第3話(3)
織田の前には、不思議そうな顔をした太宰治が立っていた。
「どうしたんだい? 急に黙って」
話の途中で急に黙った織田に問いかけた。
織田は答えなかった。
「全員伏せろ」
突如、織田の声が路地に響いた。
織田は太宰の頭を掴み地面へと勢いよく押しつけると、覆いかぶさるように自身も身体を伏せて耳を塞いだ。
その直後、辺りが閃光と爆音に覆われた。
地面や壁が砕け剥がれる音を狭い路地に響かせながら、9ミリ弾が織田の頭上を駆け抜けた。
銃声に紛れて、短い悲鳴が聞こえた。
織田は地面に伏せたまま声がした方を向いた。
砕けた壁の破片や塵が舞っており、様子はよく見えなかった。
銃撃が止み、身体を伏せたまま後ろを見ると構成員たちが倒れているのが分かった。
銃弾を受けたようだ。
銃撃が止んだことにより、視界が開けてきた。
目を凝らすと、一人の男が立っているのが見えた。
「目眩しに銃撃とは、随分なご挨拶だな」
立っていたのは広津だった。
広津の視線の先に、短機関銃を抱えた5人の男たちが見えた。
「貴様ら、我々に手を出してどうなるか、分かっているのか?」
広津が無傷なことに驚いているのか、男たちは動揺していた。
「答えぬか。ならば、今度はこちらの番だ」広津は男たちを睨みつけた。
「──ッ!」男の一人が短機関銃を構えた。「怯むな。数ではこちらが勝っている」
男の声を合図に一斉に撃ち始めた。
路地に銃声が響き渡り、広津を目掛けて無数の銃弾が飛んでいった。
しかし広津が右手を突き出すと紫色の光に照らされ、銃弾は広津の目の前で止まった。
男たちは動揺を隠せないでいた。
「異能力を見るのは初めてか?」
相手の動揺をよそに、広津は笑みを浮かべた。「悪の花道。道化の標──」
弾の周りに無数の文字が浮かび上がった。
『──落椿──』
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