第27話
「それじゃあ改めまして自己紹介ね。
私は【上日 莉緒】。2年生よ
がっくん・・【上月 鋼】君とは遠縁の親戚になります。
小さいころからの幼馴染みたいなものだね?」
そこでなぜ俺に確認するように視線を向けてくる?
それに何か防衛線みたいなものを張っていない?莉緒ねぇ?
「えーっと・・・まぁそれに近いのかな?」
と曖昧な答えしか返せない俺。
同時に妙に詩織とバチバチし始めてる。
そして詩織ほどではないけど微妙に神代さんと東雲さんともピリピリしてるような・・・?
そして新しく2人の自己紹介と出会った経緯を話した。
「んー・・・その男子は典型的なクズだね。縁を切った方が良いと思うよ?」
「そうですね。私たちもそのつもりです。
それで鋼さんからの打診で私たちもパーティーに入れてもらえることになりました」
「もう名前呼びなんだ?」
「鋼さん『達』もそうしているようですので、それに合わせた方がいいかと思いまして」
ん?なんか二人の間でも火花散ってない?
まぁ気のせいだろう・・・
「それにしても貴方・・・ちょっと不思議な感じがするね?」
「ああ、それは多分同族だからだよ」
「がっくん?どういうこと?」
「莉緒ねぇは分家だからあまり詳しく知らないだろうけど、100年近く前に陰陽師として途絶えた家の中に、神代っていう名前があるんだよ」
「ふーん・・・つまりその末裔ってこと?」
「んー?微妙かな。話を聞いた限りでは一族としては力は途絶えてるっぽい。
結城だけが突然変異みたいな形で強い力を持ってるんじゃないかってのが俺の見解だね」
「・・・・がっくん、まさかとは思うけどアレをやるつもり?」
「そのつもりだよ」
「いいの?アレは一族の中では禁止まで行かなくても、あまり推奨されてないよ?」
「その推奨されてない理由って知ってる?」
「・・・・・知らないわ」
「・・・・すごくどうでもいい理由で、力の独占をするためだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当にどうでもいい理由ね」
一気に不機嫌になったようだ。
そう。
俺も莉緒ねぇも自分の家の立場や、成すことの重要性自体は理解しているし、
そこに賛同もしている。
だけどそれだけだ。
家の在り方だとか、そういうものはどうでも良過ぎて辟易している部分がある。
「えーっと『アレ』っていうのは?」
当事者らしいと気づいている神代さんが聞いてくる。
「簡単に言えば陰陽師の力を開花させるための儀式だ」
「儀式・・・何をするんですか?」
「ありていに言えば、俺の血を少量飲んでもらう」
「血を!?」
「俺達陰陽師は血の力で、力そのものを継承している。
つまり血に力が宿っているんだ。
だから他者がそれを取り込むことで、陰陽師の力を取り込むことができる」
「待て。それなら俺たちも―「それはやめておいた方が良い」―それを・・・・・・
理由を聞いても?」
「耐性が無いからだ」
「耐性?」
「簡単に言えば俺達陰陽師の力というのは、妖魔の力と同類のものだ。
厳密にはゴブリンなどは妖魔とは違うものではあるが、根本は同じだ。
故にそういう血統ではない一般人がその力を取り込もうとして血を取り込めば激しい拒絶反応が起きる」
「結城は良いのか?」
「結城はあくまでも陰陽師の血が薄れて力が弱まっているに過ぎない。
それゆえベースは陰陽師の血だ。
だから血を取り込んでも、2~3日微熱が出たりする程度の拒絶反応が出るだけだ。
言ってしまえば病原体と同じだ。
新一達には抗体が存在しないがゆえに、力にもなる病原体を取り込むと重篤化する。
一方で結城は抗原が存在するため、力になる病原体を取り込んでも軽い症状で済まされるというわけだ」
「つまり一般人は力を取り込むことはできないってことか?」
「ああ。少なくとも本人は無理だ」
「『本人は』?」
「血に力が宿るというのであれば、自然な形で血を混ぜ合わせる場合は話が別になる。
分かりやすく言えば、例えば俺と詩織が子供を成した場合、詩織は力の取り込みはできないが、子供の方は力を取り込んだ状態で生まれるってことだ」
俺と子供を作ることを想像したのか顔を赤くしている。
話を振っておいて、悪いことをした気になってくる。
「それじゃあ、力を取り込めば私も鋼さんみたいに強くなれるってことですか?」
「厳密には俺レベルは無理だ。分家の莉緒ねぇのちょっと下くらいまでなら強くなれる。」
「それでもこの学園のハイランカー達と同クラスの力だけどねー」
「ちなみに聞くが、どうやって力を濃くしてるんだ?」
「人間も含めて動物は血が濃くなりすぎると障がいを持った子供が生まれやすい。
だが俺達陰陽師は、同じ陰陽師の血統で子供を成すことで力を強めていく。
今、俺は詩織を例にして例えたわけだが、莉緒ねぇが小さいころから俺の近くにいたのは偶然じゃない。
同じ家の分家とはいえある程度離れた血筋でありながら、陰陽師として濃い血を持った莉緒ねぇが俺との子供を授かることを本家と分家が期待してのことだ」
「つまりは家公認の許嫁みたいなものだねー」
真面目な話をしてるのになぜかピリピリしだす。
何故だ?
「お前は・・・それでいいのか?」
「まぁ俺も莉緒ねぇも最初は反発しあっていたんだが・・・
気持ちが基本同じだからな。
お互い惹かれあうのもそんなに時間がかからなかったわけだ」
「最初は酷いあだ名付けて呼び合ってたなぁ・・・懐かしいや」
「そう・・・なんですね。お願いできますか?」
「ああ。俺としてもお願いしたい。多分このダンジョンで起き始めてることは普通の領域じゃない。力はいくらあっても困らない状態にはなってるはずだ」
そこまで言って重苦しい雰囲気に変わってしまった。
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