第7話(1)
「おかしい」
太宰はとある路地に、織田と二人で来ていた。
これまで襲撃が起きたのと同じような、狭く暗い路地だ。
「おかしいと思わないかい?」
「と、申しますと?」
「なぜ襲撃されないんだ?」どこか不服そうだった。「幹部候補がこんなにも無防備でいるのに何故、敵は襲撃してこない?」
話は昇降機を降りたところまで遡る。
◆ ◆ ◆
「昨日と同様、捜索にかかれ。それと、昨日襲撃にあったことは聞いていると思うが、各自引き続き警戒を怠らないように。だからといって、誰かさんみたいにくれぐれも敵を半数以上殺さないように。紅葉さんの拷問班に引き渡して情報を聞き出すんだ。報告に関しては密に行なうように。どんな些細なことでも必ず報告を」
ロビーでは太宰が、構成員たちに指示を出していた。
「では、各自指示通りに。昨日と同様、4人は我々と共に・・・・・・」
「待って、広津さん」広津を制止した。「僕は彼と2人で行くから大丈夫。だから広津さんには現場の指揮を任せたい」
「それは少々危険では? いくら彼が優秀でも、いささか不安が残ります。それに昨日も申し上げましたが、自ら囮になるのはあまりにも危険すぎます。せめて彼とは別に、武闘派の構成員をつけておく方がいいのでは?」
「いや、これでいい。昨日僕たちを襲った黒外套の男が本当に"シャドウ"なら、幹部たちが動いていると見て行動するだろう。ならばこちらから罠を張る。そのためにも、僕がある程度無防備になるのが一番いい」
「・・・・・・かしこまりました。では、あとの4人は私について来い」
広津の指示で構成員達が一斉に動き出した。
ロビーには、太宰と織田の2人だけが残された。
「さて、と。私たちも行くよ、織田作」
「はい。──織田作、とは?」聞き慣れない呼び名に困惑した。
「私が考えた君の呼び名だよ。組織内での立場はどうであれ、今の君は私の護衛兼相棒でもあるからね。だから君も、私のことは呼び捨てにしてくれて構わないよ」
「幹部候補にそのような事はできません」
「私が構わないと言ったんだから何も言わないし、何も言わせないよ。まあ、いきなりは難しいかもしれないから、少しずつ慣れていってくれたらいいよ」
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