幕間
ヨコハマのとある廃墟の洋館。
その大広間に置かれたソファーに座る人影があった。織田と戦った、黒い外套の男だ。
大きな音をたて、大広間の扉が開いた。黒い服に身を包んだ男が入ってきた。
「シャドウ! 手前ぇよくもやってくれたな」
入ってきたのは北辰會の幹部構成員だった男だ。その表情は怒りに満ちていた。
「今回の作戦で、俺の仲間を捨て駒にしやがったな。おかげでポートマフィアに連れていかれた」
シャドウと呼ばれた男は表情を変えることなく、ただ黙ったままソファーに座っている。
「黙ってねぇで何か言ったらどうだ?」
「喚くな、北辰」
武装した別の男が広間に入ってきた。「せっかく俺たちが用意した武器を満足に扱えなかったお前たちが悪いんだろう」
「バレット! 今は手前ぇらに用はねぇ、引っ込んでろ」北辰會幹部は続けた。「そもそも、今回の襲撃作戦には今でも納得がいかねぇ。俺の仲間を四人も行かせるなら、全員俺たち北辰會組でやるべきだろ。なんでGSSの奴を指揮官にした?」
「それに関しては、俺も同意見だ」
砂色の戦闘服を着た男たちがやって来た。GSSメンバーの一人だ。「俺の仲間を行かせるなら、俺たちだけでやるべきだった。おかげで失敗し、我々も要らぬ被害を受けた」
「手前ぇ、何が言いてぇんだ?」
「どんなにいい武器を揃えても、使う人間があれでは持ち腐れということだ。それらを上手く扱えるのは、我々をおいて他にいない」GSSの表情は自信に満ち溢れていた。
「組織の方針が気に食わねぇからって抜けた奴らが何言ってやがる。そんな手前ぇらだけでやったとしても、結果は同じだろうが」
北辰會とGSS。
二人の男が睨み合い、一触即発の空気が漂っていた。
「御二方、そのくらいにしておきなさい」
二人の間を割って入るように、黒いローブに身を包んだ男が現れた。
その顔は鴉の仮面で隠されている。
「いくら言い争っても解決はしませんよ。それに北辰會さん。本当のことを言われたからといって絡むのはおよしなさい。どんなに騒いでも"ポートマフィアに潰された組織"ということに変わりはないのですから、みっともない真似はおよしなさい」
北辰會幹部は怒りの矛先を、鴉面の男へ向けた。「ポートマフィアとの抗争中に見捨てられたお前たちに言われる筋合いは──」
「そこまでだ」
北辰會の言葉を遮るように、シャドウが口を開いた。「貴様ら、いい加減に黙れ」
北辰會幹部は小さく舌打ちした。
「
「これはこれは。失礼をいたしました」鴉面の男は頭を下げた。
「北辰會の言うように、我らの同志が捕らえられた。恐らく奪還は不可能だろう」ソファーに座ったまま、シャドウは続けた。「だがその分、得たものもある」
「と、申しますと?」鴉面の男は顔を上げた。
「いよいよ幹部クラスが動き出したようだ。上手く立ち回れば、ポートマフィアにかなりの痛手を与えられそうだ」
「ならば俺たちが行く。俺の仲間が捕まってんだ。奴らに一矢報いてやる」
北辰會幹部が扉へと歩き出した。
「待て、北辰會」シャドウが北辰會幹部を呼び止めた。「勝手な行動は許さん。あとでこちらから指示を出す」
「捕まってんのは俺の仲間だ。お前の仲間じゃねぇ。仲間達は俺が助ける」
「勝手な行動は許さんと言ったはずだ。二度も言わせるな」シャドウは殺気を放った。
「・・・・・・分かった。手前ぇの指示に従ってやる。でもなぁ、これだけは言っておくぞ。俺たちを含めて、ここにいる奴らはただの
北辰會が広間を後にした。
「相変わらず、血の気の多い奴らだ。なあ、シャドウ。いっそのこと、北辰會抜きでやらないか? お前の指揮と鴉の作戦。それと俺たちの武器があれば、今のポートマフィア相手なら十分にやりあえるだろ」
「油断は禁物ですよ、バレット。奴らを甘く見ないほうがいい。そうやって、いくつもの組織が消えていったのですから」
「次の指示は追って連絡する。それまで待機しておけ」広間を後にした。
シャドウに続き他のメンバーたちも広間から去っていった。
──せいぜい頑張ってくださいね。あなたは私の復讐のための駒に過ぎないんですからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます