怒りのこもった中也の声がした。「言葉に気をつけろ。俺は王でも何でもねぇ。それにな、今の俺はポートマフィアの中原中也だ」

 地面を強く蹴った。床は大きく凹み、放射状に亀裂が入った。

「手前ェらにはあん時、随分と世話になったなぁ。あん時の礼、たっぷりとしてやるから感謝しやがれ。さぁて──」殺気のこもったで睨んだ。「重力と戦いてぇ奴はどいつだ?」

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