第8話(2)

       ◆  ◆  ◆


 あれからいくつもの襲撃現場や、襲撃現場と同様の場所をまわってみたものの進展は無く、襲撃も一切起きていない。

「やけに静かだ。彼らは一体何を考えているのやら」

「昨日の襲撃失敗を受けて慎重になっているのでは?」

「いや、それはないだろう。昨日、我々を襲ってきたのは間違いなくシャドウだ。中也が乗った車を襲ったのも、シャドウによる作戦。車を襲ったのは“幹部クラスが乗る”もしくは“乗っている”と思ったから。でなければ、ポートマフィアの車を襲ったりはしないだろう。この機を逃すようなことはしないはずだ」

「なるほど」

「とにかく、引き続きまわっていくしかなさそうだね」

 再び歩き出した。

「そうだ。忘れてた」太宰はポケットからある物を取り出した。「これを君に渡しておく」

「インカム、ですか? いったいなぜ?」

「今回の任務において、君は私の護衛でもあれば直属の部下でもある。場合によっては、私と別行動することもある。その時の連絡用だ。周波数はすでに合わせてある」織田作に手渡した。

 その直後──

「太宰さん、目を──」

 織田作の叫び声が響き、辺りを強烈な光が包んだ。


「太宰さん、ご無事ですか?」

 光がおさまった。

「君が盾になってくれたおかげでね。しかし、油断した。君が叫んだのと同時に目を覆ったのだが、少々間に合わなかったようだ。はっきりと見えなくなってる」目を抑えてうずくまっていた。「織田作、今の見ているね・・・・・?」

「はい。全てではありませんが、相手の逃げた方向も見ています」

「ならばすぐに追え。今なら間に合うだろう。何かあればすぐに連絡を」


 襲撃者を追いかけ、織田作は走った。

 その時、人影が路地裏に消えていくのが見えた。

 ──あそこか。路地裏に入った。

 しかし、そこに人はいなかった。

 どこへ行った? あたりを見渡した。

 ふと、足元に何かが転がってきた。転がってきたのは、缶のような物だった。

 缶から勢いよく煙が吹き出てきた。周囲は瞬く間に煙に覆われ、倒れていく感覚に襲われた。

 そこで映像が終わった。


 しまった、瓦斯ガスだ──

 映像が終わると、周りは瓦斯に覆われていた。

 すぐさま織田作は口元を押さえたが、瓦斯をかなり吸ってしまっていた。

 映像と同じ様に倒れていく感覚が襲ってきた。

 遠のく意識のなか、太宰へ報告を試みた。「太宰さん、これは罠です。早く、逃げてください。このままでは・・・・・・」

 意識が途切れた。

「織田作? 何があった? 返事をしろ織田作! 織田作!」

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