第28話

「それで、莉緒ねぇの用件は?」

「あぁ・・・ごめんね、話そらしちゃって。

私の用件は職人クラスのグループにコンタクトが取れたって話。

概ね好印象だったよ?」


「ありがとう。流石は『姉』だね」

「ふふふ、どういたしまして」


「それで?顔合わせはいつ?」

「いつでもいいみたいだよ?明日一応空けてくれるってさ」


そこで新一が話に加わる。

「鋼の予想通りだったってわけか」

「どういうこと?」


「いや、先輩・・・あー、たぶんこれから先輩が増えるだろうから、あえて莉緒先輩って呼ばせてもらいますね。

んで・・・それでですね、莉緒先輩が入ってくる直前に、鋼が『明日は職人クラスとの顔合わせ』って用事があると思うって話だったんすよ・・・です」

「極端に失礼な物言いじゃなければ普通に話してもらっていいよー」


――ハハハ、スンマセン―――と返している。


「そっかー、やっぱり私とがっくんって以心伝心なんだね!」


再びバチバチし始める空気。

ここまでくれば流石に詩織は勿論だが、結城も俺に対してどんな感情を抱いているかは想像できるが・・・

莉緒ねぇ・・・分かってるなら真面目な話をする時くらい控えてくれないかな?

普段は頼りになるくせに、こういう時は困った『姉』だ。


身内のどうしようもない性格に内心ため息をつきながら俺は訊く。

「それじゃあ明日でいいのかな?」

「それはいいけど気を付けてね?」


「何に?」

「向こうの職人クラスの子たちには、一種の『保護者』がついてるのよ」


「保護者?」

「保護者って言っても私たちと同学年なんだけどね?

結構仲がいいからとても過保護なのよ。

どれくらい過保護かって言うと寮長のサポートをしてる名残で、今現在実質寮長権限握ってるのを良いことに、

バラバラだった寮の所属を自分のところに呼び寄せて柵で蔽って守るくらいにはね」


「それは、また・・・凄く過保護だね」

「そう。だからあの子たちと話すときはなるべくビジネスだと思って話してほしいかな。

まぁがっくんの気持ちを考えれば心配しなくても良いとは思うけどね?」


「まあ、対等な立場で仲間になってほしいと思ってるから大丈夫だとは思ってるけど・・・一応気に留めとくよ」

「そうしてちょうだい」


「それで?その人たちは俺の事情をどれだけ知ってるの?」

「流石に巻き込むとなるとある程度は話さないといけないから、陰陽師ってことと家の任務で来てることに関しては、勝手で悪いけれど教えさせてもらったよ?」


「うん。それはいいよ。秘密はについては?」

「ステータスを隠す延長線上だと思えば重くないから大丈夫だってさ」


「それは何よりだね。そこが守れないとなると俺も一切引けないから」



そうしてその日の話し合いはそこで終わった。



翌日。

俺たちは学園の莉緒ねぇの教室に来ていた。

ラウンジを使うことも考えたが、衆人環視の中で術式を使うわけにもいかず。

基本的に休みとして扱われる日曜日ということもあり、人の出入りが極度に減る教室で顔合わせと話し合い・・・交渉という事になった。


そして莉緒ねぇの教室に入る。

既にメンバーは揃っていたらしく莉緒ねぇ含めて7人の女子生徒たちがいる。

割とおとなしそうな外見に見える女子生徒が5人と、すごく値踏みするように見てくる女子生徒が1人。

恐らくだが、この1人がとても過保護な生徒なのだろう。


だが・・・

「おはよ――「がっくん、おはよう!!!会いたかったよ!!!」――ガハッ!?」


「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」


「・・・・莉緒ねぇ・・・お願いだから普通に挨拶をして・・

そして、せめてやるなら、時と場所を考えてほしい・・・・・」


俺と莉緒ねぇ以外の反応としては相手方6人が茫然、

新一達5人が昨日既に見ているからか呆れになっている。



「莉緒にこんな一面があるなんてね・・・」

「ア、アハハハハ・・・」


値踏みしていた生徒が呟き、向こうの5人のうちの1人が苦笑いしている。

心なしか少し表情が柔らかくなったように感じる。

もしかしてこれを狙ったのか?


「無理!!!今まで1年間がっくん成分我慢してたんだよ!?

毎日手の届く範囲にいるがっくんを我慢するなんて無理だよ!!!」


違ったようだ・・・俺の感心を返してほしい・・・




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