第6話(1)
彼を僕の護衛から外してください──
太宰の言葉に、織田は焦った。
何がいけなかったのか?
幹部候補である太宰に銃を向けたことか?
襲撃犯を取り逃したことか?
織田の頭の中を様々なことが高速で駆け巡った。
「理由を聞かせてもらえるかな? 彼に何か問題でもあったかい?」
「何も問題はありませんよ。彼がいなければ、私は昨日の襲撃で死んでいたでしょう。彼には感謝しているくらいですよ」
「では、一体なぜ──」
「だからですよ」鴎外の言葉を遮り、太宰は続けた。「彼の異能力と戦闘力は素晴らしいものです。それらは敵との戦闘でこそ真価を発揮できます。そんな彼の能力を活かさず私の護衛としてそばに置いておくなど、飼い殺しでしかありません」
「・・・・・・君がそこまで誰かを褒めるなんて珍しいね。いいだろう。彼を君の指揮下に入れよう。ただし、君の護衛は引き続き行なってもらう。それが条件だよ。」鴎外は笑みを浮かべた。「君は常にマフィアにとって有益な判断をする。今回も期待しているよ」
太宰はしばらく黙った後、仕方なさそうにため息をついた。
「分かりました。ではこれから調査に向かいますので、失礼します」
太宰は織田と広津を連れて執務室をあとにした。
執務室には、鴎外と紅葉が残っていた。
「残党達による同盟にシャドウ。彼らはこちらをかなり知り尽くしていると見ていいだろうね」
執務椅子にもたれ掛かると、鴎外は大きく溜息をついた。「実に厄介なことになったね」
「私には楽しんでおるようにしか見えんがのう。大方、そのシャドウとやらの正体に気づいておるのだろう?」
「想像にお任せするよ。しかし、またしても
「それだけ"先代の暴走"の影響が残っている、ということじゃな」
──先代の暴走──“血の暴政”と呼ばれる、ヨコハマの街を長く暴虐と恐怖に陥れた惨劇は人々の記憶にもまだ新しいものであった。
その暴政により多くの組織がポートマフィアと敵対し壊滅。ポートマフィアは強大な力をつけていくこととなった。
「同盟の構成組織はどれも先代の暴走で消えた組織。我々が弱体化している隙を突いて復讐しようと計画しているようだ。さて、一体どうしたものかねぇ」やれやれ、という表情を浮かべた。
「何にせよ、私たちがとる行動は決まっておる」着物を翻した。「首領を護り、我らが我らたり続ける意義を懸けて戦うのみ。でなければ、私が忌む昔のマフィアに逆戻りするでのう」
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