第29話

今回も例に漏れず、人に聞かれるわけにはいかないので術式認識阻害の術に、防音の結果、そして人避けの術式も展開する。




話し合いの前にお互いに自己紹介を行う。


元々莉緒ねぇがこちらの要望を伝えていた為、交渉自体はとてもスムーズに終了した。

なお、それぞれの呼び方は名前に先輩を付ける形になった。

どうにもこの学園では名字で呼ぶのは一般的ではなく、名前で呼ぶのが一般的らしい。


「それでなんだけど、本当に私たちのレベリングもしてくれるの?」

職人クラスパーティーのリーダーを務める桃花先輩が聞いてくる。


「はい。少なくとも俺たちはそのつもりです」

「理由・・というか君たちのメリットを聞いてもいいかな?」


「先輩たちは職人クラスということですが、今現在は職人全般クラスですよね?」

「う、うん。そうだけど他に何かあるの」


「簡単に言えば職人の上位クラスになって専門性を高めてほしいんです」

「えっと・・・?そんなものあるの?というかそれって無理じゃないの?」


「何故ですか?」

「なぜって・・・だって職業は皆、学園の職業鑑定の儀でランダムで与えられるものだよ?選べるものじゃないと思うんだけど?」


「でも選択肢には出てますよ?」

「選択肢?」




「・・・・・・・・・・・・あ」

そういえば、神獣から貰ったスキルは異質なスキルだったのを忘れた。

「待て、今の間はなんだ?そして選択肢ってなんだ?」


「あー、いや、その俺の伝手の方でルビーを交換してるって新一には言ったよな?」

「ああ」


「最初にヤマンバのドロップ渡した時にレアだからって、アイテムボックスとシステムコンソールっていうスキルもらったんだよ」

「待て、アイテムボックスってのはなんとなく想像できる。それにしたって規格外すぎて驚きそうなのを抑えてるが・・・

システムコンソールってなんだ?」

「待って!ヤマンバと出くわしたの!?」




「あー・・・新一悪いけどその説明、後でな」

と言いつつ莉緒ねぇに初のダンジョンダイブでヤマンバに出くわして、討伐してることを伝えた。


「「「「「「「「「はぁ!?」」」」」」」」」


9人分の驚愕が響く。

「良く倒せたわね・・・?」

保護者の生徒が聞いてくる


「それは陰陽師ですので・・・そういうのは日常茶飯事です。俺たちは・・」

「そう・・・・」




「疑問が1つ解決したところで悪いが、システムコンソールってのはなんなんだ?」

「簡単に言えば自分と友好関係にある人物の情報を確認できるのと、その人の情報を少しばかり操作できるスキルだとさ」


「情報を・・・操作?というと?」

「先にも言ったけど、この学園はダンジョン職業があるだろう?」


「ああ。それに応じて職業を獲得して専用のスキルを使える。

まぁ一部性奴隷扱いの職業もあるにはあるがな・・・」


新一が嫌そうに言うと、詳細を知っているのか莉緒ねぇも含めた先輩女子生徒も一様にとても嫌そうな顔をする。

1年女子組も大まかに知ってるのか、先輩たちほどではないにしても似たり寄ったりな表情だ。


「俺が貰ったスキルっていうのは、当人がやってきたことの中で少しでも関連性のある内容なら、その選択肢の中から任意の職業を選べるものなんだよ」


「「「「「「「「「「「はあああああああああああ!?」」」」」」」」」」」


11人分の大きな驚きが木霊する。

防音の結界張っといてよかった・・・


「なんだそりゃ・・・チートにもほどがあんぞ?」

「だろうな。だからこそ俺も今まで誰にも言ってこなかった」


「はぁ~・・・まぁそりゃ正解だが・・言った通りだろ?」

「何がだ?」


「お前のやること成すこと全てが非常識すぎるんだよ・・・」


全員に頷かれた・・・

莉緒ねぇにも頷かれるとは・・・・微妙にショックだ・・


「それじゃあお前は職業をもう得ているのか・・・?」

「もう得ているというか・・・なんか初めからセットされてたな」


「なんか無性に嫌な予感がするが、何なんだ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人じゃなくて神の方の魔神だとさ」


「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」


「ちなみに莉緒はどうなの?」

と保護者さん質問。


「莉緒ねぇは魔ジン候補だってさ」

「え?がっくん。私は人の方だよね?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・莉緒ねぇも神の方だってさ」

「・・・・・・・」


「――バケモノ姉弟――」

「「聞こえてるんだけど・・・・」」





協力関係を築き上げる約束をした俺達だが、驚愕の真実が判明し沈黙することになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る