第1話(2)

       ◆  ◆  ◆


「さて、話を戻そう。先程も言ったように、我々ポートマフィアを取り巻く状況が再び悪くなってきている。敵対組織が一つ減り、これで少しは状況も落ち着くと思ったのだが・・・・・・」黒革張りの執務椅子に腰掛けると執務机に両肘をつき、顔の前で手を組んだ。

 以前、ポートマフィアは三つの組織と抗争をしていた。『高瀬會』、『GSS(ゲルハルト・セキユリテヰ・サアビス)』。そして、未成年のみで構成された『羊』。

 しかし、『羊』の中心人物であった中原中也が仲間と決別しポートマフィアへ加入したことにより組織は壊滅。構成員たちは日本各地に散り散りとなった。

「海外組織『ストレイン』の勢力拡大による四大組織入り。それに続けと言わんばかりに、武器商人の『陰刃』、元宗教組織の『聖天錫杖』、密輸業者の『KK商会』などが力をつけてきていますからね」

「そう。だが、その内『ストレイン』以外の組織は現時点で大した脅威ではない。問題は別にある」鴎外の目つきが変わった。「ここ最近、我々ポートマフィアの構成員達が次々と襲われているのは知っているね?」その目には怒りに近い感情が宿っていた。

「襲撃者の素性や規模は不明で襲撃方法もバラバラ。と聞いています」

「現時点での被害はそこまで大きくはない。だが、我々にとって今は力を貯めなくてはならない時期だ」

 数ヶ月前、ポートマフィアをある事件が襲った。

『暗殺王事件』──

 暗殺王ポール・ヴェルレエヌのポートマフィア襲撃事件を受け、、組織は武器と構成員、更には攻撃系異能力者といった多くの貴重な戦力を失い、当面は力を蓄えなくてはならなくなっている。

「これ以上、戦力を失うわけにはいかないのだよ。私としては、今のうちに危険の芽を摘んでおきたい」机から肘を離した。「そこでだ。君にこの事件の調査を任せたい」

 太宰は大きくため息をついた。

「また面倒事を押し付けてきたね。まさか人手が足りないから僕一人でやれ、なんて言うんじゃないでしょうね?」

「広津さんの部隊を君の指揮下につける。広津さんなら、君も安心だろう。既に招集をかけているから、もうじき揃うはずだ。君も準備ができ次第、下へ降りてほしい」

「分かりました」

 太宰は扉へと向かっていった。

「それと、君には護衛としてもう一人つけよう」

「護衛?」

「君もマフィアにとって大切な戦力なのだよ」笑みを浮かべた。「良い成果を期待しているよ」

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