第3話(1)

 太宰たちはとある路地の入口に来ていた。

 辺りには人通りもなく、狭くて暗い路地だ。

 なぜこのような路地へ来ているのか? 

 それは、この場所が襲撃現場の一つだからだ。

「君、ちょっと」部下の一人を呼んだ。「今までの襲撃の情報、教えてくれる?」

「これまでの襲撃は全て、ここと同じような路地裏で起きております。現場によって遮蔽物の有無など多少の違いはありますが、その他の点はどの現場も共通しています。襲撃方法についてですが、助かった者の話によると爆撃、銃撃、刺殺、斬りつけ、とバラバラです。また、強烈な光と音で一瞬動きを封じられたとの情報もあります」構成員は、これまでの襲撃について説明した。

「強烈な光と音は音響閃光弾スタングレネードだ。遮蔽物の無い場所で使ったのだろうね。爆撃に関しては、手榴弾によるものだろう」構成員からの情報をもとに、太宰は被害状況を分析した。「銃撃に関して、何か得ている情報は?」

「それぞれ9ミリ弾を10発〜20発ほど受けております」

「となると、使われたのは短機関銃サブマシンガンとみていいだろう。なるほど。どうやら敵さんは、最初からこちらを襲うつもり満々だったらしい」分析を終えた。「しかし、分からないな」

 太宰には何か引っかかるものがあった。

「何か疑問でも?」広津が尋ねた。

「なぜ彼らはこんな狭くて暗い路地へ入って行ったんだ? これじゃあまるで『襲撃してください』と自分達から言ってるようなものだ」

「言われてみれば、確かに妙ですな」広津も困惑していた。「路地裏へ入って行った経緯は?」

「物音や悲鳴が聞こえたため、との事です」構成員の一人が答えた。

「となると、何者かに誘い込まれた? だとしたら、一体誰が・・・・・・」

「だからもう一度調べるのさ。前回は市警に連絡が行かないようにするので精一杯だったからね」

 太宰を先頭に構成員たちが路地へ入って行った。

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