第1話(1)

 様々な闇組織や海外の非合法資本が存在し『魔都』とも揶揄される『ヨコハマ』。

 ここには、政治・経済のあらゆる場所に根を張り『街の暗部そのもの』と言われる組織が存在する。

 ヨコハマを拠点とし、街を闇から取り仕切る非合法組織『ポートマフィア』だ。


 ヨコハマ中心部の一等地にそびえ立つポートマフィアの本部ビル。

 見た目は真新しい外観の高層ビルだが窓硝子はすべて防弾仕様という難攻不落の要塞となっており、建物内に常駐する異能力者が、常に最上階の首領ボスを護衛している。

 その最上階。ヨコハマの街を一望できる首領執務室で街を眺める男がいた。

 森鴎外。ポートマフィアの首領だ。

 鴎外が外を眺めていると執務室の扉が開いた。

 右目と両腕に包帯を巻き、黒い外套コートを肩からかけた青年が執務室に入ってきた。「急に呼び出してすまないね、太宰君」

 入ってきたのは、幹部候補の太宰治だった。

「別に構いませんよ。それで、一体何の用です? 森さん」

「少し困ったことになってねぇ。ポートマフィアを取り巻く状況が、またしても良いとは言えなくなってきてしまっているのだよ」

「あのね、森さん。前にも言ったと思うけど、そんなのは今に始まったことじゃないでしょ」

 太宰の言う通り、今に始まったことではない。

 鴎外が首領の座についてからの一年は密輸銃の納入期限遅れにはじまり保護ビジネスの契約解除や他組織との抗争の激化、縄張りの縮小など様々な問題が山積みとなり、ポートマフィアにとって危険な時期だった。

「君の言う通りではあるのだがね。また裏社会が物騒になってきているのだよ」

「裏社会が平和だったことなんて、一度もなかったでしょう。そんなことを話すために呼んだなら、帰りますよ」太宰は扉の方へと向き直った。

「太宰君。話はまだ終わってないよ」鴎外は執務机の背後に回りスイッチを押した。「ここからが本題だ」

 鴎外がスイッチを押すと、街を一望する窓が遮光され、室内は暗くなった。

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