第26話

ダンジョンを出た俺たちはそのまま詩織たちの寮へと行く。

偶然にも東雲さんたちの寮も同じだったらしく好都合だ。

尤も女子寮に入るなり、同じ寮生が増えていることでさらに注目を集めることになったがそれは別の話だ。


「それにしても・・・鋼、救出の際にやったアレはなんなんだ?」

「あー・・・アレか?アレはミスったんだ」


「ミスぅ!?」

「ああ。普段俺が使ってる歩法は特殊なもので、衝撃波とかを生み出さないものだったんだか・・・

助けたい気持ちがあるって言い出しっぺの俺より先に、新一たちが飛び込んでくれたのを見て少し焦ってな。

それで歩法を用いずに身体強化だけで高速移動をしたら、ああなった」


「「「「えーーーーー・・・・」」」」

「・・・そんじゃ、あのゴブリンたちは鋼のミスで無残に殺されたと・・?」


「・・・・・・・・・・・・そうなるな」

「敵ながら哀れだな。それじゃあ2回目もミスなのか?」


「いや・・・1回目のミスの結果だけど、それだけで倒せるとは思ってなくてな。

ミスしたことで色々投げやりになって、面倒に感じて、そのままそのやり方で倒しただけだ」

「面倒・・・って・・」


「それはそうと・・・・」

「「「「「???」」」」」


「今回の稼ぎだな。ほら、新一達は前と同じく合計6000ルビーで一人当たり2000ルビー。

そっちの二人はゴブリン結晶1個100ルビーで3000ルビーだ。

2人で分け合えば1500ルビーってところか」

「「ええ!?も、もらえませんよ」」


「と、2人は言っているが、新一たちはどうなんだ?」

「あー、まぁ、鋼がそれでいいならいいんじゃね?」

「ですね」「だね」


「ということらしいので渡しておく」

「ん?ちょっと待て、ゴブリン結晶1個100ルビーってどういうことだ?

1個200ルビーじゃないのか?」


「ん?ああ・・・俺たちが別エリアで倒したゴブリンは陰エリアのゴブリンで、神代さんたちが戦ってたやつよりも強いやつだからな。

結晶の純度としても高価な分、1個200ルビーで売れるんだ。

一方で東雲さんたちが相対してたゴブリンは陽エリアの弱いゴブリンだからな。

こっちは1個100ルビーにしかならなかった」

「はーー・・・改めて聞くと普段俺たちが相手にしてるゴブリンってやべえんだな」


「えっと・・・陰エリア?陽エリア?って何ですか?」


俺は新一たちにした説明を彼女達にもした。

ただ魂のことだけは今のところ秘密にしてある。


「ほへーーーそんなことになってるんですねー・・・」

と呆けながら東雲さんが応える。


「ん?あれ?ってことは次から私達もその陰エリアで戦うことになるんじゃ?」

と神代さんが当然のことを、疑問にして聞いてくる。

「そうだよ?」


「ムリムリムリムリムリ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃいます私達!!!」

神代さんだけが辛うじて反応し、

東雲さんは・・・微妙に魂が抜けたような表情をしている。

いやまぁ・・今現在は抜けてるんだろうけど・・


「まぁ、気持ちは分かるが平気だろ・・・」

「根拠のない安心なんて聞いても安心できませんよ!?」

お?どうやら復活したようだ


「大丈夫だ!このパーティーじゃ通過儀礼だからな!」

「え・・・・え・・え・・・・・」

と新一と東雲さんのコント。


「えーと、真面目な話どういうことですか?」

「真面目な話すると、俺たちも鋼に無理やり強化されたクチなんだよ」


「何か不満でもあるのか?」

「もうちょっと優しく教えてくれてもいいんじゃねえか、とは思ったな」


「新一、冗談もほどほどにしてほしいのだが?」

「いや、これは結構マジな話なんだが?」

詩織たちを見てると、遠くを見るような顔で頷かれてる。


「「ええぇぇぇ・・・・」」


「あー・・・まぁ、最後の方は6つの瞳から生気が感じられなかったし仕方ない・・か?」

「わかってるなら途中でも良いから優しくしてくれよ・・・」




「ま、まぁそういうわけだから来週から二人のレベリングな?」

「「・・・・・・頑張ります」」




「そういえば新一」

「ん?なんだ?」


「日曜日はダンジョンは開いてないのか?」

「いや、日曜日も開いてはいるんだがアタックする人数は少なめだな」


「なぜ?」

「なぜって・・・お前は365日ダンジョンアタックするつもりかよ・・」


「あーーー・・・・」

「まぁそういうこった」


「まぁいいか・・・多分明日も用事ができるだろうし」

「待て、その用事ってのを詳しく聞かせろ」


「気になるのか?」

「当たり前だ!?お前のやることなすこと全部非常識すぎるんだよ!?」


心外な・・・


「まぁ割と平和的な案件だと思うぞ?

単に今頃、莉緒ねぇが職人クラスの説得を終わらせてるだろうから、明日はその人たちとの顔合わせになるだろうからな」


「そうなの――『ドンッ!』「がっくん、ただいまー!!!」――か?」

「ブベッ!?」


「「「「「・・・・・・・」」」」」


「・・・・・・・・・・・・・・莉緒ねぇ・・・普通に入れないの?」

「んー、女子寮だからわかってはいるんだけど、なんかがっくんに近寄る女の気配が多い気がしてねー?」


「・・わかってるなら少し自重してほしいかな?」

「んー、無理!油断してるとがっくん取られそうで怖いから!」


笑いながら答える俺の姉代わり・・・勘弁してくれ・・


「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」





なんとも言えない空気の中、俺たちの話し合いは続いた。

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