第25話

俺たちによる救助が終わるなり、女子生徒はスカートを手早く履いているようだ。

ちなみに俺たちはその女子生徒とは反対側を向いて、倒した敵からドロップした結晶を集めている。


しっかりと見てみると、どうにも結晶に含まれている妖気の密度が低い。


「もうこっちを見て大丈夫ですよ」

と詩織の呼び声が聞こえたため振り向く。

どうやら応急手当も終わったようだ。



「あの・・・助けていただいてありがとうございます。

私は【神代 結城かみしろ ゆうき】です。それでこっちの子は・・・」

「【東雲 真美しののめ まみ】です。助けてくれてありがとうです」


【神代】

確か100年近く前に陰陽師の家系としては途絶えた一族の名前にそんな名前があったはずだ・・

などと思っていると


新一達3人は俺をジッと見つめてくる。

え?そこで俺に振るの?

助けたいとは思ったけど、決定してくれたのは君たちだよね・・・


「えっと?俺が話すの・・・?」

「そりゃそうだろ。俺たちのリーダーは鋼だろ」


「え?決めたっけ?」

「話し合って決めたのは2回目の時だけだが、自然と・・・こう?流れで?」


「「・・・・・・・」」

「まぁ・・、いっか・・」


何とも投げやり継続中である。


「それじゃあ改めて・・・俺は上月鋼だ。それで今の男子が【富勇 新一】。

髪が短い女子が【赤金 香澄】。長い方が【島内 詩織】だ。

俺たちは初期メンバーのまま4人でパーティーを組んでる。

詳しくは言えないが、君たちが敵に囲まれているのを感知してここまで来た次第だ」

「そう・・・なんですね・・助けていただいて秘密が気になるなんて虫が良すぎるのでこれ以上は聞きません。

とにかくありがとうございます。助けていただけなければ、私たちはきっと殺されていたでしょうから」


まぁ・・・今の彼女たちは多分初のダンジョンダイブで死んだはずだ。

追加で死んだとしても、それまでのステータスが受け取れないだけで、特に変化も無いはずではあるが、それは別の話だし良しとするか。


「それで君たちだけでダンジョンに潜っていたのかい?」

「いえ・・その、私たちも初期メンバーの男子2人がいたんですけど・・」


「先に殺されたのか・・・」と新一が答えを先に言う。

「まぁ、結果的にはそうなるんですかね・・・?」


「結果的?」

俺は気になって聞き返してしまった。


「その・・・最初はゴブリンは15匹くらいだったんです。

でも危険を感じて男子たちが私たちを囮にして逃げたんです。

具体的には東雲さんの足を切りつけて・・・」

「「「「はぁ!?」」」」


「でも男子たちが逃げた方向にも同じような数がいたらしく、悲鳴が聞こえた後に、その敵がこっちに来ちゃって・・・

数も多くて1匹も倒せないで翻弄されてる間にあんなことになっちゃって・・」


「俺も割とクズな分類に入る人間だが、流石にソイツはクズすぎるな」

「クズだね」

「クズですね」

「クズだな」


見事に俺たち側の意見が一致した。


そして気になってみて確かめてみることにした。

「神代さん。答えにくかったら答えなくてもいいんだけど、君の家は何か特別な力とかは無いかな?」

「私?ですか?・・・ええっと、今は無いはずです」


「今は?」

「言い伝えでは昔は退魔士みたいなことをやってたみたいな言い伝えがあるといえばあるんですけど、言い伝えですよ?」


「鋼。もしかして・・・?」

「ああ」


「えーっと・・・?」

「ごめん。今から言うことは秘密にしてほしいけど、俺はおとぎ話に出てくるような陰陽師の出自の人間なんだ。

それで同族と思しき波動を感じていたんだけど、徐々に弱くなってきていたのを感じてここに来たんだよ。

まぁもとから波動も弱めだったから自信がなくて戸惑ってしまったんだけどね?」


「「え、えええぇぇ!?」」

一様に2人とも驚いているようだ。


「でも、それ言い伝えのはずですけど・・・」

「いや、その言い伝えは正しいと思うよ。理由はなんで出自を話そうかと思ったかというと、確かに陰陽師の家系として途絶えた一族の名前に、神代という名前があったはずなんだ。

多分君はその末裔なんだろうと思う。

本来であれば力を発揮できるほどでは無いのだろうけど、隔世遺伝とでも言えばいいのかな?

偶然にも君はその力が強かったんじゃないかな?」


「そ、そんなこともあるんですね・・・」

「それでどうする?」


「え?」

「パーティーを組んでた男子たちには囮にさせられたんでしょ?

もう一度同じメンツで組む気は起きないはず。

そうなると新しくパーティーメンバーを探さなくちゃいけないわけだ。

君たちには俺の事情も話したことだし、たぶんだけどその力を覚醒させることができれば強くなれる。

できることなら仲間に入れたいところなんだけれど・・・どうかな?」


「いいんですか?」

「勿論だよ。あ、当然だけど、お友達・・・なのかな?

の、東雲さんも一緒にどうかな?」


「え?私もいいんですか?」

「もちろん。俺の出自の秘密を守ってもらうことが条件にはなるけどね?」


「それくらいでいいのならいくらでも・・・お願いできますか?

仰る通り、私たちとしてはあの男子たちとは二度と組みたくありません」


「新一たちもそれでいいか?」

「俺たちは異論はないぜ。どうせ助けた後も引き続き助けようとするだろうとは思ってたからな」

香澄と詩織も頷いている。


「みんな、ありがとう」




そうして俺は手早く神獣のところに行き結晶をルビーへと換金し、皆のところに戻り一緒に天国門入り口へと戻った。

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