Avenger of the Former Chieftainー二人の出会いー
猫ノ介
序章
モダンなビル群とノスタルジックな建物が混在する港湾都市『ヨコハマ』。
観光地としても人気が高いこの街は、今日も大勢の人たちで賑わっていた。
そのヨコハマの街を見下ろせる丘。
港を遠くに眺めることができるこの丘の山道に、緑に囲まれた墓地がある。
まだ出来て数年ほどしか経っていないのか、いくつもの真新しい墓標が整然と斜面に並んでいる。
それらの墓標は、光の反射を受けて白く輝いていた。
その中の一つ。
白い花束が供えられた小さな墓標にもたれかかり寝そべっている一人の男がいた。
腕や首に包帯を巻き、砂色のコートを羽織った男。軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にし、昼と夜の世界を取り仕切る異能力者集団『武装探偵社』の調査員、太宰治だ。
ふいに強い風が吹き、花束を揺らした。
海からの風が丘を駆けて行った。
「いつもここはいい風が吹くね。この時期は特に気持ちがいい」太宰は空を見上げた。「君と出会ってずいぶん経つ。一緒にいられたのは短い間だったけど、いつも楽しかった」
そう問いかけると、笑みを浮かべて目を閉じた──
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