第2話(1)
「お疲れ様です、太宰殿」
太宰がロビーへ降りると、黒服に身を包み武装した男たちが並んでいた。
その中の一人。黒い外套の上からストールを巻き、
ポートマフィア最古参の一人で、百人長を務める広津柳浪だ。
「首領からの指示を受け、すでに我々の準備は整っております。指示をいただけましたら、すぐにでも動きます」
「広津さんと四人は私と一緒に。残りは四人ずつの班に分かれて襲撃現場を隈無く捜索。少しの痕跡でも見逃さないこと。もし襲撃にあっても、殺さず生捕りにして情報を引き出す。いいね」
「承知しました。では各自、指示通りに」
広津の合図で黒服たちが一斉に捜索へと向かった。
ロビーには太宰以下六名が残った。
「さて、私たちも行くよ」
「すでに現場へは部下たちが向かっておりますが、どちらの現場へ参りますか?」
「彼らが行っていない現場さ。襲撃の回数が思った以上に多い。今日一日ですべての現場を捜索し直すなんて無理だ。だから僕たちも現場の捜索に向かう」
「太宰殿自ら現場へ赴かれるのは、少々危険では?」
「彼らにだけ捜索をさせておいて、我々だけ何もしないわけ行かないでしょ。かと言って、私たちがぞろぞろと現場へ行ってもみんなの捜索の邪魔になるだけ・・・・・・」太宰は笑みを浮かべた。「だから、僕自ら囮になるのさ」
「なっ・・・・・・」驚きのあまり、広津は一瞬言葉を失った。「太宰殿、それはあまりにも危険です。幹部候補自ら囮になるなど──」
「だからだよ、広津さん」広津の言葉を遮った。「構成員たちを連れていれば、ポートマフィアの中で地位が上の人間だと思って敵さんは大喜びで襲撃してくる。しかもそれが幹部候補となればなおさらだ。だからそこを狙うわけ。それに、囮になるとは言っても、ただ襲われるつもりはないよ。もし何かあっても広津さんがいるなら安心でしょ」
太宰は笑みが浮かべると、正面入口入口へと歩き出した。
「我々を本気で怒らせたことを後悔させてあげよう。そして、今一度思い知らせてあげようじゃないか。ポートマフィアを敵に回すということが、裏社会でどれほど恐ろしいのかをね」
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